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第2話 即時転送便 ――前線へ物資を届ける仕事

小説を閲覧いただきありがとうございます。

感想、評価、ブクマ等いただけましたら、作者は大変喜びます。

どうぞよろしくお願いします。

「あの……冒険者以外の職に就けるって聞いて来たんですけど」


 おう。いらっしゃい。

 なんだなんだ。最近流行ってるのか?

 冒険者ギルドに来て、開口一番に冒険者以外の職を斡旋してくれってのは。


「知り合いに教えてもらったんです。僕、戦いってのはどうしてもダメで……」


 さしずめ、チキュウって異世界から来て、こっちの生活に途方に暮れてるってとこか?


「え!? チキュウってこっちの世界で認識されてるの!?

 もしかして、イズミさんに仕事を紹介してくれた人って、貴方ですか?」


 おっと。そいつはノーコメントだ。うちにも色々守秘義務があるんでね。


「そんな……」


 はは。まぁ、そう気を落とすなよ。

 冒険者ギルドの看板を掲げてるんだから、うちに来るのは冒険者志望の奴ばっかさ。

 別に難しい試験もねぇから、ほぼ全員受かる。

 けど、どうしても冒険者になれない奴もいる。

 そういう奴には、別の仕事を紹介してるぜ。


 安心しろ、青年。この世の中、戦う以外にも仕事はいくらでもある。


 それじゃ、簡単にアンタの出来ることを確認させてくれ。

 簡単な適性チェックだ。


「あ、はい。これをどうぞ。

 何が出来るか面接されるって聞いてたので、僕が出来ることを紙にまとめました」


 おお。準備がいいな。確認させてもらう。

 その間に、この測定具で魔力の測定をしといてくれ。


「これを握ればいいのかな……」


 ふんふん。チキュウ出身ってのは、基本的な読み書きができるやつが多いんだな。

 識字率が高い。それだけ恵まれてて豊かな世界なんだな。


「恵まれてる。そうかもしれません。

 魔物もいないし、僕の住んでた国は戦いとも無縁で。

 この世界と比べると、平和ボケしてますね。なんか、すみません……」


 平和でいいじゃねぇか。謝る必要なんざねえぞ。

 世界には世界のルールがある。これは異世界から来た奴、全員に言ってるんだ。

 ところ変われば、常識も変わる。

 平和ボケっていうけど、魔物がいない代わりに別の問題があったりするんじゃないか?


「……そう、ですね」


 そうだろう。世界同士を比べても仕方がねぇし。

 よそ様の世界に口出しするのはご法度さ。

 アンタは争いがない世界から来た。だから冒険者として戦うのは難しい。

 それだけ分かれば十分だ。その事で責めたりはしない。


「……はい」


 どれ。魔力は……って、おいおい、エラーが出てやがる。

 規格外の魔力量だな。

 しかも、魔力の波長が珍しいパターンだ。

 神殿じゃないから、断定はできねぇが、何かの加護持ちの可能性があるな。


 アンタ、ひょっとしてギルド長から推薦とか受けたんじゃないか?


「あ、えっと……その、あの……。

 黙ってて、ごめんなさい!で、でもっ。僕に冒険者はどうしても無理なんですよ!

 血、とか見ると、怖くて気絶しちゃうし……。痛いのもやだ。

 だから、魔物を倒すなんて絶対無理っ!」


 おい、しっかりしろ! ほら、落ち着いて。深呼吸だ。

 よしよし、良い子だな。その調子だ。……大丈夫か?


「はぁはぁはぁ――。……ふーっ。うっ、げほげほ! はぁ、はぁ。

 すぅー、はーっ……。なん、とか。大丈夫です」


 あの融通の利かないクソガキめ。

 能力だけ見て無理強いすんなって、あれほど言ったのに!

 はぁ……。あいつにギルド長を任せたのは時期尚早だったかなぁ。

 アンタ、悪かったな。

 いくら有能だからって、本人の意思を無視して、冒険者勧誘を強行するのは禁止されてんだ。

 このことはあとで、報告しておく。

 もちろん、うちが完全に悪い。アンタは悪くないからな。


「ぐすっ……あ、ありがとうございますっ!」


 迷惑かけちまった分、アンタに良さそうな職をしっかり紹介させてもらうぜ。

 そうだな。ちょうど給料は良くてアンタにぴったりな仕事があるぜ。

 募集条件は単純だ。魔力量が馬鹿みたいに多いこと。これに尽きる。

 まぁ、そんな魔力量があるなら冒険者になるから、この仕事も人が全然足りねぇんだけどよ。


「魔力が多く必要だけど、冒険者じゃない。それって、どんな仕事ですか?」


 ああ。荷物を届ける仕事さ。


「えっと。配達ですか?」


 アンタ自身が荷物を持って、届ける必要はない。

 荷物を指定の場所に転送させる仕事だ。


 即時転送便。聞いたことあるか?


「郵便とか配送なら聞いたことがありますけど、即時、転送?」


 ……ないか。ま、民間にはあんまり馴染みがない仕事かもしれねぇな。

 利用するのに、かなり良い値段がするサービスだから、仕方ねぇ。

 国とか貴族とか、あと軍部なんかがお得さんだ。

 ま、どんなもんかは実際見た方が早い。ほら、ついてきな。


 ***


 ついたぜ。ここが即時転送センターだ。

 どうだ。思ったよりも広いだろ。


「棚に荷物がずらっと並んでる。あれが全部届ける荷物、ですか。

 なんというか……普通の宅配便と変わらないような」


 はは。確かに。届ける方法以外は、通常の配送業と変わらないな。

 見ての通り、この棚に並んでる箱は全部配送待ちの荷物だ。

 武器、防具、食料、薬、日用品、魔道具……何でも運ぶ。


 それじゃあ、次は向こうだ。

 こっちの部屋で仕分けられた荷物は、向こうの部屋から出荷される。


「わぁ……荷物を保管してる部屋より広いですね。

 床のこれって魔法陣、ですか? もしかして、これ全部転送の魔法陣!?

 転送ってそういうこと!?」


 ご名答。ここの荷物は人がちまちま運ぶんじゃない。

 転送の魔法陣を使って、一気に大量の荷物を転送させるんだ。


「なるほど。配達というより、輸送ですね」


 届け先は町だけじゃない。

 迷宮の中。前線の砦。魔物の出る危険地帯。

 場合によっちゃ戦場のど真ん中に送ることもある。

 魔法陣に座標を指定して、一気に荷物を送る。それも一瞬でな。


「すごい。こんなに大量の物資を一瞬で送れるなんて……信じられない」


 同感だ。俺も何度か荷物を転送してるところを見たことがある。

 見るたびにすげぇな、信じられねぇって感想が出てくるぜ。


 当然だけど、こんな大掛かりな転送魔法は魔力が馬鹿みたいに必要になる。

 座標の計算だって簡単なことじゃねぇ。


「え。座標の計算ですか?」


 おっと。悪い。座標については、また別の業務になる。

 だからアンタは気にしなくて大丈夫だぜ。


「あれ? なんだかあっちの魔法陣が騒がしいですね。どうしたんでしょう?」


 ふむ。今、何かトラブル入ったらしいな。

 ちょうどいい。実際の仕事を見学するチャンスだ。ほら、見てみろ。


「シャーデン平原より連絡! 物資が未着! 予定時刻を過ぎています!」


 シャーデン平原か。キラーボアが異常発生してて、討伐依頼を発行している。

 今まさに、Cランク以上の冒険者たちがチームを編成して討伐に向かってる場所だ。

 緊急依頼だから、冒険者たちは必要最低限の装備で急行中だ。

 その代わり、必要物資はここで即時転送する段取りになってる。


「座標確認! 転移ログ出せ!」

「ログ確認! 送信済みですが着信反応なし!」

「何? まさか転送中のロスト……いや、遅延の可能性もある。急いで再計算しろ!」


 くそったれ。ロストだったらまずいぞ。


「ロストというのは? 荷物が消えたってことですか」


 ……ああ。転移ってのは便利だが、完璧じゃない。

 座標計算は慎重に行われる。だから、ほぼミスはない。

 だけど、0パーセントじゃあない。


 魔力の乱れによって、計算がズラされることがあるんだ。

 送る側の魔力の乱れが原因だったり、送る先が魔力の不安定な場所だったり。

 そういった理由で起こるのが、遅延やロストって事故だ。


「遅延だといいですけど……。荷物が消える可能性があるだなんて。

 便利だなって思ったけど、そのリスクは怖いなぁ」


 即時転送が売りなのに、遅延ってのは大問題なんだが。

 ロストよりはマシだな。


「現場より返信ありました! 

 予想よりキラーボアの進行が早く、転送ポイントに到着したため、受け取り不可!

 転送先変更、新規座標が送られてきました」

「よし。急いで、再接続しろ! まだロストしてないぞ!

 至急、座標再入力! 転送班、再転送分の魔力充填準備!」

「了解! 充填開始! 完了まであと五分!」


 良かった。よし、見てろよ。

 これが、転送という仕事だ。


「転移陣起動! 『転送』!!」

「着信反応…………確認! 物資、転送完了です!!」

「「「よっしゃあああああ!! 良かったぁぁぁぁ」」」


 ふーっ。届いたか。久々に冷や冷やしちまってぜ。

 これでこの仕事は完了。

 あとは、物資を受け取った冒険者たちの仕事だ。


「ドキドキしました。皆さん、すごいですね。

 荷物が届いてよかった。本当によかった」


 どうだ。この仕事。

 派手じゃない。剣も振らない。

 魔物とも戦わないから、とっても安全な仕事さ。


 でもな。


 この荷物が届かなきゃ、戦えねぇやつがいる。

 この薬が届かなきゃ、助からねぇ命がある。

 この食料が届かなきゃ、帰れねぇやつがいる。


 即時転送便はな、大勢の命を背負ってる仕事なんだ。

 ここは安全だけど、そのことを肝に命じて仕事をしないとならねぇ。

 現場で戦う冒険者と同じように。

 一緒に戦ってるんだぞ、っていう緊張感を持ってな。


「ここで、一緒に戦う……ですか」


 ……どうだ。この仕事のこと。少しは分かったか?


「思ってたより……大変ですね。ずっとずっと重くて。

 でも、なんか、かっこいいですね。この仕事」


 かっこいい、か。

 だな。俺もそう思うよ。

 あとであいつらに言ってやんな。絶対、喜ぶぜ。


 さて、と。

 ……おっと、また来たな。


「緊急依頼! 現場からの着信です。

 これは、座標指定されてますが、魔力不安定地域です。

 至急、第二転送陣の用意! それと補助魔法陣も起動!」


 また大変な依頼が来たな。ほんと、忙しい日だ。

 この世界はな、戦うだけが仕事じゃねぇ。

 支える仕事だって、ちゃんとある。


 そういう仕事を紹介するのも、俺の役目だ。


 それで、どうする?

 アンタ、この仕事。やってみるか?

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