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【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……  作者: ひらえす
第6章 転生隠者の望む暮らし

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4.星と月と引力と内緒の話


 星が綺麗だ。私が住み着いたこの山はだいぶ標高が高く、この時期の夜空は空気が冴え渡っている所為か、本当に美しい。二つの月はそれぞれ昇る所と沈む所で、今夜は星灯りがメインと言って良いだろう。

(そう言えば、魔導国家で働いていて魔力斑が出来た人って、月が重なる夜は特に酷いとか言ってた人が多かった、みたいなこと言ってたよね…もしかして、月の引力とかが関係してたりして)

「インリョクが何か知りませんけど、マナは2つの月が真上にあるとより沢山空に昇りますよ?」

「私、喋ってた?」

「はい」

 カルラは私の肩に座って微笑んだ。

「寒くない?」

「まったく」

 ここは、私の家の真上だ。辺りのチェックと浮遊術の練習がてら、あたりの木の丁度天辺まで登ってきた。地上から15メートルほどになるだろう。視界を遮るものは何もない。空には満天の星が光っている。


 闇の精霊王の話は、衝撃といえばそうだったが、興味深いものだった。そして、なんとなく、アイテムボックスの中の本に書いてあることと現在の常識が違う理由がはっきりした気がする。

「隠者よ、私の言うことが全て真実かは判らぬ。特に最初と次の滅びに関しては。どう見るかで答えなど簡単に変わってくるものだ。私に受け継がれた記憶は、その時の精霊王たちの目で見たものでしかないからな」

 闇の精霊王は、もっと話が聞きたければ、ほかの精霊王にも聞いてみると良いかもしれないと言って、帰り際に精霊殻と宝石の原石、楕円形の琥珀を出すと『話と文書に夢中で、これを渡し忘れるところだった』と苦笑して聖地に帰って行った。


「本当に、大それたことというか……とんでもない事に首を突っ込んだね、私」

「主様……後悔しているのですか?」

「ううん。それは違うよ。もし、幻映のことを無視していたら、精霊王達がどうなっていたか判らないし……助けられて良かったな、と思ってる。完全に助けられたわけでもないけどね」

 結果的に、今後の聖地の異変を止められた訳ではなく、対処療法を作り出しただけという状態なので、助けられたかと言えるかどうかはわからない。それでも精霊王達は私にお礼を言ってくれて、今でもこうして訪ねてくれる。お礼なら充分頂いたと言ったのだが、ならばこれは手土産だと言って持って来てくれるし、何よりこうして私に知識をくれる。その事に改めて先程お礼を言ったのだが、闇の精霊王は微笑して「礼はいらない。また我らがここを訪れるのを許して欲しい」と言っただけだった。

「今でも時々異変は起こるらしいんだよね。その時は根っこじゃなくて、今度はその土の周りにフィルターをかけて、周りの木に成長促進をかけることにしたみたいだけど…10日に1回くらいのペースで出てくるみたいだから……」

 やっぱり根本的な問題は解決していないのだ。

「だからこそ、この文書がうまく書けたら、なんとかならないかと思ってるんだけどね。気持ちばっかり焦っちゃって、駄目だね」

 あの文書に、魔法の変遷に関する話を上手く入れられればもっと説得力が増すだろうとは思う。その一方で、それが悪影響を及ぼさないかも気になってしまう。

「だからってそういう誘導をしちゃうのも…とは言え、最終的にギルマス達のチェックも入るし、どうなるかは書いてみないとわからないのは、変わらないか……」

「主様なら魔の森に行って成長促進の魔法をバーンとかけちゃうとかも出来ますよね?」

「うーん…それも考えなくは無いけど……それ、風の精霊王と火の精霊王も言ってたよね…」

 案外と積極的な意見を出した精霊王たちのことを思い出した。それはそれで対処療法でしかないし、魔族の皆さんや周辺で活動している人が多分物凄くビックリするだろうから、個人的には最終手段にしたいと思った。

「カルラ、イリス、ランティス、私ね……」

 隠れているつもりだったらしいイリスとランティスが、ぴゃっと声を出してフードから顔を出した。

「ふふ…あのね、私……」

 ヒソヒソと話した事に、みんなの顔が笑顔になった。良かった。


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