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第11話 グリフォンの名前を考えよう

リアクションやブクマ、ありがとうございます!!

次の日。


今日は、これといって目的もない──しいて言えば、減った山ポイントを少しでも回復する日、といったところ。


現在の山ポイントは、7100ポイント。

昨日、11000ポイントを使ってグリフォンを召喚した割には、ずいぶん溜まっている。

これも、グリーンスライムによる雑草処理と、バジリスクのグリーンスライム狩りによる好循環のおかげだ。

これにより、とりあえず放置していても山ポイントが貯まっていく。


とはいえ、更に効率よく山ポイントを稼ぐ方法を考えたいところだな。



広間でミュリさん、アサさんとともに朝食タイム。

三人で囲むテーブルには、シルマリルの実とイモ、そして──昨日焼いたカムビの残りが置かれていた。


「……パサパサですわね」


「パサパサですね……」


「そうか? 私は美味いと思うが」


カムビの肉は、骨ばかりで可食部も少ないうえに、パサパサでジューシーさのかけらもない。

久しぶりの肉だったので、ありがたくはあるけど──正直ビミョーな味だ。


「それで、今日はどうするつもりだ?」


アサさんがカムビの肉をもしゃもしゃしながら言う。


「今日は、そうですね、今のポイントで召喚できる中で、コストが低い魔物から順に試してみようかと」


「試す? 何のためにですの??」


ミュリさんが首を傾げる。


「もっと効率よく山ポイントを貯めたり、山の環境を良くしたりできる魔物を探すという目的もありますが……一番は興味ですね」


「興味、ですの?」


「はい。俺はこの世界に来たばかりなので、少しでも色々知りたくて。それに、魔物という存在自体に興味があるんですよね」


「クロノは異世界から来たんだったな。そっちの世界には魔物はいなかったのか」


「そうなんです。だからこそ、余計に興味があって」


「そうなのですね。でしたら、このウツセミの山に多様な生態系を作るとよいですわね!」


「多様な、生態系……?」


「ミュリの言う通りだ。例えばワイバーンのように、高温環境に適した魔物、あるいは寒冷地、湿地、水中など、それぞれの環境に適応した魔物がいる。多様な種を見たいのであれば、それに応じた環境の整備を考えるべきだろうな」


「いや……でも、ひとつの山の中でそんなに環境を変えられないですよ」


「そうでもないぞ。昨日も話したが、周囲に大量の雨を降らせるジエロドラゴンがいれば、人工的に熱帯雨林のような気候を生み出すこともできる。上手くいけば、川や湖の形成も夢ではない」


「な、なるほど。魔物の超常的な力で、無理やり環境を変えられるのか……」


「アサ様、色々とよくご存じですわよね! 召喚して本当に正解でしたわね!」


「ほんと、最初は木登り要員だったんですが、知識面で本当に力になってくれてます……」


「き、木登り要員……」


アサさんが絶句していたのを見て、俺とミュリさんは顔を見合わせて笑った。



〇 〇 〇



朝食後、ミュリさんの錆びついた剣を片手に、俺たちはウツセミの山へと入っていった。

向かうは、”シルマリル広場”──シルマリルの樹が中央に生えている、いつもの広場だ。

名付け親はミュリさん。安直な名前だが、分かりやすくて俺たちは気に入っていた。


そんなシルマリル広場への道中。


「あっ、クロノ様、見てくださいませ!」


ミュリさんが指差す先には、枯木や石で造られた鳥の巣のようなものがある。


「鳥の巣……ですかね? 卵があんなに」


巣の上には緑に黒い斑点のある、大きな卵が10個ほど並んでいた。


「何の巣なのでしょうか?」


ミュリさんがちらりとアサさんを見る。


「あれは──バジリスクの巣だな。見ろ、巣の上にバジリスクの鱗が落ちている」


確かにそこには、大きな黒い鱗が見えた。


「バジリスク……ああ! そういえばもう一体召喚しましたね!」


アサさんに見せようと、バジリスクを召喚したことを思い出す。

あれと、グリーンスライム駆除用に召喚したバジリスクがたまたま異性だった、そして番となって卵を産んだ、ということなのだろう。


「ということは……あれはバジリスクの卵、なのでしょうか」


「ああ。──知っているか? バジリスクの卵は珍味として人気らしいぞ」


「珍味?」


ミュリさんの呟きに、アサさんが頷いた。


「あのバジリスクの卵だ。もちろんのこと毒がある。しかし、しっかりとした下処理を経ると飛び上がるほど美味いと聞いたことがある」


「と、飛び上がるほど……ごくりっ」


「ミュリさん、よだれ、よだれ。……でも、毒があるなら俺たちじゃどうしようもないですね」


生レバーやフグなど、店で出てくれば食べるが、自分で調理するとなると絶対嫌だよな。

こんなもので死んだらもったいない。


「それなら、人間の街に持って行けばいい。調理方法を知る者がいるだろう」


「なるほど……でも、いつ卵から孵るか分からないから怖いですね……」


街に持ち込んで孵化でもしたら大騒ぎ間違いなしだ……


「でも、ほっとけば今度はバジリスクが10匹も増えるのか……」


自己増殖を続けるグリーンスライムだが、流石に12匹のバジリスクがいたらまた絶滅してしまう。

生態系って難しいな……


「であれば、間引くと良いのです!」


「間引く、かぁ」


確かに、俺の能力のおかげで、この山の中では魔物を安全に一撃で倒すことが出来る。


「……それか、グリフォンのエサにするか、だな」


「ああ、その手が!」


グリフォンはあの巨体ゆえに、正直昨日のカムビだけでは物足りなさそうだった。

何か美味そうな魔物を召喚してやってもいいが、確かにバジリスクを処理するついでに食べてもらうのもアリだな。


そんなことを考えながら広場へ向かうと、

そこには、昨日召喚したグリフォンが犬のように丸くなって休んでいた。


「お、おーい……来たぞ~……」


遠慮がちに声をかける、グリフォンがうっすらと目を開け、のそりと立ち上がった。

……やっぱりデカいな。


グリフォンはブルブルと身体を震わせると、ゆっくりと俺のほうへ歩いてくる。

そして、頭を俺の目の前へ突き出してきた。


……これは、撫でてくれってことか?

その巨体に圧倒されながらも、俺はそっと手を伸ばし、軽く頭を撫でてやる。


グリフォンは心地よさそうに目を細め──やがて、満足げに一歩下がった。

ほんと、賢い大型犬みたいだな。


「これほどまでに賢い個体は、私も初めて見る。グリフォンの中でも特別だ」


アサさんがグリフォンの隣に寄り添い、優しく身体を撫でる。


「とってもモフモフで気持ちがいいですわぁ……」


ミュリさんもグリフォンの毛に顔を埋め、うっとりとした表情を浮かべていた。


「グリフォンの毛は、極上の一級品──最高級だ。肌触りが良いだけではなく、保湿性にも優れている」


「そうでしょうとも。これほど気持ちがいいのですから。はあ、このまま背中の上でお昼寝したいくらいですわね……」


二人にひたすらにモフモフされるグリフォンだったが、当の本人は特に気にしていなさそうだった。


「そういえば、名前はつけてやらないのか?」


「名前ですか?」


「ああ。今後グリフォンが山に増えることもあるだろう。であれば、この個体特有の名前をつけておいたほうがいいだろうと思ってな」


「確かに! 呼びやすくてかわいい名前が良いですわね!」


「な、なるほど?」


全く考えていなかった……


「とは言ったものの……」


「名前……ねぇ」


この俺のネーミングセンスを甘く見ないでほしい。

実家の犬の名前はクロ。

昔飼っていたカブトムシの名前はカブ。

……以上だ。


「名前……なまえ……うぅーん、難しいですわぁ……」


ミュリさんとうんうん唸っていると、


「そんなに難しく考える必要は無いと思うが」


と、アサさんが小さく笑って口を開いた。


「例えば──モフモフのグリフォンだから、モグル、なんて」


「モグル!!!」


ミュリさんが勢いよく復唱する。


「いいですわね! 呼びやすくて、可愛さもあって、完璧ですわ!」


モグル……確かに、丸い響きで親しみやすいし、呼びやすい。


「うん、モグルにしよう。──モグル、これからもよろしくな」


グリフォン──モグルに一歩近づいてそう言うと、モグルが頷いたように見えた。


「──それにしても……アサさん、けっこう可愛いネーミングしますね。モフモフのグリフォン、なんて」


「ふふっ、ほんとですわねっ!」


「な、なんだ。……文句があるなら言えばいい」


少し顔を赤らめるアサさんに、俺たちは顔を見合わせた笑った。


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