第15話 えっちなエルフ?
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「ええっと、薬草、薬草……回復できそうな植物は……」
ズキズキと疼く怪我の痛みに耐えながら、俺はウツセミの山の書の ”植物” のページをペラペラとめくっていく。
ネバルグラスは違うな。ネモリカハーブも紅茶の茶葉になるやつか。
クロハミユリは──毒草。間違っても召喚してはいけない。
パラグナ草は強靭なだけの草だし、ルナセリアンも安眠効果があるだけっぽい。
おっ、ドルジィ根……は滋養強壮効果があるみたいだけどケガを治せるようなことはどこにも書いてないか。
うーん、どれもピンとこないな……。
「おっ……?」
ふと、ある植物のページに目が止まった。
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【植物名】 鳳緋花
【分 類】 高等薬用植物
【コスト】 5000
【解 説】
鳳緋花は、古来より「炎神鳥」との神話に結びつけられ、神聖視されてきた高等植物である。真紅に燃えるような六弁の花びらと、金色の花芯を持つ。
この花の最大の特徴は、花弁内部に蓄えられた多量の蜜にある。この蜜は外傷の治癒において卓越した効果を発揮し、患部に直接塗布することで、しだいに細胞が再生していく過程を視認できるほどだと伝えられる。
その効能と希少性から、古代より貴族や高位神官の専用薬として珍重されていた。
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くっ……5000ポイント……。
しかし、背に腹は代えられぬ。どうせポイントは勝手に溜まっていくし。
どうせ放っておいてもポイントは勝手に溜まっていくし、なによりアサさんが、俺のケガを気にして落ち着かない様子だったしな。
そう思い、俺は鳳緋花のページを上にスワイプした。
──目の前に現れたのは、一輪の大きな、そして威厳たっぷりな花。
「まあっ! とっても綺麗なお花ですわね! わたくしのお家にも飾りたいですわ!!」
ミュリさんが瞳をきらきらと輝かせて見惚れている。
一方で、アサさんはどこか微妙な表情を浮かべていた。
「……ル、ルナセリアン……」
「どうかしましたか?」
「いや、いや……なんでもない。……それより──」
アサさんは花に手を添えると、花弁の奥へと指を差し入れ──
ぐちゅ、ぐちゅ、と音を立てながら蜜を掬い取った。
「この蜜を患部に塗ると、すぐに治るはずだ。本当は別の素材と混ぜて成分のみ取り出すといいのだが。ほら、見せてくれ」
「えっ──あはぁん!?」
アサさんの、蜜でぬるついた指先が俺の傷口に触れ、やがてゆっくりと患部をなぞる。
「ひゃ、あ……ああっ……」
一瞬しみるかと身構えたが、そんな刺激はまるでない。
むしろ……気持ちいい。
「──あっ、そこ……」
「な、なんだかいかがわしく見えるのはわたくしだけ……?」
「何を言う、ミュリ。これは治療行為だ。なんなら、ミュリにもあとでしてやろうか?」
「えっ!? わたくしはケガなどしておりませんわ!?」
「でもほら、気持ちいいぞ」
「あぁん……」
「遠慮しておきますわ!?」
「……そうか。──ほら、塗り終わったぞ」
「えっ、もう……? あ、ありがとうございます」
患部を見ると、すでに擦り傷などの小さなキズは塞がっており、大きな傷も徐々に治り始めていた。
大きな打撲跡も、じわじわと色が引いていきつつある。
「まあ! みるみるうちに治っていきますわ!」
「す、すごい……どう言う原理なんだ」
「回復系の魔法と同じ原理だ。体内エーテルを活性化させることで、細胞の再生速度を急速に早めているにすぎない。だから自然治癒力で治る範囲を超えたダメージ──四肢の欠損などには効果が無い」
「な、なるほど?」
つまり、あくまで ”傷の治りを超加速させてる” わけか。
というか、回復系の魔法ってそういう感じなんだ。
……魔法か。ちょっと──いやかなり興味がある。
俺も習ったら、使えるようになったりするのか?
そんなことを考える俺のケガが段々と治っていく様を、ミュリさんは子どものようにじーっと観察していた。
「そうだ、ひとつ聞いてもいいか?」
そんなミュリさんを尻目に、アサさんが口を開く。
「はい、なんでしょう?」
「その召喚できる植物の中に、パラグナ草、ってのはないだろうか。モグルの手綱に使いたい」
「あ、なんかそんな感じの名前、さっき見ました」
俺はページをめくり、パラグナ草を探す。
──これか。
確かに、”縄のような強度を持つ草” という記述があった。
召喚に必要な山ポイントも600ポイントでそれほど高くないし、グリフォンの手綱になると思えば悪くない。
即座に召喚すると、目の前に、腰の高さほどもある赤紫色の細長い草の茂みが現れた。
アサさんがすぐに歩み寄り、草の一本を手に取って状態を観察すると、大きく頷く。
「──よし、これなら良い手綱が作れそうだ」
満足げに頷くその顔は、まるで優れた素材を見つけた職人のようだった。
「ふぅー。色々召喚したし、乗馬も体験できたし、今日はこのくらいで──」
──その時、突如として空気を震わせるような轟音が響き渡った。
「な、なんだ!?」
「な、なんですのっ!?」
俺とミュリさんがわけもわからずキョロキョロしていると、アサさんが吹き出しそうになりながら言った。
「今のは……ふ、ふふっ……モグルの腹の音のようだ。──ほら、モグルも恥ずかしそうにしている」
見ると、モグルは凛とした佇まいながらも、なぜかこちらと目を合わせようとせず、そっぽを向いていた。
「なーんだ! 隕石でも落ちて来たのかと思いましたわ!!」
俺たちは顔を見合わせて笑った。
……とはいえ、確かにモグルは召喚されて以来、口にしたのはカムビ1匹だけのはず。
「モグル、ちょっと待っててな。今、美味そうな魔物を──って、あっ」
しまった……
気づけば、鳳緋花の召喚で大きくポイントを消費したので、残りの山ポイントはわずか1000ほどしかなかった。
これでは、召喚できる魔物なんて……スライムか、せいぜいガルムくらいだ。
「どうしたんだ?」
「いや、山ポイントが全然残ってないので……召喚できるのが、スライムかガルムぐらいしか……」
「そ、その二択なら絶対、ぜーったいガルムの方がいいですわね……」
「……すまないが、そうしてくれ。私の鼻が本当の意味で曲がってしまう」
アサさんがグリフォンを見ると、グリフォンも凄い勢いで頷いた。
そりゃそうだよな。
と、いうわけで。
モグルには今日のところはガルム3匹で我慢してもらうことに。
すまないな、モグル……次はもっと美味しいもの食べさせてやるからな……
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なので明日は投稿予定なしです……
土曜日は12時10分更新予定です!
→すみません、今回だけ日曜日に、、、
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