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恋の領域  作者: ばあむ
5/15

超非日常-校舎裏のイチョウの木の下

午後5時。


(あれ、まだ来てない……な)


千尋が校舎裏のイチョウの木の下に着くと、まだ倉田 総司の姿はなかった。

人気のない校舎裏は、ひっそりとしている。


千尋は、イチョウの木にもたれかかり、目を閉じた。

サワサワと揺れる木の葉の音が、心地よい。


倉田 総司とは、一体どんな奴で、何の用でここに呼び出したのか。


千尋の頭の中は、そんな疑問で溢れていた。


(まさか、遥がらみのイタズラとかじゃない、よな)


もし、超絶美形で男女ともに人気のある遥と幼馴染で、いつも一緒にいる千尋を僻んだ遥の信者のイタズラだったら……。


(最悪、だな)


現に、過去にそういうことは何度かあった。


『なんでお前なんかが、櫻川さんの幼馴染なわけ⁉』

『お前なんて、櫻川先輩の傍にいる資格ないだろ』

『不釣り合いすぎる』


なんて。

そんな暴言を散々吐かれて。


(なんだこいつらウザい。てか、俺が遥と一緒にいようがいまいが、お前らには関係ないだろっ‼ 好き勝手言いやがって、お前ら何様だよっ⁉)


と。

千尋は思うのだが、口にした事はなかった。

余計に事を荒立てなくなかったのだ。

もし、事を荒立てて、その事が万が一にも遥の耳にはいったら。


(絶対ブチギレるだろうな……そうなったら手が付けられない。暴走したハルを止めれるのはきっと俺くらいだし……)


そんな事態を招かないためにも、好き勝手ばかり言う遥の信者の暴言など真に受けず、上手に受け流すのが得策なのだ。


だが、さすがに暴力をふるわれて怪我をしてしまった時は、遥にバレて大変な事になった。

キレた遥が、千尋に暴力をふるった奴をボコボコにしたのだ。


『暴力には暴力で返すのが常識だろ』


平然とそう言ってのけた遥は、容赦なかった。

今思い出すだけでもゾッとする光景だ。

千尋も止めるのに苦労した。


あんなのはもう、真っ平ごめんだった。


だから、手紙をよこしてきた倉田 総司が、遥の信者などではなく、ちゃんとした理由があって呼び出したのだと、千尋は祈るばかりだ。




「あの、桐谷 千尋先輩……ですよね」


ふいに声が聞こえて。

イチョウの木にもたれかかって、目を閉じたままにしていた千尋は、ハッと目を開けた。

とたんに、知らない顔と目が合う。


「あ、やっぱり千尋先輩だ。良かった、来てくれたんですね」


その知らない顔の奴は、どうやら千尋を呼び出した倉田 総司らしく、千尋と目が合うと、嬉しそうにそう言った。


「……もしかして、倉田 総司?」


念のため、千尋が問いかけると「はいっ‼ そうですよ」と、彼はにっこり笑った。


(うわ……なんというか……これまたすごい奴が来たな……)


千尋は、総司を見て目を見開く。


倉田 総司は、遥ほどではないが、女子が放っておかない、なかなかのルックスの持ち主だった。

遥が超絶美形なら、倉田 総司は、爽やかイケメンといったところか。

おそらく、女子にそうとうモテるだろうと予想がつく。


「……で、俺に何の用かな?」


尋ねた千尋に、倉田は待ってましたとばかりに口を開いた。


「実は、俺、千尋先輩にお願いがあって、呼び出したんです」


「お願い?」


「はい。あ、でもその前に、ひとつ訊いてもいいですか?」


「え、うん。いいけど」


次から次へと話す倉田に、千尋は押されながらも頷く。


「ええーと、千尋先輩って今誰かと付き合ったりしてます?」


「…………いや、ない、けど」


「そうですかぁー。良かった」


(良かったってなんだよ⁉ )


倉田の言葉に、千尋は眉を顰める。


(俺の傍にはいつもハルがいたから、女子なんてみんなハルに夢中で、俺のことなんか誰も見てないんだから、しょうがないじゃんっ)


そう。

女の子はみんな遥ばかりを追いかけるため、千尋は今まで一度も彼女というモノができたことはなかった。


(どうせ俺なんて、モテないしっ)


千尋がそんな事を考えているとも知らず、倉田は質問を続けた。


「それなら、櫻川先輩とは、付き合ってる訳じゃないんですよね?」


「はぁ?」


倉田の言葉に、千尋はポカンと口を開ける。


「何言ってんの、お前。ハルは男だって……」


(そりゃ、ハルは男にもなぜかモテるけどもっ‼ なんで俺がハルと付き合ってるなんてこと思いつくんだよっ⁉)


千尋は信じられないとばかりに首をふる。


「好きって気持ちに性別なんて関係ないですよ、先輩。だって、俺、千尋先輩のこと好きだし」


「いや、だからって、俺とハルは………って、はい?」


(今こいつ、なんて言った?俺のこと好きって言わなかったか?)


そんな千尋の戸惑いを見透かすように、倉田は言った。


「俺、好きなんです。千尋先輩のこと。もちろん、LIKEじゃないですよ。LOVEの方です」


倉田の目は真剣で。

千尋は思わず息を呑む。


「は、冗談……」


「じゃないです。本気なんですよ、俺」


言いながら、倉田はぐっと千尋との距離を縮めた。

それに対し、千尋は一歩後ろにさがろうとしてイチョウの木に背中がぶつかった。


「先輩……」


「なん、だよ」


倉田は、イチョウの木に右手をつき、千尋に顔を近づける。

逃げ場なしの状況におかれてしまった千尋は、ビクリと肩を震わせた。


「先輩、俺と付き合ってくれませんか?」


(なんなんだ、この状況っ。なんで俺は男、それも初対面の後輩に告られてるわけっ⁉)


頭の中がゴチャゴチャになって混乱する千尋は、どうしたら良いかもわからずに、ただ口をパクパクさせることしかできない。


「返事、今すぐじゃなくていいんで……」


倉田は、ニコリと笑いながら言うと、ふいにスッと左手を千尋の頬にあてる。


「先輩、赤くなって可愛いですね」


「お、お前っ何言ってっ……っ⁉」


倉田の言葉に、千尋はさらに体温が上昇するのを感じた。

しかし、倉田の背後に目をやった瞬間、驚きの表情を浮かべた。


(……ハル? なんでここに⁉)


なんと、倉田の背後に、教室で待機しているはずの幼馴染の姿があったのだ。

遥は無表情で千尋と倉田に近づいていく。

千尋の方からは、遥の姿が認識できるが、背を向けている倉田は、まだ遥の存在に気づいていないようだった。


「触んな」


威圧的な声が聞こえて、千尋の頬にあてられていた倉田の左手を、遥のしなやかな手がつかんだ。

すると、倉田は一瞬驚きの表情を浮かべて、遥の方へと視線を移した。

そして、二人は無言で睨み合う。


なんか……これってヤバイ展開なんじゃ……?


険悪なムードになる遥と倉田に、千尋は嫌な予感がした。









今回は長くなってしまいました。

妄想が溢れ出しすぎて(笑)


でも、無事に年下キャラ出せて良かったですっ‼

これから彼には色々やってもらう予定です(^^)

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