零落
ーー中の流れもいよいよ甚だしくなり、小舟の居る場所にも、流れの尾が届いた。その先は壁の中心に向かって、深く〻〻、闇の中へと続いていた。白波は流れるものを、闇の中に掻き入れるようにして、何処からともなく湧き出ていた。
山には轟音がこだました。あらゆるものが、次々と下界に顚落した。小舟も、鏡に映る一葉の幻と離別して、ゆっくりと壁の中心へ向かい始めた。緩やかな勾配を下り、壁の向こうから鈍い音が振動と共に伝わる。目の前は白波の限りで、その仕切りの先は見えない。仕切りの向こうの日光が透け、靄のような、ぼやけた明かりを醸していた。勾配は急速に高くなっていく。最早滑り落ちる奇妙な壁と共に落下しているようであった。そして暗闇に包まれ、小舟は山に響く轟音の中心に達し、瞬く間にそこを過ぎ去っていった。
目の前が微細な霧に覆われた。然し、霧が空を覆っていたが、粒の一つ〻〻は、確実に下へ落ちていた。次々と作られる粒が降り注ぎ、混じったものは皆、それらに突き落とされていく。霞がかる空気の隙間に、灰色の街並みが映された。アスファルトの舗道が、虫が住み、種が埋まり、地下水が流れる地面を覆っていた。然し、小舟は落ちる。そんな風景は直ぐに何処かへ行ってしまった。




