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第3話 召喚:グリーンスライム

「きゃあっ、いきなり叫ぶなんて、どうかされたのですか!?」


「あ、すみません、つい。──それよりも、このウツセミの山の書を使えば、魔物を召喚できるんでしたよね?」


「そうですわ! 説明書にそう書かれておりました! 山ポイントを消費することで、その本に書かれている魔物を召喚できると!」


「よし、早速だけどこのグリーンスライムというのを召喚してみたいのですが」


「なるほど! 物は試し、ですもんね! えーっと、召喚のやり方は……」


ミュリは説明書を取り出すと、うんうんと読みだした。


「──召喚したい魔物のページを開いてみてくださいませ!」


「はい、開いてます」


「それでは、召喚したい魔物のページを触って、ひょいっ! とやってくださいませ!」


「ひょいっと?」


「はい、ひょいっと、ですわ!」


ひょいっと、と言われても。

もしかして、スワイプすればいいのか?


そう思い、グリーンスライムのページを人差し指で触って、上にスワイプしてみる。


すると、本から飛び出してくるみたいに、緑色の粘体生物が目の前に現れた。


「おおっ!!」


「成功ですわーっ! こちらが、クロノ様が召喚された魔物です!」


俺が召喚したグリーンスライムがぷるぷると震えている。

怖がっている、というよりもそういう生態のようだ。


そして空腹だったのかすぐに近くの雑草に移動し、体に取り込むと、ゆっくりと溶かし始めた。


「見てくださいクロノ様! 召喚されたスライムが雑草を!」


「よし、思った通りです。ちなみにこの子は、スライムではなくてグリーンスライムらしいです」


「確かに緑ですもんね!」


「ま、まあ。それで、この子が俺の代わりに雑草を食べてくれると思うので、その間にこのウツセミの山の案内をしてくれませんか?」


「──す、すごいですわ!」


「えっ?」


「早速、魔物を使ってこの山を効率的に管理し始めています……。わたくしには出来ない芸当です」


「あ、ありがとうございます」


いや、ただ草食の魔物を適当に召喚しただけだったんだけど、ここまで褒められるとは思わなかった。

仕事はこなして当たり前、褒められるのが目的じゃない──そうは言うが、やっぱり褒められると嬉しいもんだな。


「それで、ウツセミの山の案内、でしたわね! お任せください! この山のことでしたら、わたくし、誰よりも詳しいですわ!」


「ははっ、頼もしいです。じゃあ、お願いします!」


こうして、グリーンスライムに雑草の処理は任せて、ミュリさんにウツセミの山の案内をしてもらった。



──山の状況は、思ったよりもひどいものだった。


本当にどの木も枯れており、土はどこもひび割れている。

食べられそうな果物はもちろん、価値のある木材や薬草もなさそうだ。

湧き水や小川も枯渇しており、かつて水が流れていた形跡があるのみだ。


そして、本当に生物がいない。

グリーンスライムのような魔物が一匹も見当たらないのだ。

もはや呪われてるんじゃないか、この山…………


これは、相当難航しそうだな…………


頭を抱えつつ、俺たちは先ほどの広場に戻ってくる。


すると、グリーンスライムが何と8体に増えて、精力的に雑草を消化していた。


「ふ、増えてますね」


「はい、スライムはたとえ1体だけであっても、栄養さえあれば自己分裂により増殖することができますわ!」


「なるほど。つまり、グリーンスライムに雑草を一掃してもらい山ポイントを貯めつつ、増えたグリーンスライムを間引けば、更にポイントが貯まるってことか」


「…………そ、そこまで考えていたのですわね!?」


「いや、ほんとたまたまですよ。そもそもスライムが増えるなんて知らなかったですし」


「たまたま──ということは、クロノ様は ”もってる” というやつですわね」


この子、何言っても褒めてくれるな。

褒められてないからムズムズしてしまう。


「そ、それにしても、増殖スピードが凄いですね……。このままだと山から溢れて麓まで侵食されそうですが」


「それは大丈夫ですわ! この山の中で召喚した魔物は、ひとりでに山の外に出ることはできません!」


「えっ、そうなんですか?」


どういう原理なんだ? 見えない結界でもあるのだろうか。


「でも、クロノ様の意思で外に出したいときは可能ですわ!」


「俺の意思で、って、つまり?」


「例えば、スレイプニルのような騎乗できる魔物を召喚して、山の外に出ることは可能、ということです!」


なるほど……でも俺、動物に乗った事なんてないからそんなこと無理だな。

……練習すればいけるか?


とりあえず、その日は雑草抜きをグリーンスライムたちに任せ、俺たちはミュリの家へと戻った。


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