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赤竜転生録  作者: 42神 零
ビラ砂漠編
34/37

32:さらばビラ砂漠!砂漠編決着の時…

 その場にいた全員が佇んでいた赤竜に視線を奪われ、対する赤竜も地を揺るがすほどの咆哮を上げると翼を広げては瀕死近くのアぺプに飛び乗った。


 傷だらけながらも赤竜の猛攻は止まらず、一方的な攻撃を受けるアぺプは抵抗するものの無意味に終わり、そのまま鷲掴みにされては宙を舞っては叩き落とし、土煙を巻き起こしながらアぺプを攻撃する。


 発生した風圧に怯むセバスチャンを始めとした冒険者・騎士団一行は少し呆然としたままその様子を見ては立ち尽くしていたものの…



「セバスさん!!今のうちです…国王を…!!」



 サトーの声に我を取り戻したセバスチャンは倒れているワジールを担いでは絨毯に搭乗し、急いでその場から離れては赤竜の戦いっぷりを見届ける。


 周囲に浮かぶ絨毯を余所に、赤竜は倒れたアぺプに向けて炎を纏いながら牙を剥き出しにしては胸元に突き立て、焼き削りながら噛みついた。


 最早悲鳴を上げる気力もないアぺプはまるで死を受け入れるように無抵抗のまま心臓を抉り取られては悲鳴のような咆哮を上げて瞬く間に力尽きてしまった。



『あり……が……』



 最後に何か伝えたかったようで口を動かしていたものの、直後に赤竜の咆哮が轟いては掻き消される。


 口周りを赤い血で濡らした赤竜は心臓を食べた影響なのか身震いを起こすと首を曲げては蹲り、全身からベリベリと何かが引き剥がされるような音を立てた。


 …脱皮である。何故このタイミングで脱皮を起こしたのかわからないが、古臭い皮を脱いだ赤竜は一回り大きくなると胸に着いた腕もつられて大きくなった。


 脱皮を終えた赤竜はその腕をあたかも確認するように見つめると納得したように喉を鳴らし、周囲に飛んでいる絨毯集団に目をやるとひと睨みしてから翼を広げて空中を舞う。


 風圧で吹き飛ばされそうになり、サトーを含む身構えていた冒険者と騎士団は怯んで態勢を崩し、整えて見てみれば赤竜の姿が見当たらなかった。


 どこだどこだと左右を見渡すと、赤竜はここから東の方角を目指して飛行を開始。その飛行速度は馬車より早い空飛ぶ絨毯でも追いつけない程の速度だった。



「赤竜…」



 何故東へ進み、何故人間を襲わないのか…未だ多くの謎を残したまま赤竜は飛び去ってしまった。


 残された人間たちは赤竜の姿が見えなくなるまでその背後を見送るように見届け、完全に見えなくなると生き残った者の救出・死体の回収を行った…。





 ・・・





 ・・





 ・





 まーたやっちまったぁー!!


 なんでだよ!もう騒ぎを起こさないって誓ったのに!!


 どうして行く先でハプニングが起きるんだよ!!しかもなんか知らんが腕も生えてるし!!


 ゆっくりさせてくれ…俺はただ自分の記憶探しと安寧の地を求めているだけだってのに…。


 くっそー…次こそ、次こそは平和に過ごすぞ!


 目的地なんてないが、テキトーに回れば安寧の地の一つや二つぐらいあるだろうよ…多分。


 悩んでいても仕方がない…こことあの平原より遠いどこかに行けば何とかなるだろ。そうと願いたいばかりだよこんちくしょうめ!!





 ・・・





 ・・





 ・





 赤竜が東へ進んでから丸一週間が経過。


 このアンビラス王国に晴れて平穏が訪れ、ここ最近それを祝う祭りが開催されていた。


 あの大決戦から一週間、アンビラス王国に変化が三つ見られた。


 一つ、貴重存在である赤竜の脱皮があるということで世に知れ渡ったこと。


 その抜け殻は宿主を失った今でも仄かに熱が残り、救世主という形で拝んでいるとかなんとか…。


 二つ、転生者サトーについて。


 彼はこの一件の後、何も一言を残さず、次の街へ向かったという話だ。


 何の目的でアンビラス王国を去ったのか不明だが、彼のことなので悪さはしないだろうと、ワジール王はそう言って頷いていたので大した問題ではなかった。


 そして三つ、第一王女ことシャンティアの我儘癖が治ったという事。


 …とはいっても未だ少し我儘な部分が見られるが前よりは断然よくなったという。


 今回の一件で何を見て何を学んだのか、その答えは彼女本人しか知らないだろう…だがどちらにせよ無理難題の依頼が無くなったことにホッとしているようだった。





 そんな少し変わったアンビラス王国付近に広がる砂漠中央に三人の影が…。



「リリーナ、遅いぞ!」


「ま、待ってくださいよ!姉さま!」



 先頭を歩くシャンティアにそれを追うリリーナ、そして護衛役として同行しているセバスチャンは微笑ましい光景を前に思わず涙を流し、懐からハンカチを取り出しては拭いた。


 もう彼女たちを悩ませることは…いや、まだまだあるだろう。


 今回の件は一つの経験として受け止め、将来一国を担う王女になれるようにとそっと思い出の中にしまい込んだ…。



「ふう…」



 そんなシャンティアだが大きな砂丘の上に立つと東の方向に向け、沈みゆく太陽を背に息を吸い込んで大声で叫んだ。



「赤竜やあぁー!!またいつか会おうぞぉー!!」



 広大な砂漠に彼女の大声が木霊した…。






















『………』



 そんな彼女らの背後には、金と銀のオッドアイをしたカラスが翼を広げ、天高く飛んで行ったことを知らずに…。





                              -ビラ砂漠・完-

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