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缶コーヒー 人生ならぬ“缶”生とは。

作者: 焼甘薯

じんわりと全身に暖かさが広がる。


だが周囲は依然として暗いままだ。

少し時間が経つと慣れて周囲がぼやっと見えるようになってきた。

さっきから重いと思っていたものは、のし掛かる仲間だったようだ。

あつっ!?

周囲の温度が上がってきた。

ちょうどいい暖かさは過ぎ去り、今や火傷をするくらい暑い。

早くここから出してくれ!

そう大声で叫んでみたが、誰も反応してくれなかった。


「ドーピング、していきますか。」


「もちろん?」


「ブラックに決まってんだろ。今日、国・社・英だぞ午後地獄確定。」



『ピッ』



突然音がして下の板が無くなった。僕の体が落ちていく。

行く先の不安より、今の暑すぎる場所から出れるという歓喜が優った。

落下を感じたのは一瞬、僕は強烈な光の中に叩き込まれた。

大きな何かが伸びてきて僕を掴む。


「ガチでよぉ、二百点満点で十二点とか終わってんだろ。」


「え、お前、前回の国語?」


「やば!数学九十六点の発言と思えねぇな。」


僕は放り投げられたり、振られたりして頭がグワングワンとしている。

しばらく動くと、僕はどこか平らな場所に立てられた。

目の前に細長い棒と白い四角い箱が転がってくる。


突然掴まれた僕は頭を引っ張られ、後頭部から中身が吸われていくという恐怖体験をすることになった。

中身がどんどん無くなっていく。

ゾワワワワーーーッ!

全身に鳥肌が立つ。


「よし、いっちょやりますかね。」


「問題冊子と解答用紙を配りますー。

 表面に記載された注意事項をよく読んで待っていてください。

 みなさん時計は机の上にありますか?この時計外しますよ。」


何かが僕の横に物を置く。それは体の中心から出る三本の針を規則正しく動かしていた。

と思ったらまた掴まれて残っていた中身を全て吸われる。



「自己採点十五点じゃボケェー!!」


その言葉と共に空中に投げ出された僕は腹部に強い衝撃を感じる。蹴られたのだ。

そのまま吹っ飛び地面に転がる。


「ヒャハハ!十五点!?進歩してねぇなお前!」


「三点増えたんだよ!ブラック飲んだのにな…。」


「カフェインに学力向上の効果は無ぇよ!あとな、飲んだ缶くらいちゃんと捨てろ。」


僕は蹴ったのとは別の何かに拾われて丸い穴に放り込まれる。

落ちた先には同じように中身を失った仲間が大勢倒れていた。

よかった、こんな目に遭っているのは僕だけじゃない。

そう安堵に包まれながら、僕の意識は暗い穴の中に落ちていった。


僕は缶コーヒー。あなたのちょっとした日常を彩る。

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