01:突然だけど…俺、爆誕!!
吾輩は猫…いや、ドラゴンである。
…突然何言ってんだこいつ、って思うかもしれないが大丈夫だ。言ってる自分もよくわかってないのが現状だからな。
実を言うと、俺は生まれてまだ半日しか経っていない。
いやあのね、これ本当なんだよ。信じられないとかいろいろ言いたい事はよーくわかるよ、うん。
だって俺ドラゴンですもん!!
おかしいよこんなの!?え、なんで!?なんでなん!?おかしくない!?
回想もクソもなく、気が付いたら卵ン中だったんだぜ!?なんの前触れもなく、いきなりだぞ!?
おまけに記憶もない…。覚えてるのは最低限の常識と元々は人間だったという事、ただそれだけ。
え、なにこれ?もしかしてよくある転生ってやつですか?だとしたらさ、チートとかそういうのってないんですか?
…だ、だめだ…。チートを貰った記憶もなければ実感もない…。これ絶対チートないやつだ。
どーすんのこれ。人間だった頃の記憶がない奴がドラゴンになったとしてもこの先、生きていけるのかどうか不安しかないぞ…。
つか、そもそもなんでドラゴンなんだ?おぎゃあなバブちゃんからスタートするなら普通人間とかそっからでしょうが。
そっからイケメソに育ってさ、魔法学校やらなんやら行って充実してよぉ。からのハーレムとかいうムフフでデュフフな展開が王道ってもんだろ?
なんでドラゴン?なぁおい、神さま。聞こえてんのかどうか知らねぇが、そこんところどーなんですか?答えられんなら答えてくれよ。
ドラゴンのいいところなんて…えっと………仕事をしなくていいぐらいだけあって他は特に思いつかねぇぞ。
これが本当に転生の類なら、どーせ弱肉強食とかそういったもんなんだろ?
…まぁ、今は父と母がいるもんだから安泰っちゃ安泰だが。
-バサッ
っと、噂にすればなんとやら…餌を取ってきた母ドラゴンの羽音が聞こえてきたな。
言い忘れたんだが、今俺が…いや、俺たちがいる場所は巨大な樹木の上で、そこに巣を立てて暮らしている。
兄弟は七人…いや、七匹?俺はその長男にあたるみたいで他のちびっ子と比べて少し大きめだ。
んで、俺の新母はと言うと…
『グルルルルル…』
はい、この方が新母ドラゴンです。
深紅の鱗に黒ずんだ鱗、二本の鹿のような角に巨大な翼。
見た目はザ・ドラゴン。ファンタジーあるあるのワイバーン種である。
ちなみに威嚇しているように見えるが、実際は愛情をたっぷり注いでもらってます。スケールと巨大さが問題ってだけでそれを除けばどこにでもいる母ちゃんと同じだ。
さて、今回の食事は…グリフォンだ。母ちゃんドラゴン、一体そのでっかい獅子鷲、どうやって取ってきたの?
だって爪痕とか噛み痕とか付いているし、挙句の果てには頭部が真っ黒焦げだよ。
…あ、いやいいです。なんか聞いたら危ない気がしてきたんで…。
でもまぁ、ビックリしたもんだよ。だって訳が分からないまま生まれてきたわけだけどさ、卵の中から頑張って出てきたと思えば目の前に母ちゃんドラゴンと目が合って…
『ぴぎゃああああぁぁぁぁぁ!!!(うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!)』
『グルグルグルグル…』
…よくよく考えたらあの時の喉鳴らしって喜び表現だったのか。
パニックであんまり周りを見れなかったが、尻尾振ってたし…ドラゴンって尻尾振ることあるんだな。
『ガゥガゥ!』
『ガアァッ!』
っと、いけね。
一人勝手に思い出に浸かっていたら、俺の可愛い弟妹たちが差し置いて飯を食い始めた。
理由なんて今はどうでもいいや。今先決するべきことは生きること。
今は寝る、食う…それの繰り返ししか出来ねぇが、成長してから考えればいい。
飯だメシ、兄弟の面倒見ると疲れちったから飯だ。それじゃグリフォンさん、頂きます…。
・・・
・・
・
余談だが、父ドラゴンはただでさえでかい母ドラゴンの一回り巨大なドラゴンだった。
歴戦で、尚且つ生き残り続けた証なのだろう、黒ずんだ鱗にボロボロの翼、そして片目に切り傷の入った強面の顔面。
でも母ドラゴン同様、愛情たっぷり注いでくれます。舌でべろべろ舐めてくるし…。
あとグリフォンは美味しかった。半分は鶏肉、半分は…獅子肉?の味がしてね、今しばらくはグリフォンが好物になりそう。