仇、恩、何れに銘肝
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
これこそがきっと、人間の性。
お腹が空いた。頭が録に回らない程に。故に私はお行儀悪くも自販機で袋状のお菓子を片手にふらり、ふらりと街中を歩く。踊るような足取りに合わせ、階段を登って行くと、目の前が黒一色で覆われた。
顔を上げると困り顔の梅香の君が私を見下ろしていた。ヤンチャな子を諭す様な顔だ。
「お行儀が悪いよ」
「あら、これは失礼」
とりあえず食べるのを止める。切れ長の鋭利な目と暫く目線を合わせ続ける。傍から見れば睨み合っているかの様な光景。先に口火を切ったのは私からだった。
「でもそんなにお行儀悪いですかね?」
「傍から見るとね。……人間は自分の行いに盲目な生き物だから、仕方が無いのかな。……した事は忘れても、された事は忘れない。迎撃された時に全ての過ちに気が付く」
大きなため息一つ。米神を抑えて、歯を真一文字に引き結んだ。嫌な事を思い出している様だ。
この方が、この言葉を言うと重みが全く違う。人の妬みに振り回された人生だろうから。それは生前も神になった経緯からも。
皆気が付かぬうちに人を傷付けて、扱き下ろして、全て忘れて何食わぬ顔で今生を歩む。でもそれは……。
「……でもきっと私もそうなのかも知れない」
目には慈悲が浮かんでいた。過去の据からは逃れられなくとも、それが今の御自身をたらしめている物だとしても。きっと受け入れている。どれだけ傷付こうとも。
私は持っていた袋を梅香の君に差し出した。
「……お詫びに宜しければ」
「戴くよ」
渡された袋からお菓子を一つ摘むと、口の中に放り込んだ。軽い音を立てて噛み砕く音を聞きながら、私もお菓子を口に入れた。甘いチョコの味が口に、胃に染み渡る。
「私はね、された仇は忘れないつもりだけど、施された恩も忘れないつもりだよ。それが少しでも、忘れた過ちの償いになると良いね」
忘れないのだと、思う。梅香の君は。こうして献上した他愛のないお菓子の事も、きっと。
全然関係ないオマケ
「梅香の君は夜って感じがします。夜に浮かぶ満月……みたいな……。昼間に爛れる朝日ではありませんね。あれは三狐神様とか、飆靡様とか、白羽様とか……」
「本当かい?」
「夜だけは……私に優しいので」
「抱き締めたくなるほど嬉しいな……」
懐かしいお祭りソング聞きながら書いてます。
白羽様が言ったら似合い過ぎてやべぇな〜。
という気分です。ま、それは置いといて。
梅香の君の好きな所の一つ。
執念深く、された事をしっかり覚えてそうな所。
ふとした途端に、笑顔で迎撃して欲しい。
普段の優しさとは離れた、仄暗い部分を晒されると、もう!! もう!! もう!! 好き!!
(完全無欠そうな人の仄暗い所見せられるとか沼。最高)
でもそんな所も気にしてそうな気がします。
神様になっちゃったから。
注意する側だから、手本にならなきゃいけないから。
だから最後の言葉だといいなぁと。
今の自分がいるのはこの執念故。これを治すことは出来ないけれど、された恩も石に刻め。と言うような。
最後のオマケは夜になると浮かべる言葉。
夜だけは優しいのです。
夜にお布団に包まる時だけ、生きてて良かって思うんです。