表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

第三話 雨音の向こう側

ぜひレビューや感想&Twitterのフォローお願いします!


@AngelEdge_nov

https://x.com/AngelEdge_nov

放課後の教室には、まだ数人の生徒たちが残っていた。

優希はカバンを肩にかけながら、窓際の席に目をやる。そこには、いつものように詩乃が小さなパンを食べながらノートを広げていた。

「いつも何か口に入れてる気がする……。」

心の中でそう思いながらも、声には出さずに足早に教室を出る。

それでも、つい振り返ってしまう自分に気づいて、優希は小さくため息をついた。

廊下を歩きながら、優希の心はどこか落ち着かなかった。

昨日、詩乃と公園で話したことが頭の中を巡る。彼女の無邪気な笑顔と、優しさ。

「……なんなんだよ。」

心の中で呟きながら、靴箱に向かうと、後ろから軽快な足音が近づいてきた。

「雨宮くん!」

振り返ると、そこには詩乃が立っていた。手には、いつものパンが握られている。

「……何してるんだよ。」

「ん? 学校帰りに話しかけちゃダメ?」

彼女は首をかしげながら、いつものように自然体だった。

「……別に。」

「それより、ほらこれ! 食べる?」

詩乃が差し出したのは、クリームがたっぷり入ったメロンパンだった。

「……いらない。」

「またそんなこと言って。昨日だって結局クッキー食べたでしょ?」

「……それは。」

詩乃は楽しそうに笑いながら、一口メロンパンをかじった。

「あ、美味しい! やっぱりこれ、最高だね。」

その何気ない仕草に、優希は少しだけ気を許してしまいそうになる。

「それで、どこに行くの?」

「……公園。」

「また?」

「別に……悪いかよ。」

詩乃は少し考えるような仕草をしてから、笑顔を浮かべた。

「じゃあ、私も行っていい?」

「……勝手にしろよ。」

公園のベンチに座る二人。優希は空を見上げ、詩乃は隣でメロンパンを食べ続けていた。

「雨宮くんって、よくここに来るんだね。」

「別に……落ち着くから。」

「ふーん。」

詩乃はパンを最後の一口で食べ終えると、空になった袋をカバンにしまった。

「ねえ、雨宮くんってさ。」

「……なんだよ。」

「いつも何考えてるの?」

突然の質問に、優希は少し戸惑った。

「……別に、何も。」

「本当に?」

「本当に。」

詩乃はそれ以上追及することなく、小さく笑った。

「そっか。」

その後、二人の間に訪れる静けさは、不思議と気まずくはなかった。

夕方の風が吹く中、優希は少しだけ自分の心が軽くなった気がした。

この日の帰り道、優希はふと気づいた。

彼女が自分に見せる笑顔には、どこか隠れた寂しさがあるように思える。

それが何なのかはわからない。ただ、彼女もまた、何かを抱えているのではないかと感じた。

「……一ノ瀬詩乃。」

彼女の名前を口に出したとき、ほんの少しだけ心が温かくなった。


次回、優希は詩乃の秘密に少しだけ近づくことになる。

彼女の明るさの裏に隠された本当の思いとは――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ