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赤竜転生録  作者: 42神 零
ビラ砂漠編
20/37

18:我儘王女に振り回される俺。けどこいつにも何かしらの悩みがあるらしい

「おいドラゴン!あそこに見たことない木の実が実っとる木があるぞ!!気になるから降りるのじゃ!!」


『………』


「おいドラゴン!あの魔物はなんじゃ!!気になるから倒すのじゃ!!」


『………』


「おいドラゴン!妾は腹が減ったぞ!!何か食わせろ!!」


『少し、黙れ』



 捕食以外に殺意が湧いたのは初めてなのかもしれない。


 アンビラス王国に向かって早三時間経過したが、俺の頭の上にいる王女様はいつもこの調子で何かしらの寄り道を要求してくるんで仕方なーく地上に降りてはその我儘とやらに付き合っている。


 なに?無視すりゃいい話だって?


 いやなに、最初はそうやってたさ。流石に我儘すぎるからな。そしたらこいつ、大泣きしてな。


 その大泣きがこんな自体を引き起こす引き金となっちまったんだ。


 結論から言おう。こいつ、泣き声がめっちゃうるさい。


 どんぐらいの声量だと?んー、わかりやすく言えばジャンボジェット機のエンジン音あるだろ?それといい勝負になるぐらい大音量だ。


 それが耳元で騒いでみろ。…鼓膜破れるかと思ったぞ。


 で、流石にそんな経験二度としたくないので素直にこいつの我儘に付き合っているって訳だ。


 だがなぁ…なんというか我儘の度を超えているな。両親が一国を束ねる王だとしても一度ぐらい顔を拝んでやりたいぜ。


 …いやもしかしたら、王も王で忙しいのかもしれない。こいつがこの場所に逃げ出した理由なんて大抵「爺がうるさい」とかそういった具合だろう。


 なんか、あれだな。ドラゴンになってから初めて人間に同情したわ。あくまで想像の中でだがな。


 ちなみに、本来の飛行なら一時間ぐらいでたどり着くんだが…まぁ言わずもがな、我儘に付き合いまくってたらこんなに時間が経っちまった。


 どれほどこのシャンティアっつー王女様が我儘なのかよーくわかっただろ?…いや、まぁ分かりたくないよな。うん


 さて、そんな調子で休憩と我儘を挟みながら飛行し続けてる訳だが…俺は現在この地に住まうであろう巨大なサソリと対面している。


 一面ずーっと砂の海が続くんで、ここに住まう魔物はどいつもこいつも猛暑に耐え抜くよう進化したんだろう。


 目の前のサソリも例外じゃない。比較的涼しいであろう砂の中に潜り込むためにと、目を代償に強靭な脚力と鋏、そして鋼の体を手に入れたようだし。


 ん?俺?俺は別に問題は…まぁある。ずーっと飛行出来るわけじゃねぇし、腹も減りゃ喉も乾く。


 なので今回はブレスではなく、体を生かした肉弾戦で交戦することにしている。…王女様もいるって訳だし、変に巻き込むつもりもねぇしな。



「頑張れー!ドラゴンー!!」



 …サソリと対等する中、背後で何か半透明の結界を張って応援しているシャンティアの姿が見えた。


 あれは魔法か?と思ったんだがよく見ると、頭の飾りに結晶のようなものが見える。


 多分あれの影響によるものだろうな。…知らんけど。


 さてと、今日の昼食はサソリに決めた訳だが…こいつ絶対毒持ってるよな?


 ゲームや漫画、映画の世界でのサソリはよく毒を扱うイメージが強い。だとすりゃこいつも多分…。


 うん、尻尾と鋏の攻撃は気をつけた方がいいな。チーターじゃねぇから体力無限っつー事もねぇし…。



『ビャアアァァァーッ!!』



 おっと、早速こいつ…尻尾で突き刺してきやがったか。


 だが甘い。あらかじめ警戒していた俺は一度羽ばたいて側面に回り込むとそのまま口を開いてサソリを銜えてそのまま地面に叩きつけた。


 パキッと何かが割れるような音ともに、サソリから舞った緑色の血液が顔面にぶっかかるがそんなもん知ったこっちゃない。


 だがサソリも馬鹿じゃない。このまま放置するというわけでもなく、尻尾で反撃しようとジタバタと暴れまくっている。


 狙いは…俺の右目。


 俺は背筋が凍ったような感覚になると危険を感じとり、すぐさま口を開けてはサソリを放り投げた。


 吹っ飛んで行ったサソリは何度も何度も砂の大地に叩き付けられ、土煙を舞い上がらせながらバウンドしてようやく態勢を立て直し、鋏を広げては威嚇のポーズをとる。


 逃げる気は…ゼロか。なら仕方ない、こっちも荷物を背負っているんだ。恨むんじゃないぞ、サソリさんよ。





「ドラゴン!!ブレス!!ブレスじゃ!!」



 …互いに睨み合ってる(ように見える)中、背後からうるさいと感じるほど元気で明るい野次馬の声が聞こえた。


 この期に及んで何を言ってるんだ、この王女様は!俺はあんたを危険のないように、そんで俺に支障がないようにとブレスを封じてまで戦ってんだぞ!


 …つっても、聞く耳なんてないよなぁ。ここで泣き喚られても困るし、何より魔物が群がっちまう。


 あー、ちっくしょう。見た目は小さいが、本当に重い荷物を持っちまったぜ…。


 でもな、シャンティア。これだけは言うけどな、この世でなんでも自分の我儘は通るとは限らないんだぞ。


 例えばほら、今俺は喉の調子が悪いし。何しろ長時間飛行したばかりだから疲れたというかなんというか…





「…やらないのかの?」


『グルォアアアアァァァァ!!!(ちくしょう!!)』



 ハイハイ!!わかりました!!分かりましたよ!!やりゃいいんだろやりゃ!!


 あんな大音量で泣き喚かれたらもう身が持たない!!サソリにゃ悪いけどもう終わらせるぞこんちくしょうめが!!


 とりあえず…アンデルミナ平原の時みたいにならないように力加減を調整してだな…。呼吸を少し吸い込んでから一気に放出…!!



 _ゴウゥッ!!


『ビャ_』



 あ、サソリが炎に巻き込まれた。


 いくら暑さに耐える鋼鉄の体を持っていたとしても炎の熱に耐えれなかったようで…火だるまになるとヒビが入ってたところに熱が侵入し、気が付けばこんがりといい具合に焼き焦げたサソリの死体が見えた。


 毎度思うが俺のブレスってなんでこんなに威力あるんだよ。自分で言うのもなんだけどさ。


 だって機能訓練の時だって弟妹たちと比べて次元が違ったし、何より父ちゃんが目を丸くして見てたもんだから…もしかしたら異常なのかもしれないな。


 もしそうなら、扱い方を注意しないといけない。無意識にこんなの放ってみろ、間違いなく危険視されるがな。



「やったやった!!今日の飯はサソリの丸焼きじゃ!!」



 …まぁ、シャンティアはそうは思ってないみたいだ。何せ俺の荷物だし、丁寧に扱わないと何言われるのか分かったもんじゃない。


 それに…どっかの誰かさんのせいで日がもう沈んでる。残念だが、今日はここで野宿する他ないか。


 幸いここの近くに大きめの岩があるんで、そこでキャンプにしよう。見張りは…はぁ、しょうがない。俺がやることにする。





 ・・・





 ・・





 ・





「なぁ、お主はどこからやってきたのだ?」



 重ねた薪に俺の炎が燃え上がる中央で、仕留めたサソリの肉を美味そうに頬張るシャンティアはもごもごと口を動かしながら俺に聞いてきた。


 …それ、食えるのか。しかも躊躇いもなく食ってるし…ここの地域の人間はみんなこんなもんなのだろうか?


 あと喋るなら口の中飲み込んでから喋ろよ。それでも王女か、あんたは。



『………』


「無口なやつじゃのう…お主喋れるだろう?」


『…一応』



 まだ口の動きに慣れないからカタゴトだけどな。それにその質問は個人的に困っちまう、念のために言うが俺人間だし、何より記憶がない。


 あ、ちなみにだけど俺もサソリ食ってる。こんなに巨大だから幼女であるシャンティアにゃこの量を食べきれることなんてないからな。


 割合はに2:8。いわずもがな、俺の量は後者だが、前者の量でも十分に多い。


 味は…案外うまい。甘えびに似た味だな…見た目はあれだけど、そこだけ目を瞑れば日本に売り出してもいいレベルだ。


 ちなみに尻尾は食えない。シャンティア曰く「強力な毒があるので手を出さない方がいい」とのこと。


 …確かに毒に関してはいい思い出がない。生きるためにとはいえ、あのキノコ食って腹下したし、なんなら蛇の毒も辛かった。


 しっかし…王女にしちゃ博識だな。慣れてんのか分かんねぇが、サソリの前では特に驚きも恐怖もなかったし…どうも今回の脱走は初めてじゃないと見える。



『…シャンティア、と、言った、な?』


「ぬ?お主から話しかけるとはの。ついに妾のペットになる気が_」


『それはない』


「むぅ…悪くはしないのに何故じゃ」



 いい加減その件は諦めろ。無理なもんは無理だ。



『お前、逃亡、何回目?』


「んー…大体三十回はしとるの」


『………』


「な、なんじゃその目は!!別によかろうではないか!!」



 試しに質問してみると俺の予想の斜め上の結果に掛ける言葉が失った。


 あぁそうか。これが呆れっつー感情か、忘れていたよ。



『…一応、聞く。何故、逃亡を?』



 まぁ、そう聞いているが…おおよそ「王城がつまらない」とか「両親がうるさい」とかそんな理由だろうな。


 そうでなけりゃこんなところまで逃亡なんてするわけでもないだろ?



「………」



 …と、思ってたが。なんか思っていたのと違う反応を見せてきた。


 な、なんだ?なんか触れてはいけないこととかそんなものだったのか?しかもなんか泣きそうになってるし…ちょっとヤバいな。



『す、すまない』


「…お主ぐらいになら、話してもいいかもしれぬな」



 すぐに謝った俺だが、何を思ったのかシャンティアは一呼吸すると決意を固めたような表情で真っすぐ向き直って口を開いた。



「なぁ…マンティコア、というものを知っておるか?」

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