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第3話 魔物解体師 ――討伐のあとを片付ける仕事

小説を閲覧いただきありがとうございます。

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どうぞよろしくお願いします。

「お邪魔するっす……ここで、仕事を紹介してもらえるって、聞いたんすけど」


おう。いらっしゃい。

最近多いな。冒険者以外の仕事を探しに来るやつ。


「あ、おいらも最初は冒険者で登録しようと思ってたんすけど……訓練で向いてないって言われたっす」


あー、そいつは、残念だったな。

だが、そのまま腐らずに別の仕事探しに来たんだろ?


「うっす。おいら頭よくねぇんで、悩むより次行こうと思ったっす!」


はは。十分賢いじゃねぇか。

その自己判断ができるやつは強いぜ。


「でも教官に言われたっす……冒険者が無理なら他も無理だって。

最底辺の仕事すらできない奴は、田舎に帰れって……」


……あぁ? 

なんだそりゃ、訓練所の教官が言ったのか?


「……うっす」


ほぉ。なるほどな。貴重な情報ありがとよ。

……あとでそいつの名前教えろ。

腐った性根を叩きなおしてやる。


「……うっす」


いいか。職業に上も下もねぇんだ。

どんな仕事でも、誰かが必要としてる。

それだけ覚えときゃいい。


「……冒険者さんがいなかったら……おいら今頃、魔物の腹の中っすよ。

おいらも冒険者になって、誰かを助けたかったっす」


……そうかい。

だが適性がねぇ奴を登録させるわけにはいかねぇ。悪いな。

こればっかりはな。どうしようもねぇ。

アンタの身の安全が保障できない。

あと、他の冒険者にも迷惑をかけちまう可能性があるからな。


「うっす。大丈夫っす」


そんな顔すんな。

人を助けたいなら、冒険者以外にも方法はいくらでもある。


「……本当っすか?」


おう。ちょっと待ってな。

訓練所に居たんなら、適正診断はされてるはずだな。

頑丈、解体、毒耐性。ほう。


腕力C、体力B。いいな。

俊敏F、魔力F−……まぁそこまで問題じゃねぇ。


「昔から体だけは丈夫っす!」


いいじゃねぇか。じゃあコイツで決まりだな。

魔物解体師だ。


「……解体っすか?」


そうだ。冒険者が倒した魔物を解体して、素材にしてるだろ。

あれをうちでやるんだよ。魔物解体サービス、聞いたことあるだろ?


「受付の裏でやってるやつっすか? 持ち込みするとやってくれるっていう」


そう。そいつだ。ギルドの収入の柱の一つだ。

実際に見た方が早いだろう。

現場を見てみるか?


「見たいっす!」


そうこなくちゃな。こっちだ。着いてきな。


***


着いたぜ。ここが解体場だ。


「もっと血が飛び散ってて、臭いもヤバイのを想像してたっす。

思ったより、きれいっすね!」


今どき血まみれの作業場なんて、営業停止を食らっちまう。


見な。天井と床は白い石張り。掃除のために、わざと汚れが目立つようにしてる。

それと、排水溝付きだ。何せ、血や肉片。汚水がたくさん出るからな。

壁には洗浄魔法の刻印がしてあるぜ。


万が一、ここで疫病が発生したら国全体が終わる。

衛生には一番気を使ってるのさ。


お、あれ見ろ。


「……お、おおきいっす……オークっすか」


ああ。ついさっき運び込まれた。

皮、骨、肉、内臓、魔石、全部バラして初めて素材になる。


魔物はな、捨てる所がほとんどない。

危険な存在だが、貴重な資源でもある。

皮も骨も肉も内臓も魔石も、全部金になる。

だから魔物解体師が必要なんだ。


「そんなに重要な仕事なんすね」


冒険者が前線なら、こっちは後方だ。

どっちも重要で、どっちが欠けても回らねぇ。必要な職業ってやつだ。


ちょうど解体が始まるぞ。

見てろ。


「定位置に固定完了! これより解体開始する。

急げ! 内臓傷む前に抜くぞ! 保存容器持ってこい!」

「おっけー! ぱぱっと切り分けていくよー!」


今回は人の手で解体していく。

もっと大型になると、機械を使わないといけねぇし。

魔物の種類によっては、特殊な刃じゃねぇと切れない奴もいる。

この光景なんだが……慣れてねぇとキツぞ。


「うぐ。たしかに……すごい匂いっす……。動物の解体とは、また違うんすね……」


お、これを見ても吐かなかったか、大したもんだ。

これでもかなりマシな方なんだぜ。

全部が全部。こんな状態の良い死体ばっかじゃねぇ。

腐りかけ。毒持ち。爆発する魔物なんてのもいる。


「ば、爆発っすか?」


内臓に魔力溜め込むタイプがいるんだよ。

下手に切ると、破裂しちまう。

慎重に切り分けて、刃を入れるところを見極めないとならねぇ。

新人が横着してよくやらかす。


「やっぱり、魔物って怖いっすね……」


安心しな。うちの解体師は優秀だ。

しっかりと目を開けて見ておけよ。


「魔石摘出しました。良いサイズですね。傷もなし!」

「いやー、上質なお肉だねー。高値で売れそうだよー!」


どうだ。これがプロの技だ。

上手い解体師がやると、素材の価値がぐんと跳ね上がる。

下手なやつがやると、価値が下がる。

最悪、全部台無しだ。


「す、すごいっす。魔物が綺麗に分けられて、素材になっていくっす!」


この仕事、解体師の腕が命だ。

下っ端のうちは、中々上手く解体できないだろうな。


焦ることはない。最初は下手でいい。

数こなせば上手くなる。この仕事は積み重ねだ。

魔物の特性を知って、肉と内臓の位置を覚えろ。


「コツコツ積み重ねていく……それってなんだか冒険者みたいっす」


確かに。実力主義のところもそっくりだ。


あともう一つ。解体が終わるまで、気が抜いちゃいけねぇ。

死んだ後の方が危険な魔物だって多い。

死体のまま放置できない魔物がいるってことだ。


「それって……アンデット……とかっすか」


……ああ。そういう類の魔物だな。

素材だけに目が眩んで忘れるやつが多いが、魔物相手に油断しちゃならねぇ。

討伐は倒して終わりじゃねぇ。死体の処理まできっちり終わらせる。

そこで初めて、魔物の討伐完了だ。


それをアシストするのが解体師って仕事さ。


「この場所で冒険者と一緒に魔物を討伐してるんっすね。

なんか…………それって、すげぇっす! かっこいいって思うっすよ!!」


そうさ。解体師はここで魔物討伐をしてるんだ。

冒険者をサポートすることで、裏方から人助けしてるのさ。


で、どうする? 魔物解体師。

ここなら魔力がF-でも十分採用できるぜ。

腕っぷしと体力、血が平気なら問題ない。

ま、強制はしねぇ。キツイ仕事には違いねぇからな。


「その、やってみたいっす!

その仕事なら、おいらだって、一緒に魔物を討伐できるなら……ぜひ!」


おう。いい顔じゃねぇか。

よし。歓迎するぜ、新米魔物解体師さんよ。


――ドォオン!!


おわ!? んだぁ? この揺れは。


「大型個体搬入! 搬入揺れに注意しろっ!!」

「どけどけ! 通路を確保しろ! 大型だぞ! それじゃ入んねーだろうが!」

「タイザンタートル一体!」


……まじかよ。タイザンタートル?

おいおいおい、S級モンスターの搬入だって?


「え、えす?」


景気がいいねぇ。新人初日で、これは重いがな。

……おい、今日は忙しいぞ。寝れないと思え。徹夜確定だ。


「ひぇぇぇっす」


くくっ。今ならまだ逃げられるぞ?

……新人。

この仕事。本気で、やってみるか?


「……やるっす」


よし。新人。歓迎するぜ。

ようこそ。魔物解体師の現場へ。


――討伐は、まだ終わってねぇ。

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