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赤竜転生録  作者: 42神 零
誕生・訓練編
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06:旅立ちは突然に…。弟妹達よ、さらば

 それからもう一年が経過した。相も変わらず、俺たちはドラゴン機能訓練(と勝手に呼んでいる)を積み重ね、少しずつだが立派なドラゴンへと成長し始めた。


 体格は既に五メートルを超え、自身が持つ鱗や甲殻にも色が付き始め大きくなり始めた。


 最初飛ぶのに怖かった飛行訓練も慣れて、滑空ではあるものの飛行できるようになったぜ。


 人生…いや、竜生初の滑空は気持ちよかったな。風がさ、こう靡いてね…難しいけど楽しかったのは覚えている。


 ちなみに、飛行といえば三女だが。驚くことに翼の大きさが俺たちを抜いて一番でかくなった。無意識とはいえ鍛え続けた賜物だな。


 当然変化は三女だけではない。次男は泳ぎが得意ようになったためか水掻きが生えたり、長女は翼から鉤爪状の爪を持つ帯のような触手が計六本生えたり、三男に至っては甲羅のような甲殻を纏うようになったと、変化はそれぞれ異なっていた。


 当然俺にも変化が起きていた。それは角でも翼でも尻尾でも無く、胸と喉である。


 あの日からブレスに関する特訓を父ちゃんから立て続けに教えて貰う他、自主練と称して狩りの中で様々なブレスを使い分けてやってみた結果、こうなった。


 お陰で皮膚の亀裂から少しオレンジ色の光が輝いている。別に体の違和感なんてないが、目立つのであんまり好きではないな。


 さて、それぞれ進化を辿り始めた俺たちだが…どうやら旅立ちの日というものに直面したらしい。


 どういう意味かって?今日、目が覚めるとな…父ちゃんドラゴンと母ちゃんドラゴンの姿がなかったんだよ。


 最初は狩りにでも行ってるんじゃないか?と勘違いしていたが、日が沈んでも帰ってくるような気配はなかった。


 自然界ではよく、子を育てた親は行方を晦ますと聞く。いい例がウミガメだ、あいつらは育てるどころか卵を産み終えたら海ン中入って行ってどっか行きやがるからな。


 いやまぁ、なんつーんだ?いつしかこんな日が来るんじゃないかと、そう覚悟はしていた。


 だがなんだろうな。心の中では寂しいっつー感情はあるが涙が出てこない…なんでだ?


 弟妹たちも寂しそうにピーピー鳴いているが涙が出ていない。ドラゴンに感情がないっつー話は本当らしい。


 …そろそろ潮時、だな。


 実を言うと進化した部分はもう一つあってだな。喉や胸もそうだが、最大の点はそこじゃない。


 俺は鳴き続ける弟妹たちの前に経つと座り込み、翼を広げながら口を開いた。


 喉が少し熱いが気にすんな。これが今の俺のデフォルトなんだよ。



『おまえら。そろそろ、旅立つ』



 で、最大の進化っつーのは…なんと言葉を発することが出来るようになったということだ。


 つっても口の構造は人間と違うのでそれを動かしながら声を発するなんて難しすぎる。だからこんなぎこちない話し方で申し訳ない、これが今の限界なんだよ。


 そもそも相手はドラゴン。俺の言葉を理解出来るのかどうかすら疑わしいが、通じなくともお別れの一言ぐらい残すっていうのは普通…だよな?



『俺、遠いところ、行く。自分、探す』



 なにを伝えたのかというと自分が何のためにこの世界へやってきたのか、その真相を確かめようとそう伝えた。


 正直なところ、自分探しの旅なんてこいつらにとってはどうでもいいんだろうが…こんな成りになっても俺は人間だ。


 少なからず心や知能はある。姿かたちは違えど俺は俺だ、意思がある以上人間と俺は自称するぜ?



『お前ら、安全、生活…心、願う』



 確かにこいつらは本当の家族なんかじゃない。そもそも種族が違うんでそうとしか言いようがない。


 でもこの二年間、共に過ごしてきたことは真実だし、父ちゃん母ちゃんから注いでもらった愛情は本物だ。


 どんなに遠く離れていようが、俺たちは兄妹…お前らが安全で安心出来るような生活を心から願ってるよ。



_………。



 俺の話を聞いた可愛い弟妹たちはしんみりした空気の中、寂しそうな眼差しでこちらを見つめてくる。


 言葉なんて通じていないんだろうが本能的にこれが別れだと察しているんだろうな。俺も寂しいんだからそんな瞳でこっちを見ないでくれ。



『元気、でな』



 そんな視線を感じながら、俺は弟妹たちに背を向けて翼を広げ、巣を蹴っては身を投げ出した。


 重力に任せて落ちていく身の中、吹いている風の方角を感じながら読み取り、そしていいタイミングで翼を広げて羽ばたいた。


 推進力と風圧を利用して宙に舞い、姿勢を正して空を飛ぶ。…もう見慣れた光景だが空を飛べるっていうのはいいものだ。



_兄さん!!


_行ってらっしゃい!!



 背後から、正しくは巣から竜の咆哮が聞こえた。どうやら俺の意志が、言葉が通じたようだった。


 追ってくる気配はない…。完全に見送りってわけだな。



『行って、来る…!!』



 死別するわけじゃない、この旅が終わったらあいつらに会いに行こう。大好きな鮭をたんまりと持って行ってな。


 じゃあな、弟妹たち。元気でな…!






















 こうして、俺の果てしない旅が始まった。


 絶対に突き止めてやる…。俺は何なのか、何故この世界にやってきたのか。そしてどこの誰がこんなことをしたのか…全部突き止めてやるぜ!





                             -誕生・訓練編 完-

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