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【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……  作者: ひらえす
第3章 心が繋がる時

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7.妖精と精霊

 ふと部屋のドアが開いたのでそちらを見ると、サブマスが入って来た。サブマスはエリーナさんの隣に座る。私は目礼をして先生の話に耳を澄ませた。

「こうして、人間は生活魔法の他に、属性に特化した魔法を光、闇、火、水、風、土、空間など、系統立てて扱うようになったと言われています。複数系統を扱える人があまり居なかったことも、このやり方を促進させる一因となったようです」

(うーん……)

 私の中で違和感が溢れ出して来て止まらなくなった。アイテムボックスのなかの書籍達と、この話。噛み合うようで微妙に噛み合わない。と言うより、書籍に書かれている内容も、先生の話とはズレているものが多い気がする。

(レコーダー欲しい……あ、蓄音術とか作れば良いのか……)

 今はとにかく先生の話をメモしていく。

「魔法の歴史は、この世界の歴史と言っても過言ではありません。おそらく、種族の歴史にも密接に関わってくることでしょう」

 先生はそこまで言うと、メリーベルさんをじっと見つめる。

「魔法は、使い方によっては他人を傷つけることも出来るものです。人によって力の量に差があるだけに、悪意を持って使えば、力の弱い人を容易に傷つける事ができる。戦争に使われることもあります。あなた方貴族は、魔力が強い人が生まれやすいと言われています。だから、余計にこの力について学ばなければなりません」

 メリーベルさんはゆっくりと頷いていた。歳のわりに聡明な女の子だと思う。そして。魔法の適性もあるだろう。だからこそ、こんなに幼いうちから学んでいるのだ。

「メリーベルさんは、魔法の何を学んでみたいですか?」

 先生の問いに、メリーベルさんはちょっとモジモジとしてから、小さく声を出した。

「あの……精霊魔法を見てみたいです」

 ぴくっとカルラが反応した。

「精霊魔法ですか。私も学園と本で学んだだけですが……お話しかできませんが、よろしいですかな?」

「はい!」

ツインテールに結われた髪が跳ねた。


「精霊魔法は、文字通り精霊を使役して魔法を発動させる方法です。使い方には2通りあると言われています。1つは、魔獣を捕獲、契約するようにして隷属させる方法。2つ目は、精霊を都度召喚して魔法の使用をお願いする方法です。この方法は、一説によると契約したものの、精霊を側にとどまらせるのは常に魔力を消費するため、必要な時にのみ顕現してもらう為だったとも言われますが……現在王宮にいる精霊魔法の使い手は、2つ目の方法を使っていると言われています」

(……うん?)

 やっぱり、色々違う。

「元々は、エルフ族がこの魔法に長けていると言いますね。精霊は自然の多いところを好み、あまり姿を現しませんが、自分の気に入った者には姿を現し、力を貸したり、条件が合えば契約もするそうですが……エルフ族でもそこまで行き着くのは稀だと言う話も漏れ聞こえて来ます。

 もう一つ、精霊は妖精が進化した物だと言う説がありまして……妖精がよく出現する場所は、精霊も多く存在するのでは無いかと言われていますね」

(カルラ……光虫って、妖精?)

(うーん……)

 カルラは、うーんうーんと唸っていたが、やがてぽんと手を叩いて言った。

(主様に捕獲されて魔力の供給を受けるようになって、やれる事がぐんと増えました。その時に羽の紋様が変化したらしいので、もしかしたらそれが『妖精』になったということかもしれません!)

(なるほどね。羽の紋様…。あとで見せてね)

(はい!)

(属性によって、模様違うよ)

(私達のも見てみて!ですの!)

 他の子達の念話に、是非よく見せてねとお願いすると、はーい!と元気な返事が返って来た。当たり前のように一緒にいてくれる彼等に、改めて感謝と愛情を感じていると、ふと先程の先生の思い出す。

『気に入った相手には姿を現す』

 もしかしたら、メリーベルさんはどこかで他の妖精なり精霊なりをみた事があるのではないだろうか。そして……

(悩んでいるのかな……?)

 だからこそ、8歳なのにこんな難しい内容を学んでいるのだろうか。先ほどチラリと聞いたところによると、この勉強のレベル自体は、いつもと同程度であり、メリーベルさんの希望でもあったのだと言う。

「先生、他に精霊や妖精に関する魔法を使える方は、サントリアナにはいらっしゃらないのですか?」

 メリーベルさんの問いに、先生は頷いた。

「サントリアナにはその方1人と聞いています。他の方は、魔導国に移住してそちらで研究をなさっているらしいですね」

「魔導国には、精霊魔法を使える方が多いのでしょうか?」

「いえ、研究者は多いそうですが……精霊魔法として使用できる方は数人と聞いています」

「そうなんですね」

 メリーベルさんはゆっくりとノートに書き込んでいる。

(おかしいな)

 私のアイテムボックスの中の精霊の書には、精霊に祈願して召喚して使う魔法は、起動と魔法が終了するまでの召喚陣の維持が出来るだけの魔力があれば、それなりに使える人はいるような事を書いてあった筈だ。

(まあ、調べるのは後回しね……)

 とりあえず精霊魔法を調べる、とメモに書いておいて、私はメリーベルさんの背中を見る。ふと視線を感じてそちらに目をやると、エリーナさんと目が合った。

「あの子、昔領地の花畑に妖精がいる!って言ってたんですのよ。だから憧れがあるのかもしれませんわね」

「可愛らしいですね。本当に見たんでしょうか?」

「見たのはそれ一度きりだったみたいですけど……本人は見たと言い張ってましたわ」

 おそらく、彼女は本当に妖精か精霊を見たのだ。先ほどカルラも見たのだと言うからには、きっとその時も本当に見たのだろう。

(主様ー!いたよー!)

(紅花の妖精さんでしたわよ)

(……へ⁉︎)


 思わず大声をだして立ち上がらなかった私を、誰か褒めて欲しい。

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