第5話 召喚:バジリスク
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「うおぉ、山ポイントが更に溜まってる!」
取り出したウツセミの山の書の表紙には、
>山ポイント:6530
と書かれている。
これは、グリーンスライムが雑草を消化する以外にも、俺がグリーンスライムを倒すことで50ポイントずつ溜まっていったのも要因の一つだろう。
これだけあれば、何か解決策を召喚できるんじゃないだろうか。
そう思い、ウツセミの山の書を開く。
鉱石、は今回関係ないだろう。あるとしたら…………
「毒草?」
そう言えば、クロハミユリという植物が毒性を持つと書かれていた。
例えば、クロハミユリを植えてみるのはどうだろか。
それを摂取したグリーンスライムが、毒でやられるかもしれない。
「…………いや、ダメだな」
まず、毒草を一本一本、グリーンスライムの前で召喚していくのは明らかに手間だ。
それに、グリーンスライムにその毒草の効果があるか分からん。
それよりも、ほっとくだけでグリーンスライムが処理できるような…………
となると、やっぱり魔物か。
「といっても、そんなことができそうな魔物なんて…………」
魔物は、今朝見た時よりも数種類増えたくらいだ。
それも、グラニルという馬のような魔獣種や、ミクリンという小型種──リスのような魔物など、
今回の役には立たなそうなものばかり。
「うーん、ゴブリンリーダーにゴブリンを指揮させて……いや、俺は一撃だがゴブリンたちは一撃じゃない。効率的じゃないな。ゴーレムに……いや、これも同じか。──バジリスク?」
俺は、バジリスクという魔物に目を止めた。
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【魔物名】 バジリスク
【種 族】 ドラゴン種
【コスト】 1000
【解 説】
体長およそ1メートルの小型ドラゴン種に属する魔物で、全身を厚い鱗で覆われた六本足のトカゲのような姿を持つ。
獰猛かつ高い機動力を誇り、主に小型から中型の魔物を捕食対象とする肉食性の魔物である。
その最大の特徴は「毒」の生成能力にある。バジリスクは、スライムの体液を吸収することで体内に特殊な毒素を生成する。
この毒素は消化器官で濃縮・変質される。この毒を用いて、自身よりも遥かに巨大な魔物を仕留めた記録も存在し、単独での戦闘能力は非常に高い。
そのため、冒険者たちの間では「バジリスクを単独で倒せるようになって初めて一人前」と評されるほど、実力の目安とされている存在である。
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──バジリスクは、スライムの体液から体内の毒を生成するらしい。
……ってことは、スライムを捕食するってことなんじゃないか?
1000ポイントか。
そこそこ高いけど、出せないほどではない。
今日はオルネラの木かシルマリルの樹を召喚しようと思っていたが、どちらも必要な山ポイントは3300。
バジリスクを召喚しても、まだ余裕はある。
もし失敗しても、最悪倒してしまえばいいし、一度試してみる価値がありそうだ。
俺は意を決して、バジリスクのページを開くと、
人差し指をそっとページに添え、スッと上に滑らせる。
──出てきたっ!
「クロノ様、何を召喚しましたの!?」
目の前に現れたバジリスクを見て、ミュリさんがぱっと目を見開いた。
バジリスクは図鑑に書いてあった通り、足が6本ある巨大なトカゲ、といった見た目をしており、
戸惑っているのか、舌をシュルシュル出し入れしながらキョロキョロと辺りを見回している。
「バジリスクっていう魔物なんですが、このウツセミの山の書によると、スライムを食べるらしいんです」
「なるほど、代わりに食べてもらうということですのね!?」
「その狙いなんですが──おっ!」
バジリスクが動き出す。
その先は、グリーンスライムだ。
ある程度の距離まで近づくと、バジリスクは舌をビュッと伸ばし、グリーンスライムに突き刺した。
そして、そのまま──
「……吸ってる!?」
まるでストローのように、バジリスクはスライムの体液を啜り始めた。
わずか2秒ほどで一体を吸い終えると、間髪入れずに次のスライムへと舌先を向ける。
ちゅる、ちゅるっ。
小気味いい音を立てながら、次々とスライムを吸っていくバジリスク。
「これは……成功と言っていいんじゃないか」
「そのようですわね……、流石、クロノ様ですわ!」
「……まあ、自分で蒔いた種ですけど」
俺は苦笑しつつ、後頭部をぽりぽりと掻く。
──っと、そんなことよりも。
「ここに来た目的を忘れるところでした。果物のなる木を召喚してみましょう」
「──!! そうでしたわ! ぷよんぷよんに気を取られて、忘れてしまうところでした!」
ミュリさんは目を輝かせる。
相当イモに飽き飽きしていたんだな……
うーん、オルネラとシルマリル、どちらにしようか。
……せっかくだし。
「この、シルマリルの樹、というのを召喚してみようと思います。実がなる数は少ないそうですが、美味しいらしいので」
「そうしましょう!わたくし、美味しいものなんてもう何十年も食べていないですもの!」
「いやいや、いくつなんですか……。まあ、召喚してみますね」
俺はシルマリルの樹のページを開き、上にスワイプする。
すると、俺の目の前にボンッと大きな木が現れた。
「きゃあっ!驚きましたわ!」
「うおっ、いきなり目の前に出てくるんですね……」
「──見てください!木の上の方に……じゅるり、美味しそうな実が……じゅるり」
どれだけ食べたいんだ、という突っ込みは置いといて。
召喚されたシルマリルの樹の上の方の枝に、スイカより一回りほど大きな実がボンっとなっていた。
随分と高い位置になってるな。
試しに剣を伸ばしてみるが、全然届かない。
「ミュリさん、実は木登りは得意だったり……しませんか?」
「ええっ! わたくし、木なんて登ったことありませんわ! こう見えて高貴な生まれなんですのよ!?」
「ですよね……」
これは困ったぞ。
「うーん、一度お家に戻って、もっと長い棒を探してきましょうか?」
「……いや、ちょっと待ってください」
そういえば、と再びウツセミの山の書に目を落とす。
今朝見てた魔物のページに、気になる魔物がいたんだったな。
そう──エルフだ。