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月下の喪失
何の規則にも従いたくなかった
ドアを蹴って開けて、
闇に身を踊らせ、風が押すまま
振り切るように走り続けた
先も見ずに、親の声はもう遠い
道標なんて見たくなかった
だから路地裏を選んだ
捨てられたゴミに足をとられて
悪態を吐く、白い息と共に
顔を流れる二筋の流れに
気付かず、霞む世界は嫌いだ
そして行き付いた先は
街の外れに佇む墓地だった
吹き上がる木の葉は
虚しい音と香りを伴っていて
枯れた花が添えられた墓石が
恐ろしいものに思えた
だから我武者羅に走って帰った
やがて見つけた我が家の灯りに
蟲の様に飛び込んだ、左靴は無く
母親の怒号に、何故か今は
どうしようもなく安心した
天に昇った満月が
優しく照らした、誰かの家
まだ反抗する事でしか
認めてもらえないと思った
14の一夜の出来事