16:さらばアンデルミナ平原!
はぁ…はぁ…はぁ…。
も、森を燃やさないようにと意識して空へと思い切ってブレスを放ったのはいいが…なんだよあのブレスは…。
おかげであのでっかい蛇の魔物を焼き殺せたが…そんなことより自分のブレスが恐ろしくて恐怖しちゃってるよ…。
これ、あれだよね?人間たちにバレたとかそんなどころの話じゃねぇよな…。匂いで気付いていたが、人間三人いたわけだし…。
あー、くっそ…どーしようマジで。結構ここ過ごしやすくてよかったんだけどこのままここにいたら間違いなく襲われるよな。
…よし、逃げよう。ここで考え込んだり、やったことの後悔なんてしてりゃ埒が明かない。
やったもんはやっちまった。もう取り返しがつかないってんなら今度から注意すればいいって話だしな。はっはっは!
…はぁ、逃げるか。おまけに喉ガラガラだし、行く当てもないがテキトーに進めりゃ問題ないっしょ。
というわけで、じゃあな平原。名前は知らんかったが、割かし住みやすかったっぜ。
多分もう戻ってこないかもしれないが、もしここに来ることになりゃ魔物たちも平穏?な暮らしでもしてるだろうよ。
んじゃ、次の目的地へ。このまま西へGo!!
・・・
・・
・
同刻・アグザリオ王国。
赤竜は身の危険を感じ、平原を去る一方。アグザリオ王国ではさらに混乱を極めていた。
転生者シロウ=タナカの行方不明に加え、新種の赤竜の発見…そして数時間前に発生した、上空での大規模爆発。
依頼から帰ってきたジンとレイチェルはヒュドラの討伐を達成したと勝手に勘違いされ、構成員らから賞賛の美を味わう事となっているが…真実はそうというわけではない。
本当は赤竜がヒュドラを殺した。ただそれだけだ…と彼女は一言残すとシンとした空気の中、レイチェルは今回の出来事について受付嬢へ詳細に話した。
話の内容はどれもこれも俄かに信じがたいものだが、ここにいる全員はレイチェルが冗談を言うような人間ではないと理解しているし、何より話が真実なら焼けた空の減少も辻褄が合うということであっさり信用してしまった。
それからの展開は早かった。
約数百年ぶりの新種のドラゴンの発見に全ギルド機関はレイチェルの話を元に、性格や危険度を指定し、姿は何故か絶妙に絵が上手いジンの手書きを元に制作…。
それらをしてからアグザリオ王国の国王に許可を認定してもらい、完全な新種として確立され、名を付けられた。
その竜の名は赤竜ラグナロク。
終焉を意味するその言葉は、世界を焼き尽くす彼の名にふさわしいものだった。
後日、全世界にこの名が知れ渡り…各ギルドはこのドラゴンの生態調査を依頼として発注し、高額な報酬金につられた数多の冒険者らが請け負っているが…残念ながら達成できたものは未だにゼロ。進展などまるでない。
そもそも無理な話だ。赤竜ラグナロクは世界にたった一匹しかいない上に…噂では不定期ながら世界を転々と移動するらしい。
故に、最初はブレス攻撃が恐ろしいとされた恐怖のドラゴンだといわれていたが、同時に出会えた者は幸運の持ち主だとそういわれるようになった。
そして現在、レイチェルは主も赤竜もいなくなり、元に戻ったアンデルミナ平原を前にしてギュウっと拳を握りしめる。
それは何も出来なかった自分の無力さに悔やんでいるわけでもなく、かといって空を焦がした赤竜に対する怒りでもない。
_もっと知りたい。彼が何者なのか。
そんな純粋の少年が抱くような探求心でいっぱいになり、こんなところで立ち止まっている場合ではないと考えた彼女は一人の仲間を引き連れ、赤竜ラグナロクの真実を巡る旅に出る決意を固めた。
「レイチェルさん!」
「ジン、遅いぞ」
「はは…すみません」
背後には荷物を纏めたジンがやってきて少し頬を膨らますレイチェルは、静かに鼻で笑うと目の前に置かれた馬車に乗り込むと隣国である水の都・ユタカタへと向かう。
ジンもまとめた荷物を馬車に乗せると向き合う形で座り込むとなにか安心したような様子で静かに笑った。
赤竜という存在に恐れず、憧れを持った二人の旅が、今始まる…。
『グシャアァッ!!』
その頃、赤竜もといラグナロクは上空でくしゃみをしながらも安寧と自分の記憶を求め、ビラ砂漠へと向かうのであった。
-アンデルミナ平原編・完-
次回…新章・ビラ砂漠編に突入!




