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道化は氷のなかに
ここにいるよと
生傷はケロイド状に腫れていて、
金のメッキがどろりとしていたから、
僕は体にこれでもかとぶち撒けていた。
僕は慰められるほど
あたまものろかったので、
かさぶたを赤黒くかたまったまま、
はがし忘れていたことを思いだした。
なんとかはいそげと
温度計が零下をさす水風呂へ、
えいやととびこんでみたはいいが、
とたんに軋む音に足は閉じこめられた。
足掻いてはみたけれど
氷はうんともすんとも言わないで、
浴室の光をあぶらのように反射した、
垂れだしたメッキはあかく滲んでいた。
満足して僕はかりかりと爪でかさぶたをえぐったあとに針のように冷たい金色をゆびですくってキャハハとうるさいクラスメイトの女子の仕草のように傷口にぬりこんで下をむいた。にこりと歪な道化がいた。
――あ、僕
そして死んだ。
こおりのなかで。
二月予約投稿分。