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心が痛むのは、きっと
紅葉のように秋が終わった
からでもなく
新雪のように冬が隠れた
からでもなく
あたかも何も無かったように
春がのらりと やって来たから
そして さも当然といった顔で
夏がずしんと 走って来るから
そうであると 人々が口を揃えて
表してしまっているから
私の心が痛むのは、きっと
どうして忘れえようか、それが
たとえ、一時の謝意を伴っていようと
どうして眠れえようか、それが
たとえ、一抹の不安を携えていようと
私は季節に感謝をする
私が朽ち、あの桜や銀杏のもとに
埋められようとも、全てが廻る
私は独りでは、きっと、無いのだ
そしてそれら全てを思い、
巡り、去り、また来る季節らの朝に
私は逆らえぬ時への敗北を、見た
零れ、沁み、また降る季節らの雨に
私は果てなき新芽の育ちを、見た
起き、立ち、過ぎゆく季節の走者に
私は彼らの髪が染まるのを、見た
全てが美しく映え、香り豊かに私に迫るから
そして五感と共に言葉が尽き果てていくから
やがて目前の夕暮れさえも表せなくなるから
私の心が痛むのは、きっと