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滴り
触れるだけで壊れてしまいそうな程に薄く、然しその節々は逞しく張り詰め、大胆な広がりを見せた花弁は、日中には木漏れ日を透かし、逆さに幾葉も、黄金に透けた、幻の花弁を複製し、夜中にはその内に月光を映し、僅かにその光を漏らしながらも輝きを蓄えていた。子分のような辺りの草々もその様子を囃し立てるようにさらに生い茂る。静かな気分は何処かへ行き、それらはどんどんと勢いを増していった。そして、押し合い、踏みつけ合い、根をも複雑に絡ませ合うと云った、草々の無限の争いは終わりを見ないように思われた。畏怖の念など忘れさせるような光景であった。然し、そんな世界の中心で花開いた小さな美しさは、辺りの様子のために、より顕著に特別な存在となった。草々も辛うじてその禁域には立ち入らず、内に秘められた力が、日に〻〻少しずつ、花弁を広げ、光はその分だけ輝きを零していった。草々の広がる大地には、姿こそないが、円を描く囲いがあるように思われ、辛うじて蕾は守られていた。