1 もしもの話だよ
ラウムに憑依している青年のお話です。
「なぁ、もし異世界に転生したらどうしたい?」
晩飯を食べ終わりテレビを見ながらゆったりしていたとき、弟の智也がニヤニヤしながら聞いてきた。
智也は最近、ライトノベルにハマっているらしい。
「うーん、今別に転生したくねぇわ。最近やっと仕事に慣れてきたし」
俺は思ったことをそのまま口にした。
「はぁ?何そのつまんない回答。もうちょいあるだろ?チート使って無双して、ハーレム作りたぁいとかさぁ…」
弟があきれ気味に言う。
「んなこと言ったって、転生とかあるわけないことを妄想するより、どうやったら仕事の効率を上げられるかどうかを考えた方が良いだろ?」
「あーはいはい、そうですねそうですねー(棒)。ふぅ……やれやれ、そんな真面目腐ったことばっか言ってるから彼女できねーんだよ?お兄ちゃんよー」
正論を言っただけなのに、軽くあしらわれた。しかもディスってきた。
「うるせぇ!俺が1番わかってんだよ!つーかお前はもうさっさと寝ろ!明日かわいい彼女とデートなんだろ?クソッ!リア充め!爆発しろ!!」
「最後ら辺、ほぼただの僻みじゃねーかww」
イライラしてる俺をよそに智也はケラケラ笑っている。
「んじゃ、おやすみーw 明日9時ぐらいに起こしてー」
自分のデートの日ぐらい自分で起きろ!と言おうとしたが、弟の言動に呆れすぎて言葉が出なかった。
♦︎♢♦︎
「ゴッッ」
ボーリング玉を落としたみたいな、鈍い音がした。
今何時だ?そう思うと同時に、頭を何かで殴られたみたいな鈍い痛みが走る。
左頬にドロリとした生暖かい何かが這っていく。
これは……血…か?
わからないが、経験上この感触に近いものは血だ。
それを理解した瞬間に、鈍かった痛みが激痛へと変わる。
痛みに耐えながら横向くと、部屋の豆電球を背に、何者かの影があった。
相手も、俺が横を向いたことに気づいたようで、体をビクリと振るわせた。
あ、やばいな。これ、とどめ刺されるわ。
ほら、なんかを振りかぶっちゃってるよ。
「ゴッ」
その音を最後に、俺は意識を手放した。
少しでも期待できるなと思ったら評価お願いします!