表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/24

序章

 巨大な目玉マークの描かれた黒い城が燃えている。

 城の主はもういない。殺されたのだ。それは別に珍しい事では無かった。世界征服を企んだ組織が、ヒーローに壊滅させられる。そしてそのアジトが、爆発炎上。ありふれたお話だ。

 ジル・グレイムとラナ・グレイムは、組織の下っ端悪魔だった。その他大勢として登場し、誰にも顧みられる事なくひっそりと死んでいく。彼らが最後に何を思ったか、そんな事は誰も考えもしないだろう。

 燃えていく敵のアジトを背景に、ヒーローとヒロインがキスをしていたその時、城の中でも、その他大勢ジルとラナが最後のキスをしていた事など、誰が知るだろうか。



 片隅にエレジィ



「ネロ、早く荷物をまとめなさい」

 セドは、既にまとめた自分の荷物を再チェックしたり、せわしなく何度も時計を見たりしながら彼の小さな末の弟をせき立てる。

「勉強道具は持ったのか?明日も学校はあるんだから、すぐ出せるようにしておきなさい」

「わかってるよ大にいちゃん」

 ネロが鞄に適当に教科書を押し込むと、セドがとんできて

「それじゃあ折れてしまう」

 と、丁寧に詰め直し始めた。諦めたようにネロがため息をついたのを見て、窓際に腰掛けていたレヴがクック、と笑う。

「お前の準備は?」

 苛々とセドが聞くと、レヴは

「んーおれ荷物無いの」

 と、お気らくな返事を返した。

 3人がバス亭に着くと、すぐにバスがやってきた。レヴが自分の角で煙草を揉み消したのを見て、山羊の頭の運転士は嫌な顔をする。

「転居先ではそういう事をするんじゃないぞ」

 セドの注意は聞こえていた筈だが、レヴは眠そうに吊り革に寄り掛かっただけだった。

「ねえ、ぼくたちもうあの家には帰れないの?」

 何かの骨でできた座席の飾りを玩びながらネロがそう呟く。

「……ネロ」

 セドは、ネロの生えたばかりの小さな角を優しく撫でた。

「安心しなさい。兄さん頑張って働くから、また魔界ここに戻って来ような」

 しかしネロは首を横に振ってセドにしがみついた。

「ぼく寒い」

 外には雨が、降り始めていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ