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赤竜転生録  作者: 42神 零
アンデルミナ平原編
13/37

12:レイチェルとジン

「………はぁ」



 田中が大蛇に襲われてる一方、ある二人パーティがアンデルミナ平原の森林地帯を歩いており、その先頭を歩く女性冒険者は大きくため息を着く。


 今回の依頼が厄介事なのだろう、他の冒険者もどこか気が重いようなそんな雰囲気を醸し出している中、彼女の隣で歩いていた弓の冒険者は渡された依頼書を開いて再確認した。


 そこにはアンデルミナ平原の主の討伐、及びシロウ=タナカの捕縛と書かれたもので、依頼内容が書かれていたものだった。



「困ったもんですね…。主だけでも大変だって言うのに、シロウ=タナカさんを捕縛するだなんて…」



 弓の冒険者…名をジンは苦笑いしながら指をさして苦笑いを零し、少しでも女性冒険者を元気付けようと声を掛けるが、返って来たのはもう一回のため息のみ。


 まぁ無理もないだろう。ただでさえ問題児である田中を、それもチート能力使いを捕縛して連れ帰るなど、一般冒険者からしたら難関を極めるだろう。


 だが彼による被害は無視出来ない。ギルドにある物を破壊した挙句、無許可で自分勝手に依頼を請け負ったのだからそれなりの罰を受けてもらう他ない。


 では何故、この二人が任命されたのか。それは田中が同じ人間であるから説得上手であるジンとその護衛に当たるようにと女性冒険者ことレイチェルが同行し、請け負う事となった。


 …余談だが、山田はあの後英雄扱いされたらしい。一般冒険者からは「怖いもの知らず」や「よく言ってくれた」と評価されたとか何とか…。



「聞いた話だと相当やばい奴みたいですよ。他の取り巻き…失礼、連中もまともじゃないとか何とか…」


「…あまり私語を挟むな、ジン。私はお喋りが苦手だ」


「あ、すみません…」



 ジンはこのしんとした空気を何とかしたい一心で話題を作るも、それも尽く注意されてしまい、それ以降口が開かなくなった。


 ここだけの話だが…レイチェルは先程言った通り喋るのが苦手…悪くいえばコミュ障である。


 世間からは勝手ながらその無口と凛とした容姿が噛み合って、どこかファンクラブが出来るほどの人物像ではあるが、本人は特に男性と対して話すのが苦手である。


 対するジンという人物は二年前、ファラリス討伐依頼の時に同行して以来、一度も一目惚れしたレイチェルと会ってないためか、どこか嬉しそうな様子で居た。


 そんな心情を持つジンを無視してレイチェルはただひたすらに前へと進む。最近だと例の赤いワイバーンも発見されているためか、どこかいつもより空気がピリピリとしている…。


 魔物がいないとはいえ絶対に出てこないと限った話ではないため油断はしない。いつでも戦闘態勢に入れるようにと背中に担いだ剣の柄を握りしめ、草木を分けて進み続ける…。



 _ガサガサ


「!!」



 その時、目の前にあった草むらが不自然に揺れ始め、二人はいち早く反応して身構える。


 最初は魔物かなんかじゃないのかと、ジンが男前を見せようと弓を構えては矢を番い始めるが、その前にレイチェルが前に出ると剣を抜き出して構えたままゆっくりと前進する。


 緊迫した空気の中、そしてジンが固唾を飲んで迫った時…揺れた草むらの中から飛び出したのは魔物でも動物でもない。ただの一人の女の子だった。



「え?」



 予想外の展開に間の抜けたような声を上げるジン。対するレイチェルは出てきた女を眺めると今回の依頼対象の一つであるシロウ=タナカとつるんでいる人物の一人だと気が付き、肩を掴むと真っすぐな視線で問い詰めた。



「…シロウ=タナカはどこだ?」



 威圧のこもった声に女は「ひっ」と小さく悲鳴を上げ、びくっと肩を上げた。どうやらレイチェルは転生者の田中に何かしらの恨みがある…ように見えるが、先程も言った通り、彼女は人との会話が苦手なので相手からしたらそういう風に聞こえてしまう。


 ジンも後ろで「そこまでやらなくても…」と言いたげそうに苦笑いをするが、ただ単にレイチェルがコミュ症だということに気付かない。


 …ちなみにだが、彼女の眼付きは悪い。普通に見つめているだけだというのに睨まれているようにしか見えないんだとか…。



「もう一度問う。シロウ=タナカはどこだ?」



 ぐいっと顔を近づけてさらに問い詰める(ように見えてしまう)レイチェル。そんな彼女にまともな回答など出来るはずもなく、女の子はついに気絶して糸が切れたように動かなくなってしまった。



「…む?」



 涙目になりながら動かなくなった女の子が不審に思ったのか、首を傾げるレイチェルに慌てているジン。


 何度も何度も揺らしても起きないため、ここで初めて相手が気絶したことに気付いたレイチェルは無言のままジンに向き直るとお姫様抱っこしながら手渡してきた。



「おわっ!?」



 ジンもレイチェルが何をしたいのかいまいち理解できず、されるがままに女の子を受け止めると視線を正面に向けた。


 その先には、何を思ったのか剣の柄を強く握ったレイチェルの姿が…。



「あ、あの…レイチェルさん?」



 状況が読み込めないジンは何をそんなに怒っているのか分からず、鎮めようと怒りの理由を聞き出そうとしたものの、その前にとレイチェルが口を開いた。



「…おのれ主め。か弱い少女も関係なしというわけか…?」


(えええぇぇぇ!?)



 理由を聞き出す前にレイチェルは、女の子が気絶した原因が主にあると決めつけ、戸惑っているジンを無視して前へと突き進んだ。


 当然そんなわけがないということぐらい理解しているジンは背後で「あなたのせいでしょ!」と心の中で突っ込みを入れたが、置いてかれそうになると我に返り、女の子を抱えたまま後を追う形で同じように先へと進む…。





 ・・・





 ・・





 ・





 そうして進み続けた二人は、森林地帯の奥に存在する湖・ルル湖へとたどり着く。


 未だに気絶している女の子を比較的安全な場所に置いてから結界を張り巡らせ、ここのどこかにいる主の痕跡探しを各々開始した。


 特に気になる点は何かが引きずったような跡にへし折られた木々、そして何か巨大なものが抉ったような土の三か所。



「ジン、読めるか?」


「は、はい。やってみます」



 そのうちの一つである抉れた大地の前に立つと、ジンはしゃがみ込んで地面に手を添えるように置くと一呼吸してから静かに目を瞑った。



「サーチ」



 サーチと何かの魔法なのだろう、そう呟くように詠唱した直後、ジンを中心にして半透明な波が展開して大きく広がっていった。


 沢山並ぶ木々に心地よく流れる風…だが魔物も動物もいない現状だと不気味だと感じられるほどの静寂がこの空間を支配する。


 そんな中、ジンは目を瞑ったまま動かず、喋らず、そして精神を乱さず…一点に集中した。


 レイチェルは自慢の剣を抜刀し、周囲を見渡しながら安全を確保する。


 しつこいが何度も言う。彼らは今自然そのものの中にいる。つまり何が起きてもおかしくないのだ。


 例え状況がここの主が目覚め、ほとんどの魔物や動物がどこかへ逃げ去っていったとしても完全に安全などと言い切れない。


 故に警戒心を解かない。当たり前のように聞こえるが、その当たり前がなければ命などいくらあっても足りないだろう…少なからずこの世界の自然界とはそういうものなのだ。



「…見つけました。ここから南、距離は…三メートル!?」



 レイチェルが護衛に回っている時、ジンは目を瞑りながら焦ったような表情を見せる。


 姿かたちは見えなくとも、どうやら標的である主はここからそう遠くない…どころか、目と鼻の先の距離にいるのだと述べる。


 その報告を聞いたレイチェルは瞬時にして感覚を研ぎ澄まし、ジン程ではないが感知能力と自分の勘で相手の位置を予測し、すぐに行動した。


 レイチェルの思考はただ一つ。距離が近いにも関わらず姿を見せないということは…相手は湖から奇襲を仕掛けてくるということ。



「ガーディアン!!」



 そこからの行動は早かった。全身に半透明なボール型のシールドを展開させると戸惑っているジンの前に立ちはだかり、剣を構えて守りの体勢に入った。


 レイチェルが展開したシールド内に入ったジンは困惑を隠せず、変な汗をかいているその瞬間、奴は湖から顔を出して二人に襲いかかった。


 上顎に付いた細長い牙が、レイチェルの柔らかい体に食い込もうと襲いかかってくるが、展開されたシールドによって阻まれ、ガキィンと金属音に似たような音が響くだけに終わる。


 そこへレイチェルはすかさず剣の一撃をお見舞いした。逆手に持っていた剣を水平に振り抜くと大きく口を開いた頭部に直撃し、血を吐き出しながら頭をうならせ、悲鳴に似た鳴き声を発して身構えた。



「こいつがここの主…ヒュドラか」



 レイチェルは構えを解かず鋭い眼光を放ちながらも目の前に佇む大蛇・ヒュドラを見つめながら、一人呟く。


 ジンもようやく体勢を立て直したのか「ありがとうございます」と一言声を掛けてからレイチェルの隣に立ち、同じように身構えた。



「…踏ん張れ、ジン。ここから本番だ」


「は、はい…!」



 湖から出現した大蛇を前に、レイチェルは剣を、ジンは弓を構え、戦闘態勢に入った。


 大蛇も先程までやってきた餌とは異なると判断したのか、ペキペキと何かが割れるような音を鳴らしながら傷口を塞ぎ、完治すると大きな咆哮を上げて臨戦態勢になる。





 ・・・





 ・・





 ・





 その頃、赤竜はと言うと…。



『…グル(迷った)』



 そこまで奥に行かない森の中腹で迷子となっている。

今回出てきた魔法の紹介





・サーチ

探る、という意味を持つ探索補助系の魔法。冒険者たちが覚える基礎魔法のひとつで、魔物の痕跡を前で発動し、特徴、位置を特定することが出来る。極めると敵の弱点まで読めるとか…。魔力消費量に応じて索敵できる距離が広がる。



・ガーディアン

物理攻撃に耐性がある半透明の結界を対象者の周囲に展開する防御魔法。張っている最中は軽減出来るものの、耐久力があるため限界値を超えると剥がされてしまう。

また、各属性にエンチャントすればその属性に対応した耐性も取れるため戦闘では重宝する魔法である。魔力消費量に応じて結界の耐久値が上がる。

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