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【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……  作者: ひらえす
第4章 この手の届くところ

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4.映っていたもの

「……さて」

 そのまま転がしておいても良かったのだが、一応ハンカチの上に猪から出た結晶魔石を置いて、今度は『森の幻映』の方に向き直る。

「主様、どうなさったんですか?」

「あのね、こっちは『幻映』らしいのよ」

 試しに念話を交えて伝えてみると、正確にイメージが伝わったらしい。精霊達はわらわらと『幻映』に群がって来た。

「どんなふうに違うの?」

「トゲトゲなところ?」

「それはちがうと思いますの」

「だって、こっちよりトゲトゲでちくちくだよ」

 やっぱりトゲトゲよね、というところは心から同意する。

「その違いを今から鑑定で見ようと思うの。結界は張るけど、危ないかもしれないから下がっててね」

 はーい!と口々に返事をして、精霊達は私の背中の後ろから覗き込んでいる。

 詳細鑑定を発動し『幻映』の文字の下……イメージで言うと、その言葉の意味の土台部分と言うか……そこを見ると、不意に変化があった。

「――映像……?」

 幻映の周りにはガラスのドームのような結界を張ってあったのだが、その曲面に何かが映っている。石がプロジェクターのように何かの映像を投影している……。

 まじまじと眺めてそこまで分かった時、不意に映像の中に人の顔のようなものがある気がした。曲面に投影されているせいか、映像は妙にねじ曲がっている。

「やっぱり何か映ってたね」

「主様……気をつけて下さいね」

 精霊たちに頷いてから近づいて映像を鑑定してみると、どうやらこちらを攻撃する意図はないようだ。そっと幻映にかけていた結界を解いてみる。すると、幻映から投射されていた映像が、1メートルほど離れたところで像を結んだ。そこには、150センチほどの人影が立っている。頭がちょっと小さい気がするので、人間だとしたら縮小された映像なのかもしれない。

「……誰?」

「「風の精霊王様です!」」

 私が呟くのと、水と風の精霊ペアのイシュとハルが叫ぶのがほぼ同時だった。

「精霊王――この人が……?」

 精霊王だと言われたその人は、長く伸ばした薄い空色の髪と切れ長の瞳が印象的な美しい顔立ちの人だった。男性のようにも女性のようにも見える。何やら口を動かしているが、言葉は上手く聞こえない。そして、暫くすると溶けるようにというか、風にさらわれるようにというか、その身体が崩れていく。時間にして10秒ほどだろうか。あまり良いイメージの映像では無い……そんな気がする。

 映像の鑑定用の紋をじっと眺める。とても細かくて複雑な模様が波打っている……ように見える。

(どうして波打って……これは、魔力……?)

 ふと思いついたというか、思い出した。自分以外の魔力に触れると、感覚共有の術と似たような状況になる。メリーベルさんが妖精ルールーに名付けをした時に、サブマスとエリーナさんに起きた状況がそれだ。その時はどうやら視覚のみだったようだ。

(触ってみる……?)

 いや……と自分の冷静な部分が、高確率で「これは面倒ごとだ」と告げている。精霊王だと言われたその人は、少なくともなんとも無い状態では無いし、その表情は確実に何かを訴えている。

(……何が出来るとも解らないし……ああでも……)

 そっと指を伸ばす。

「主様!」

「……念話じゃダメね」

 最後のあがきで念話を試してみたが、音声は聞こえなかった。紋様は、水面に水を落としたように揺らいでいる。いや、砂を撒いた板の上にスピーカーを置いたようにというか。

 映像は、何度も何度も繰り返されている。精霊王の姿が、崩れては最初に戻り、崩れては戻る。よくよく見れば、口を開く前にキュッと口を引き結ぶような仕草が一瞬見える気がした。

(セカイさんと同じ癖……かな?)

 あと数センチのところで止めていた指を、伸ばした。

「主様!」

「攻撃魔法は仕込まれてないはずだから……」

 後ろの精霊達に笑って見せてから、私は深呼吸をして、ゆっくりと波打つ紋様に触れた。

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