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第1話 ダメな私

私は窓の外の雨粒を見ていた。

どうしてこうなっちゃうのかな。


今日は、父が決めた婚約者のアーノルド様をお呼びしてのお茶会の日なのに。



私はアマリア。なんてことない伯爵家の娘。


年はもう十七なので、嫁ぎ先を探していろいろなパーティなどに顔を出していなくてはいけないお年頃。


だけど、どうしても妹のグロリアの方が目立ってしまう。


私のほうが背が高くて大きいのだけど、彼女の方が存在感があると言うか、なんと言うか。


私は髪の色も目の色も薄くて印象に残らない。


妹は髪は濃いめの色で、はっきりとした黒目だ。体つきだって、とても魅力的で印象に残る。


どうも私は目立たないらしい。



先日は、父が一生懸命私のためにパーティを開催してくれた。


義母は、私のためのパーティなんか開く気は絶対なかったと思う。それでも、父に強く言われて、しぶしぶパーティを開いた。

何しろ、もう十七才なのに、一件も話がないのである。このままなら、行き遅れまっしぐらだ。


本当だったら、私を売り込んで、どこかに嫁に出すためのパーティだったのだけど、社交的で、明るく、快活な妹は、話題をあっという間にさらってしまい、気がつくと結婚相手の候補として呼ばれた男性たちは全員妹のそばに(はべ)っていた。


従兄のフレディは、事情を知っているので、私の周りに集客しようと頑張ってくれたのだけど、妹は明るい声で素早く声をかけた。


「フレディお兄様! 今、先日の馬術競技のお話をしていますのよ? フレディお兄様は三位をお取りになったのですって?」


直接声を掛けられれば、行かないわけにはいかない。


それにフレディは、三位を取ったことが実際自慢でその話をしたかった。


「アマリアは陰気な方だから。しかたないわね」


母がなくなった後、後妻としてやってきた義母は、妹のグロリアのそばへ急いで向かうフレディの背中を見ながら、ちょっと満足そうにそう言った。



人とうまく話すのには、特別な才能が必要だと思う。


「アマリア、さっきの話題ですけど、お花を好きでない方にとっては興味がないと思うわ。語尾をあげたのも品が無い。それから、目上の方にとって、あの言い方は気に触るんじゃないかしら」


義母は私の会話をよく聞いていて、しょっちゅうダメ出しした。


「せっかくアンダーソン夫人を話し相手にお連れしたのに、気を悪くして帰られたじゃないの。あなたが悪いのよ。私たちまで困ってしまうわ」


アンダーソン夫人と話したのは初めてだったので、趣味も関心もよく知らないままだった。それにアンダーソン夫人は、正直難しい方だった。


ウサギがお好きらしくペットとして数匹飼ってらっしゃるそうだ。でも、初対面の人からは、ウサギをペットにするのは珍しいと言われることが多いらしく、最初からなんとなく喧嘩腰だった。


ウサギはかわいらしいですわね、とお愛想で言ったのだが、今度は、逆に気を良くしたらしく、怒涛の勢いでウサギ愛を話し始めたのには閉口した。


結局パーティの間中、私はアンダーソン夫人のお相手を務めなくてはならなくなってしまって、どの男性ともお話しできなかった。


パーティは惨憺たる結果になってしまった。


翌朝、父と義母、義妹がそろった朝食の席で、私は義妹に叱られた。


「お姉さま。せっかくお集りいただいたのに、どなたのお相手もなさらないだなんて、とても失礼だと思うわ。それに、武芸大会で誰が賞を取ったかくらいは覚えておかないと。アーノルド様がとても退屈そうにされていたわ」


妹のグロリアは私の失態を救うため、多くの殿方のお相手を務めなくてはいけなくて、とても大変だったと父に報告していた。


「せっかく相手をしてくださったアンダーソン夫人まで怒って帰られてしまって。お姉さまが、男性方に露骨に興味を示されるので」


「アンダーソン夫人のお話を一時間近くうかがいましたので、そろそろ別な方とお話しした方がいいと思いましたの。それで……」


「あなたの話の切り方がまずいのですよ。それに男好きだと思われてしまっただなんて、損なのよ。ものの言い方に、少しは気をつけなさい」


義母が苛ただしげにさえぎっった。 


父が少し嫌な顔をした。


「アマリア、当然、結婚相手のことは考えなくてはいけないが、露骨なのはどうかと思うな。下品だと思われるぞ?」


「アーノルド様が、そう見えるっておっしゃってましたわ」


グロリアが、非難を込めて言った。


「妹の私が同様に思われたら困るので、今後自重してちょうだい」


「今回の失敗の噂がなくなるまで、しばらくは夜会には出ない方がいいわ」


義母が言った。

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