7悠の勇気の功績
「「「…」」」
悠が幸福感を隠しきれずにニコニコしながら話し終えると、光姫、杏哉、メイサは黙りこくった。悠が首を傾げると、彼らは一斉に叫ぶ。
「『期待しないでくださいよ』って前置きはなんだったんですか! 悠さんの幸せは私の幸せですが、思っていた内容と違って困惑してますよ!」
「ぼっちだった彼氏に友達が出来て嬉しくないわけないけど、何人か分けて、って気持ちね! アタシ、自分で言うのもなんだけど、友達多かったのよ。けどみんな離れていったわ。隣には親友一人しか残ってない。まぁ、真矢だけで十分だけど。何が違うのかしら?」
「幸せそうで何より。…なんでお前はそんなに同級生に恵まれてるんだ?」
三人は悠の幸福を自分ごとのように噛み締めるも、自分らとの境遇の差に不満を抱く。
「いや、わかんないじゃないですかぁ! 明日には飽きて話してくれなくなるかも…。」
悠の消え入りそうな声に、三人は批難する。
「そんなわけないでしょう! なんですか一日限定のベストフレンドって!」
「そんなこというからぼっちになるのよ!」
「そうだそうだ! まずは友達を信じろよ!」
三人から非難の声が飛び、悠は肩を縮こまらせる。
「…はい。」
悠はか細い声を出して首肯する。
「どれだけクラスメートに恵まれてるかわかったならいい。まぁ、昨日お前が勇気を出して水文字で気持ちを伝えた、っていうのも大きいだろうけどな。よかったな。」
現在、唯一の男友達だった杏哉が、不満を抑え、今度こそしっかり悠を祝福する。
「うん。…けど、同性で一番仲良い人が杏哉なのは、この先も一生変わらないから。」
杏哉のほんのり寂しさを含んだ笑顔に気付いて、悠はコクっと頷く。自分の気持ちが滲み出ていたことに気付かされ、杏哉は面映ゆそうに返事をする。
「俺も。」
二人は顔を見合わせ、こそばゆそうに笑った。悠は眼前の杏哉の爽快な笑顔を見つめ、ベストフレンドの肩書きは、この先も一生愛之助には渡せないな、と思った。