04:ドラゴン機能訓練!?自然界でもスパルタ訓練ってあんのかよ!!
あーあー、本日はー、晴天なり。
非常に快晴の昼下がり、生まれてから早一年が経つ。
俺たちも大きくなって並みの魔物なら簡単に狩れるようになった頃、両親ドラゴンから新たにある課題を押し付けてきた。
_よし、もういい頃合いだから空を飛ぶ練習でもするか。
…なんかそういう風に聞こえた俺はされるがままに飛行訓練を行うこととなった。
今回はいつも母ちゃんが見てくれたものの、生き延びる術を伝授させるためなのか強面の父ちゃんドラゴンが現場監督として仕切ってもらっている。
というよりも、今まではあくまで基本によるものだけであって、ここからはドラゴンとしての特訓だと…なんとなくそう感じてしまった。
で、肝心の訓練内容だが…。
『………』
…初めから約五十メートル以上はあるであろう断崖絶壁の場所へと連れていかれた。
いやいやいやいや!!待って待って、超待ってお父様!?これはいくらなんでも無理でしょ!?
落ちたらこんなの…ま、まぁ滝が流れ落ちてるんで死ぬことはないと思うけどさ!?こんなん精神的に死んじゃうよ!!
久々に恐怖心というものに掻き立てられてパニくってんですけど!?今からでも遅くないからもっと安全でいい場所が…!!
_わぁい、ナニコレー?
お、おい三女!!い、いや我が妹よ!!早まるんじゃない!!腕を、羽根をパタパタとさせるんじゃない!!
_いっくよー!!
あ、もうだめだこれ。あいつ助走付けて飛ぼうとしてる…。オワタ、オワタよあれ。ああなってしまった以上、止めることなんてできないぞあれ。
_やっほーい!!
三女おぉぉぉぉぉぉぉ!!ほ、本当に飛び込んでいきやがった!!
_おいらも行くぞー(三男ドラゴン)
_待ってよー、僕も行くー(四男ドラゴン)
_全く…遊びじゃないのに…(次女ドラゴン)
_………(次男ドラゴン)
え、ちょ…待ってくれよ。なんでみんなしてそう簡単に飛び込めるんだよ、怖くないの?え、死ぬの?
い、いや死にはしないと思うけどさ?もっとこう、心の準備とかいろいろあるじゃん?一応聞くけど、君たち初めてだよね?俺がおかしいのか?
『…グルル』
背後には俺を見つめる父ちゃんドラゴン。
決して襲い掛かってくるというわけではないだろうが、相変わらず恐ろしいほどの強面なので息が詰まりそうになる…。
『…?』
そしてその隣には一番妹の長女ドラゴンが首を傾げて心配そうな眼差しでこちらを見てくる。
…やめてくれ、我が妹よ。そんな眼差しで俺を見つめるんじゃない。
いいかい、この世にはね。万能って言葉はないんだよ。俺にだって出来ることと出来ないことだっていろいろと___
_兄上…行かないの?(長女ドラゴン)
『グルオオオオォォォォォォ!!!(行きゃいいんだろおぉぉぉぉ!!)』
畜生!!そんな感じに言ってるようにしか思えねぇからお兄ちゃん頑張っちゃうよ!!
こうなりゃイチかバチかだ!!俺にだって立派な翼がある!!飛べなくたって滑空ぐらいは出来るだろうがぁ!!
・・・
・・
・
そこから先の展開はよく覚えていない。
ただ目が覚めると全身が濡れていることから察するに、俺は滝壺に落とされた…というより、真っ逆さまになったらしい。
長女が涙目(になってるように見えた)でぺろぺろと舐めていたのでそうなったんだろう。
だが、俺はめげない。父ちゃんからの特訓だ、これを成功しない限りはこの先生きていくことなんて出来ない…なら、出来るまで続けてやる!
…と、気合十分なのはいいが既に日は沈んでいるため今日はここまで。少し見ていたんだが、結果的に三女が一番上手く飛び立てたことが分かった。
まぁ、日頃からパタパタと腕を振る癖があったんで、自然と腕力が鍛えられたのだろう。
つってもまだぎこちないな。飛ぶって言うのはただ単に腕を振ればいいって話じゃなくて風の流れを読んだり、その上で乗って滑空したり、神経だの筋肉質だのそういった細かい点を鍛えなければ上手く飛べない…と、本能的にわかった気がする。
よし、そうと分かれば特訓開始だ。巣に帰っても三女みたいに腕を振り続けて鍛えることから始めるとしよう。
…そう心を決めて三女とやってみたのはいいんだが、どうもあいつは訓練を遊びに付き合ってくれる人と勘違いしたらしく、バタバタと腕を降ってはホバリングしていた。
騒ぎを聞き付けた弟妹たちが寄って集っては俺と同じように腕をパタパタと振り続けた。
結果としては良いんだが、こいつらも遊びと勘違いしてるようで、終わりが見えないやべぇ自主練になったということだけはよーく覚えている。
…その日、俺は筋肉痛になった。それでも三女の腕が止まることなんてなかった。
センス?なのか?わからないが聞き出そうにも俺自身が喋れないし、向こうも話せないから謎しか残らないぞ…。