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第5話『佇む』

オレの名は神崎悟。どこにでもいる社会人だ。

毎月末、午前零時に異世界に出掛ける旅行者でもある。


 いつものように寝て、起きる。

 ここはどこだ?私は何だ?

 誰かに体を揺すられているような、それでいて何かを引きずっているような感覚がある。

 周囲を見渡すと、棚が見え、机が見え、電灯が見え、扇風機が見え、人が寝てる。

 人が寝てる?ということは、また、物か!?


 上を見ると黒い線が見える。あれはフックか?何かに吊られているようだ。

 背中から心地よい風が当たっているように感じる。

 背中を見ようと思うが体が動かせない。

 何かに磔にでもされているのだろうか。

 だが、縛られている感覚は無い。

 ただ何かに吊り下げられて風で動いているような。

 思い当たるものをとにかく考える。

 せめて、後ろが見られればよいのだが動けぬのだから仕方が無い。

 ん?そういえば呼吸をしていないな。

 また人形なのだろうか?


 ん?視線を感じる。

 どこだ?下から何か嫌な気配がする。

 猫か。

 何やら臨戦態勢を取っているな。何をする気だ?

 ま、まさかオレを食うのか!?

 いや、オレは食っても美味くないからそんな目つきで見るのは止めてくれ!

 威嚇されても困るのだが。

 ぬ!飛び付いてきた!?

 痛っ!下に引っ張られるっ!爪がっ!爪が食い込むっ!

 止めてくれ!よじ登らないでくれ!

 よじ登る?そうか、オレはカーテンになったんだ!

 んなことより穴だらけになるぅ!痛ぇ!


 な、何?飼い主起こすから協力しろ?

 わ、分かったから早く飛び移ってくれ!

 なるべく早く頼む。糸が切れるから!


 どすっ

「ぐえっ!!」


 あー、やっぱりそうなったか。

 高いところから猫ダイブ食らったらそうなるよな。

 飼い主生きてるかな?


「お前ぇ、また高いところから飛び降りたんか!」

「遅刻しないから良いんだけどさ、もちっと低いところから降りてくれ」


 あ、生きてた。

 おいおい、猫ダイブを起床の合図にしているのかよ。

 タフなやつだな。

 しかし、オレは穴だらけの傷だらけだよ。もう止めて欲しいな。


 何だ、猫よ?またやるから諦めろ?

 心配しなくても大丈夫だ。何せ明日はいないからな。

 あー、風が心地良い。

 穴だらけの体を抜ける風ってなぁ、案外気持ちが良いもんだな。


オレの名は神崎悟。手軽に異世界を楽しむ旅行者だ。

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