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赤竜転生録  作者: 42神 零
アンデルミナ平原編
15/37

14:赤竜VS多頭竜

【時間は少し遡り…】





『…グル(迷った)』



 やっべぇ、どーしよう。


 異常事態だから解決しようと赴いたのはいいけど…こんな森の奥まで来たことないから普通に迷ったんだけど…。


 ファンタジーものでよくあるような迷いの森的な何かかなと思ったけどさ。試しに巨木に爪痕残してマーキングしてたんだけどグルグルと同じ場所に回っているわけではなさそうで…ただ単に道に迷っただけみたい。


 …って「だけみたい」、じゃねぇよ!!どーすんのこれ!!朝から何も食ってねぇんだからよ!!これ以上探索するつもりなんてねぇぞコラァ!!


 ちっくしょー…なんでこんなことを想定していなかったんだ俺は。普通に考えて見ず知らずの場所をうろついてみりゃそうなるだろうが。


 困ったもんだな…。なんか人間の匂いがするから下手に動くわけにもいかないし、かといって燃やし尽くして自然破壊は気持ちいいぜ!なんてサイコパスにもなるつもりもないし…。


 おまけにこんな狭さじゃ飛べるわけねぇしな…。え、これ詰んだ?ゲームオーバーってやつ?


 い、いやいや。まだ何かある、考えろ俺…よーく考え…ても無理なもんは無理だよなぁ。


 せめてもの開けた場所に行けたら飛べるんだが、そんな都合よく森のど真ん中にあるわけが…





『………』



 …あっちゃった。適当に歩いていたらあっちゃったよ、丁度良く開けた場所に。


 え、神様…もしかして俺の事見てたりしてない?大丈夫?罠とかそういうのじゃない…よな?


 しかし…あるのは古びた遺跡跡だけであって、他は特にこうといったもんがないな。何のための遺跡なんだよ、ここは。


 …ま、まぁなんだ?運も実力のうちってどっかのお偉いさんも言ってたわけだから別にいいよな?…本当にいいんだよね?ね?


 ………ええい、ままよ!!あったもんはもう仕方ねぇ!!このまま引きずっても仕方ないから空飛ぶぞオラァ!!





 ・・・





 ・・





 ・





 …といった具合に赤竜が二人の前に現れた、などとレイチェルもジンも知らず、魔物がいなくなった原因であろうヒュドラに先制攻撃を仕掛けた赤竜は口に炎を纏いながら低く威嚇の姿勢を見せた。


 対するヒュドラはなくなった首を再生能力で回復・完治すると突然降りてきた赤竜を睨むと咆哮を放ってはメンチを切るように睨みを効かせて赤竜を見つめる。



 _やんのかワレェ!?



 どことなくそんな風に聞こえるヒュドラは牙を剥きだしにすると多数の首の二本を伸ばして赤竜に襲い掛かり、攻撃を仕掛けた。


 対する赤竜は一回咆哮すると回避ではなく、そのまま突っ込んでいき、噛みつかれながらも距離を詰めると大きく放射線の炎を吐き出した。


 熱に対する耐性が比較的に薄いのか燃えたことに嫌気を刺したヒュドラはジタバタと大暴れするが、そのまま無事でいる複数の首が赤竜に巻き付くとそのまま湖の中へと引きずり込んでいった。



「あっ」



 両者の姿が見えなくなった直後、ジンは何を思ったのだろうか飛び出そうとしたが、その前にレイチェルが彼の首に腕を回して離さないように拘束した。


 …その際、背中にくっついていた柔らかい感覚がさらに強くなり、ジンの顔が真っ赤になったのは言うまでもない。


 そんな二人に対し、一方の湖からは大きく膨れ上がると水に濡れながらも二体の竜が顔を覗いては勢いよく飛び出した。


 最初に見えたのは口の中で燃え続ける赤竜と、それに絡みつくヒュドラの首たち、そしてその下は湖によって隠れて見えなかったが、一つの尻尾に大きな体、そして首の付け根から何本かに枝分かれしたヒュドラの胴体が見えた。


 赤竜の二倍の大きさを誇るヒュドラだが、火事場の馬鹿力なのだろうか。赤竜はそんなこと知るかと言わんばかりに翼を羽ばたかせて空中へ持ち上げるとそのまま地面に叩きつけて絡みついた首を無理矢理引き剥がした。


 何本か首が引き千切られる中、ヒュドラは首を上げて口を開き、シャーッと甲高い咆哮を上げると再び威嚇した。



(多数の首…。なるほど、その多い首を巧みに使って多種多様の生物を…)



 多くの首に対し、一つしかない体を持つヒュドラの真の姿を見てレイチェルは今まで感じた痕跡を振り返って一人納得した。


 一つの痕跡からイノシシのような、シカのような、人間のような匂いが同時に匂ったのは恐らく、いや確実に多くの首がそれぞれ別の肉を食らったとなると、その多種の謎の匂いにも納得がいく。


 そして目にとどまった個所が一つ…



「ジン、さっき君が言いかけた弱点とは…あそこか」


「はへっ?あ、はい…!」



 レイチェルの声で混乱していたジンは我に返り、視線の方向を向くと大きく頷いた。


 二人が見つめている部分は一点に集中、揃いに揃って二人ともヒュドラの胸…つまり心臓部分だった。


 だがそんなことわかったところで人間がそう易々と入り込んでいいような空間ではないことぐらい、二人は理解している。


 自然界にとって全や悪などない。常にやるかやられるか、そんな世界に常識なんて通用するはずもない。


 仮に両者の間に入り込んだとしたら…まぁ、結果などいうまでもないだろう。


 話が少し逸れたが…威嚇し合う両者だったが、それも長く続かず…第二ラウンドで先手を取ったのはヒュドラだった。


 赤竜を完全に敵と認識したのだろう、口を開いたと思えば半透明の毒液が発射されると周囲にあった木々を溶かし、次々となぎ倒していく。


 本能的に危険だと感じた赤竜は翼を広げると風圧を起こしながら大きく舞い上がって回避するとそのまま火球を放っては何度も何度も爆発を起こし、ヒュドラを攻撃する。


 とはいえ、まだまだ未成体の為か、何発か命中するもその大半は外してしまい、地面に生えていた草むらを燃やすだけに終わってしまった。


 一回の直撃で大きく怯みを見せるものの、被害のない首を動かしては口を開き、先程見せてきた毒液ブレスを吐き出して対空を行った。


 それが異なって多数の毒液を撒き散らすように噴出するため、分が悪いと感じた赤竜はブレス攻撃を一旦やめると飛行して回避を優先し、様々な位置から飛び交う毒液を避けながら反撃のブレスを吐いた。


 何度か直撃する中、数の暴力に押され気味の赤竜は当たらないように慎重に上空を飛んでいたが、ついには翼膜に直撃し、バランスを崩してはそのまま森の中へと墜落する。


 木々を薙ぎ倒し、地面を抉りながら不着陸した赤竜はふと立ち上がって態勢を整えるがすかさずヒュドラの首がうねりながら急接近して首と右翼、左前脚に尻尾と、あらゆる部分に噛みつくとそのまま持ち上げて、何度も地面に叩きつけた。



『ガッ…!!』



 流石のダメージなのだろう、赤竜は口から真っ赤な血を吐き出しては苦しそうに小さく唸るが、対するヒュドラはお構いなしと言わんばかりに攻撃を止めずに続ける。


 気が付けば辺り一面血塗れになっているが…赤竜は動こうとも反撃しようともせず、ただぼーっとされるがままに振り回された。


 身動きそのものが拘束されていたとしてもブレス攻撃を得意とする赤竜にとっては口が開いてればいくらでも攻撃なんて出来るはず。


 では何故反撃を試みないのか。


 ブレスの使い過ぎによる疲労か?


 毒化が進行しているからか?


 体がぼろぼろで力が出ないからか?


 答えは否、断じて否。赤竜はここ最近毒入りのキノコを口にしたことがあるため既に体内ではヒュドラの毒に耐えれる抗体が構成されているので問題ない。


 さらにブレスや体の傷など、幼少期の頃から厳しい父ドラゴンの訓練により鍛えられてきたため大した支障などなかった。


 それでは一体何が原因で反撃しないのか、その答えは至って単純だった。





 _ギュルルルルル…



 …どこからか何かの音が聞こえてきた。


 音の発信源は赤竜のから。攻撃を受けながらもどこか元気のないような様子が感じられ…る気がする。


 気がするのだが、これだけははっきり言える。赤竜は極度の空腹に襲われていたのだ。

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