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未来へと
微笑みと木霊があり
微風と死は抱きあっていた
ただの沈黙を友とし
どこへ行こうか
この密林のなかを
安寧の記憶へは
もはや戻れはしない
わずかにのぞいた曇天へ
母のしゃれこうべを
投げた、砕いたあと
それでも訣別ではない
私の行いと姿には
父母の声と皺が宿っている
随分と手をかけさせたものだ
大きくなるにつれ
父の声はしゃがれ
母の手は古びて
いつからか横たわる丸まった背を
私は火のなかへとくべた
その一抹な安息を目に焚きつけて
叱咤の声が背を押し
抱擁が力を与えてくれるから
私は終の床と眠りへと
ともかく歩んでいくだけなのだ
蔦や葉は鬱蒼とたちこめているが
ただ一つ、足音がどこへなりと響く
こころなしか風が雲をそよぎ
呆れるほどに切れ長の蒼はまぶしい
背負うものに形はないままでも
それでもいつかの黄昏へと進んでいく