表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
処刑台の下で  作者: 七つ夜
二話/天使の輪の中に
9/25

狂信者は神に祈る

 自由に空を駆けるあの鳥のように、翼を広げ、飛んでみたい……そんな風に思ったことはないだろうか?

 そう思うことになんの不自然はない。憧れ、羨み……嫉む。自分にないモノを求めるのが人だ。

 ……しかし、我々は一つ思い違いをしているのではないだろうか。そう、重大な見落としを。

 人は、飛べるのだ。

 今は飛べない魔法にかかっているだけ。

 ――飛べた頃の、本当の自分を知らないだけ。

 その事実から、目を逸らしているだけ。


◇◆◇


 暗い部屋の中。白衣に身を包んだ男――朝霧玲人――が一人、椅子に腰掛けている。

 彼は、事務室に設置されているモニターをじっと見つめていた。

 その瞳はただただ、そこから放たれる光を反射するだけ。そこから発される光情報を処理するだけ。それは機械よりも無機質で、虚ろな水晶だった。

 彼が画面の中に広がる白い部屋を見つめはじめてから、もうかれこれ一時間ほどになるだろうか。

 瞬きも碌にせず、一心不乱に一点を観察するその視線は狂信的であるとさえいえた。

 そういえば、と彼は記憶を辿る。やはり、その目の先は固定されたままで。

 数日前――廊下ですれ違った堂島ナラカ。『彼』は、私をどう認識しているのだろうか。私の姿は、『彼』の世界にどうあったのだろうか。……私を、捉えていたのかさえ。無能な私。力の及ばない私。……私は、世界に存在することさえ許されない――。

 縋るように、懺悔するように……白い檻に閉じ込められた神に問う。

 「私は――どうすればよいのですか。救われることはないのですか。貴方に必要とされているのですか」

 意識を沈ませ、眠りに就いている『彼』に答える術は無い。今そこに在るのは――。

 「慈悲を。――私を、導いてください」

 映像の中で、ベッドに横たわる堂島ナラカの瞼が、ぴくりと一瞬震え。

 ……その澄んだ瞳が、この世を映した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ