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恋の領域  作者: ばあむ
2/15

日常-朝

「キス、しろよ」


平日、金曜日の朝6時。

いつものように、寝起きの悪い幼馴染を起こすために、わざわざ隣の家まで出向いた桐谷 千尋(キリタニ チヒロ)は、何とも言えない状況にあった。


「ほら、さっさとしろよ。じゃないと起きないから」


ベットの中で不機嫌そうにキスの催促する幼馴染の櫻川 遥(サクラガワ ハルカ)を見て、千尋は溜息をこぼす。


(この、我儘大魔王め……)


心の中で毒づきながらも、千尋は遥のおでこのあたりに、そっと触れるだけのキスを落とした。


この幼馴染の我儘は、今に始まったことではない。

それに、一度言い出したら中々強情で、諦めの悪い遥の性格を熟知している千尋は、大人しくキスをした方がてっとりばやいと判断したのだ。


「ほら、これでいいだろ。さっさと起きろ」


「……唇にしろよ」


「は?」


なおも、とんでもない我儘を言う遥に、千尋は呆れる。

一方遥は、やっと起き上がる気になったのか

、のそのそとベットから起きあがった。


(だいたい、幼馴染で、しかも男同士でキスするのも変な話だろ……)


千尋はそう思うのだが、このキスは、幼少の頃からずっとしてきた習慣のようなもので、特に抵抗があるわけではない。


ただ、小さい頃はともかく、高校生になった今でもその習慣が残っているのも、どうかと思うのだ。


もし、同じクラスの女子が、遥とこんな風にキスをしていると知ったら……。


(俺、殺されちゃうかもな)


千尋は、目の前で着替えをしている遥を見て、そんなことを考える。


なぜなら、遥は学校で一、二を争うくらいの超絶美形なのだ。


そこら辺のモデルよりも整った顔に、それに見合った引き締まった身体。

小さな仕草や動作も、どこか品があって、目が離せなくなる。


幼少からの付き合いで、すっかり慣れてしまったはずの千尋でさえ、時々見惚れてしまうほどだ。


そんな遥を女子が放っとくわけがなく、入学したての時は、告白が絶えなかった。


が、今では遥に告白しようなどという、勇気のある女子は少ない。

告白した女子は皆、こっぴどく振られるからだ。

どんな可愛らしい女の子でも、である。


(一体どこに不満があるのやら……)


千尋は、遥のそういう所は不思議だった。


まあ、どっちにしろ遥は、ファンクラブがあるくらい人気で。

いくら男であるといっても、遥とこんな風にキスをしていることが知られたらまずいだろう。


絶対にバレないようにしなくては。


と決意をする千尋をよそに、着替えを終えた遥は「行くぞ」と千尋を促した。


これから、千尋の家に行って二人で朝食(千尋の手作り)をとって二人で登校する。


これも、幼少からの習慣。


遥の両親は仕事で海外に行っているのをいいことに、遥は桐谷家に入り浸っているのだ。


桐谷家で朝食を取り終えた二人は、玄関から外に出る。




「「行ってきます」」


こうして、

二人のいつも通りの日常は幕を開けた……はずだった。






説明文が長々としていてすみません(-。-;

いきなり妄想全開でスタートします!!

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