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赤竜転生録  作者: 42神 零
アンデルミナ平原編
14/37

13:多頭竜

 二人と一頭が合間見える中、最初に動いたのはヒュドラの方だった。


 再生したての口を大きく開くとすかさず二人に襲い掛かるが、その行動を読んでいた二人は左右に展開する形で回避した。


 正面から見て左に回避したレイチェルは剣を構えたまま急接近するのに対して、右へと回避した弓使いのジンは矢を番っては引き絞り、放ってヒュドラの注意を引くことに専念する。


 最初接近してきたレイチェルに狙いを絞り攻撃を仕掛けようとしたが、飛んでくる矢が鬱陶しいと感じたのかターゲットをジンに変更し、頭部の向きを変えると口を開いて薙ぎ払う形で襲い掛かってきた。



「エアロ!」



 通常の回避では間に合わないと感じたジンは一旦立ち止まると地面に手を当て、手のひらに魔力を込めて放つと緑色の突風が巻き起こり、その風力を利用して宙へと舞う。


 その数秒後に大蛇の口が地面を抉りながら薙ぎ払った。


 もし回避が少し遅かったら…と、勝手に想像したジンは冷や汗を流す中、反対側に回ってきたレイチェルがうんと首を縦に振って合図するとジンは落下しながらも矢を三本番い、矢の先端に魔力を込め始めた。



「エンチャント・ボル」



 詠唱を終えると同時に矢の先端からバチバチと紫色の雷を纏い、ギリギリと弦を引き続けてタイミングを伺う。


 何かの魔力と危険信号を本能で察知したヒュドラは噛みついた後に首を上げて二度目の攻撃を仕掛けようと口を開いて宙で落下していくジンを飲み込もうと迫ってくる。



「当たれっ!!」



 十分に、尚且つ限界まで引き絞った弦を手放すと、番っていた三本の矢が僅かなズレを起こしながら発射された。


 一本目は口内に、二本目は大きく外れ、最後の三本目は右目に突き刺さり、ヒュドラは悲鳴のような咆哮を放ち、ジタバタと訳も分からずに大暴れし始めた。


 その隙にと反対側にいたレイチェルはある程度距離が縮んだところで停止し、代わりに空いた片腕を伸ばして手のひらを向けると熱の籠った魔力を集中させ、中ぐらいの大きさに膨れた直後に放出した。



「アグラ!!」



 溜まりに溜まった灼熱のボールは狙っていた個所に外れることなく一直線に飛んで行った。


 狙いの個所はただ一つ。それは…ジンが矢で命中させた右目部分。


 未だに雷を纏った矢がアグラに直撃すると熱と電気の影響で過負荷反応を起こしたためか、本来の効果以上の大爆発を起こしてヒュドラの頭を文字通り吹き飛ばした。


 断末魔のような咆哮を上げる間もなく、頭を失った胴体はバランスを崩すと糸が切れたようにレイチェルの前で倒れこんだ。


 既に死んだであろうヒュドラだが、最後のトドメを刺すまではと油断せず、念入りを込めて剣を構え、大きく振りかぶったまま頭部のない胴体へと突っ込んでいった。


 そんなレイチェルに対し、ジンはパワーブーストをレイチェルに与える他、なるべく高い位置からの強烈な一撃を与えようと足元にエアロを放って宙に浮かせた。



「うおおぉぉぉぉぉ!!」



 ジャンプ台のような役割として出現したエアロによって天高く舞ったレイチェルは渾身の一撃を与えるべく、重力に任せて落下しながら剣を下ろし、頭無きヒュドラにトドメをを刺そうと大声を放つ。


 当然だが、頭部を失ったヒュドラの胴体はピクリとも動かず…代わりにパキパキと何かが割れるような音を鳴らすだけで反撃するような様子が見られない。



 _貰った!



 そう思いながら剣を振り下ろし、そのまま残された胴体へと突っ込んで…





「ッ!?レイチェルさん!!ダメです!!」



 サーチで何か勘付いたのか地上にいたジンが叫び、彼女を助けようと手をかざして無詠唱だがエアロを放った。


 ジンの叫びに気付いたレイチェルは困惑しているようで飛んでくるエアロを受け止めようとこちらも無詠唱でエア・ガーディアンを発動させて周囲に緑のバリアを展開すると衝撃で吹き飛ばされ、その場から弾き出された。


 …その直後に、湖から頭部を失ったヒュドラと別に魚の背びれのような器官が備わっている別の首が飛び出し、先程レイチェルがいた個所に噛みついて襲ってきたのだ。


 吹っ飛ばされたレイチェルは地面と接触する前に受け身をして衝撃を緩和して態勢を整えると剣を構えたまま呆然と見つめる。



「二体目…!?」



 そこでやっとジンが警告していたことに気が付いた。


 この湖に潜んでいるのはヒュドラだけではなく、もう一体のヒュドラが共に潜んでいることに…。



「レイチェルさん!!」


「チッ…」



 奥でやってくるジンの前にさらにもう一本湖から飛び出すと鋭い牙を剥きだしにして襲い掛かり、レイチェルは苦虫を噛み潰したような表情をしながら二体目のヒュドラの攻撃をよけ続ける。


 だが時間を掛ければ掛ける度に首の数が増え続けるだけで埒が明かない。どうすることも出来ない二人はそれぞれ別の位置で戦い続け、何度も何度も剣で切断したり、矢で貫いたりの繰り返しをする。


 ただでさえ複数の首に苦戦するというのに、二人を追い詰めるように見せつけなのか、切断された個所から肉塊が膨らみ、徐々に元の頭の形に戻ると覆っていた被膜を脱ぎ捨てて再び襲い掛かってきた。



「このままだと…!!」


「怯むな!!何か手はあるはずだ!!」



 数の暴力ともいえる状況にジンは弱音を吐きだそうとしたものの、レイチェルは聞きたくないのか言葉を遮って叫んだ。


 もしかしたら、そんなのただの気休めなのかもしれない。だがそんなことぐらい自分で理解しているレイチェルは最後の最後まで諦めず、無駄と分かりながらも手を止める様子を見せなかった。


 そんな彼女を見たジンは少しの間だが呆然とすると心を入れ替え、戦いながら目を瞑ってサーチを続行する。


 気休めだとしても必ずそうとは限らない。なにか手はないかと湖から飛び出したヒュドラをスキャンしては弱点らしき部分を探り始めた。


 その分、回避能力と攻撃の手数がダウンするが、そこはレイチェルが前に飛び出してカバーする。



(彼は死なせない…!!私の視界に映る仲間全てを守ると、そう決めたのだからな…!!)



 ほぼ二倍の数でたった一人のレイチェルに襲い掛かるが、彼女はアグ系の魔法とバフ魔法、そしてガーディアンを上手く駆使して立ち回り、頭を切断し続けた。


 何度も何度も、そう何度も繰り返しが続く中…ジンは弱点らしき部分を見破ったのかハッと我に返り、大きく口を開いた。



「レイチェルさん!!見つけました!!弱点は___」





 だが彼の言葉は途切れ、レイチェルには届かなかった。


 何故なら何か巨大な咆哮が轟き、大気を震わせると大きな火球が飛び出してはヒュドラに直撃し、十数本すべての首を焼き焦がしたのだ。


 目の前にいたレイチェルは吹き飛び、少し距離があったジンは爆風に身を屈み、ヒュドラは何があったのか理解できずに倒れこむ。



『グルオオアアァァァァァァァァ!!!』



 どこか遠くから聞こえる化け物のような咆哮。


 隠れていた小鳥たちは一斉に飛び出し、残されたジンはなんだなんだとすかさずサーチを再展開させ、状況を確認しようと慌ただしく辺りを見渡した。


 …だがレイチェルはこの大きな咆哮に聞き覚えがあるようで、どこか安心したような表情をみせると反対側にいたジンに向き直ると呼吸を整えて大きな声でこう叫んだ。



「ジン!!奴が来る!!ここを離れるぞ!!」


「え!?どういうことですか!?」



 サーチの最中であるジンは突然叫び出したレイチェルに驚き、訳を聞こうと疑問に思っていたが、冗談を言わないレイチェルを信じているのか素直にヒュドラから距離を取った。


 レイチェルも同じ方向に撤退を開始し、ジンと合流すると女の子を隠していた草むらの中に入るとそっと顔を覗かせて様子を伺う。



「あ、あの…レイチェルさん…」



 …ちなみにだが、ジンの背中には…何がとは言わないが、レイチェルにある二つの実が当たって混乱してしまい、理由を聞くどころの騒ぎではなかった。


 そんなジンに対してレイチェルはじっと無言で首のなくなったヒュドラを見つめ続けるだけで動こうとも喋ろうともしない。


 何かの到着を待っているように見えるが…程なくして何故急にこんなことをしているのか、その理由が明かされた。



「…やはりお前だったか…」



 突然突風が吹き荒れたと思うと巨大な影が地面に映し出されると思いきや、赤い鱗と黒い甲殻を持つ一頭のワイバーンドラゴンが降り立ち、首の上を失ったヒュドラを見るなり身を低くして睨み付けるように二人の前に立ちふさがる。


 その赤いドラゴンはかの新種として騒がれた、例の赤竜だった…。

今回登場した魔法の紹介





・ボル

エンチャントとして登場したが、発動すると小規模な雷雲を展開させ、雷を落とす電撃属性魔法。直撃すると麻痺する可能性があるため扱いには注意。



・エア

エンチャントとして登場。疾風属性系の魔法で対象につむじ風を起こす疾風属性魔法。空気であればどこへでも放つことが可能なのでその使用汎用性は極めて高いが、人が直撃すると切り傷が簡単に出来てしまうため扱いには注意が必要。



・エアロ

疾風属性系の魔法で上級に当たる疾風属性魔法。発動すると何も無いところから風力が発生し、対象を切り刻む他、自身に付与して一定だか空を舞うという使い方も出来る。

また、風はあらゆるものを削ぐ力があるため甲殻など硬い体を持つ魔物に対して有効的である。

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