13.『ごっつい』鑑定で見えるもの
主人公の存在が普段は薄いせいなのか、徐々にギルマスたちの口調が仲間内のものに戻っていきます。
※ヤクドル男爵子息を、ヤクドル侯爵子息に変更しました※
以前、ギルマスが私に言った。『ごっつい』鑑定で見れば、出自がわかるかもしれない、と。それが頭にあって、今回のことに首を突っ込んだのは、ある意味間違いない。結果、あまり知らなくても良いことばかりを知ることになったけれど…。
-----
名前 ランスロット・ヤクドル
職業 貴族 ランク6冒険者 冒険者ギルドソノラ支部所属 ※教唆する者
性別 男性(※既婚4名死別2名 庶子4名死別1名)
年齢 17歳(聖リアナ暦919年6月3日)
【魔法適正 中】
【魔法】火魔法1(火球)水魔法2(水球)身体強化 生活魔法
【技能】剣術2 体術3
※【状態】呪3
---
私が、初めてヤクドル侯爵子息ランスロットを、ソナー型の探索と同時に見た鑑定が、このような感じだ。
そして、ギルマスの部屋で、今までで1番頑張って見た鑑定の基本と言うか、見出しの部分が、以下の通りだ。
---------
名前 ランスロット・ヤクドル(父エルリック・ヤクドル 母シャーロット・ヤクドル)※エドガー・トリル(父ハンス・トリル(実父エルリック・ヤクドル) 母マリエル・トリル)
職業 貴族(侯爵子息※男爵子息)ランク6冒険者 冒険者ギルドソノラ支部所属
※教唆する者(殺人5、殺人未遂6)
性別 男性
※既婚(内縁)ハンナ(死別)子ロアナ(ヴェルデ孤児院)、ローザ(死別)子セディ(セドリック)(ソノラス孤児院)、エメリア・マーゴー・ジェッタ 子セドリック(死別)、ユーフェリア・メル・ロアン 子セシリア。
年齢 17歳(聖リアナ暦919年6月3日)
※17歳(聖リアナ暦919年6月2日)
※【状態】呪3
--------
魔法適性などは変わらなかったので、割愛する。ここから、単語や人名などの情報を細かく見ることができる。
まずは、それぞれの※の部分を詳しく見ていくと…
--------
名前 ランスロット・ヤクドル(父エルリック・ヤクドル 母シャーロット・ヤクドル)※エドガー・トリル(父エルリック・ヤクドル 母マリエル・トリル)
※ヤクドル侯爵家の三男と生後2日目の時に、同家の使用人マリエルの夫ハンス・トリルにより、妻マリエルが産んだエルリック・ヤクドルの庶子と故意に取り変えられた。以後ランスロットとして育てられる。
--------
と言う具合に、情報が色々と出てきた。どうやらこの現ヤクドル侯爵は、屋敷の使用人の妻にも手を出していたようだ。
そして、そんな父親の血を色濃く引いたのか、ランスロットも幾人もの女性と関係を持った、と言う事だろう。
「なんか内容が酷すぎるが…あいつらがやらかしてんのは間違いなさそうだ」
「と言うことは…この教唆というのは、この内縁とされている女性たちや子供を指すのですか?」
「それだけじゃ…ねぇな…数が合わん。殺人未遂がダン達が入ってたとしても…もしかしたら、その前の奴らが入ってたとしても、数が合わないか…これ、詳しい情報聞いていいか?」
「殺人未遂の方は、ダンさん達も入っていますよ。あと2人はその他はバルガ所属ではないようです」
あえていくつかの情報は書類には書かなかったが、見逃してくれるギルマスでは無かったようだ。
「名前、書いてくれるか?」
「…はい」
私は、サラサラと2人分の名前を書き…最後にギルマスの顔を見る。
「後1人は、ギルマスです」
「なっ…」
「いつだ?そんな素振りは…」
「おそらくですが、捜索の最中です」
ポケットの中から、シャーレに入れた半分に割れたコイン状の護石と、もう一つ小瓶に入れた薔薇の棘のような物を取り出して見せる。
「昨日、捜索に行かれる前に無断でポケットに入れさせていただきました。一度だけ、名を刻んだ人の危機を防いで、知らせてくれます」
「ホントかよ…確かに途中であいつら挙動不審すぎたけどよ…」
「これは…毒を入れた吹き矢のような物ですね?」
「はい。彼の従者の1人が暗器使いですし、鑑定で使用者が出れば…」
「リッカさんは、鑑定で見えたのですね?」
静かなサブマスの声に、静かに頷いた。サブマスは、悔しそうに息をつくと項垂れる。彼の鑑定では、使用者までは多分見えないのだ。
「ジェイ、証拠が出たんだ。これで突き出せるんじゃないのか?ギルマスへの殺人未遂だぞ。重罪だ」
「いや…ルドが鑑定できねぇんだ…それだと暗器と暗器使いがいた、っていう状況証拠にしかならねぇ。で、証拠を証明するにはリッカが矢面に立つことになっちまう。隠者としてお披露目されちまうのと同義だ。相手はボンボンとは言え親は古参の侯爵だ。後々まで考えれば、リッカにそこまでやらせたくねぇ」
「貴族の私が見えれば…それだけで証拠になるというのに、悔しいですね……」
眼鏡を外して項垂れるサブマスに、私は昨日から考えていたことを提案することにした。
「私の鑑定術は、多分サブマスの鑑定魔法とは違う気がします。ですから…」
3人の目が、私を見つめる。
「私の鑑定術のやり方をお教えします。もしかしたら、使用者履歴まで見れるようになるかもしれません」




