探し物~勝利の力~
シンクが向かったと思われる元魔王城の跡地に、ダウ達は向かう。
果たして、復活しようとしている魔王とモンスターに勝てるのか?
そして、無事にシンクを助け出せるのか?
「さて、行くとしますか」
起きてそれぞれ身支度を済ませた3英雄と僕。
なんだけど、1人足りないような。
「お、起きたかぁ?」
家の外で立っていると、屋根の上からグルが降りてきた。
「ご苦労様、特に何もなかった?」
「ああ、見張ってたけど何もなかった、残念」
「残念がるなよ、その方が良いんだからさ」
何の話をしているのか分からない3人を見ていると、ソーラが笑いながら訳を話してくれた。
「グルは夜のあいだ、あの洞窟に異変がないか見ていてくれたの」
「ええ?夜通しですか?」
「そうだよ」
僕の言葉に普通だよという顔で答えるグル。
「ま、こいつは普段から何かある時の為に寝て体力を温存しているからな」
人型のグルの頭をくしゃくしゃに撫でるゾル。
「やめろ~」
嫌がる声を出しながらも本気で嫌がってないようだ。
「さ、行きましょうか」
ソーラの言葉に僕達は頷き、洞窟へと向かった。
途中、村長の家に行き出発の挨拶をする。
村長は深々と頭を下げながら僕達を見送った。
洞窟の前では昨日から張り込んでいる村人達に応援されながら、僕達は洞窟へと足を踏み込んだ。
初めて洞窟に入ったが、思ったより広く明るかった。
壁面の所々がうっすらと光っている。
ゾルが言うには、光鉱石という淡い光を放つ石が混じっているからだろうと言うことだった。
グルを先頭に慎重に先を進む僕達だったが、特に何もなく洞窟の奥に着いた。
洞窟の奥の壁面には黒い大きな渦が渦巻いていた。
「これが元魔王城へ通じている場所ね」
「黒渦門だな」
「強い魔素力が引き合い出来る物で、そこに入ると一瞬で遠くの場所に行けるようになるのよ」
「それってかなり便利ですね」
素直に感想を言う。
「ま、確かにね。
でも、魔素力で出来てるから十中八九向こうにはモンスターがうろついてるわね」
そうか、魔素力はモンスターを生み出す元にもなっているから。
「さて、今から入るけどダウは戦闘経験ある?」
「狩りをするくらいならやった事あります」
「ん~支給されてる武器もどこにでもあるようなショートソードか」
ソーラが僕をまじまじと見つめた。
「じゃ、後方待機で」
笑顔で言った。
ま、3英雄に比べたら確かに戦力外だけど…
「いや、戦力外とかじゃないのよ」
慌ててソーラが言う。
「ただね、私達の攻撃に巻き込まれる可能性があるから下がっててもらおうと思ってね」
ちょっと罰悪そうに言うソーラ。
「グル達は一騎当千の戦い方だからな。
言うなれば範囲攻撃ばかりのようなものだ」
「ま、俺は違うがな。
でも、ソーラやグルは近くにいるとヤバイからなそれを自然に避けれるくらいの力が前線にはいるって事だ」
フォローするようにゾルが言い、「なんで俺は後方支援だ」と受け加えた。
「じゃ、私とグルが入って10数えたら入ってね」
そう言ってソーラとグルは渦の中に消えていった。
「じゃ、数えるぞ。1、2…」
ゾルがゆっくりと数える。
「10、さ、俺達も行くか」
ゾルの後に僕も初めて門に入る。
入った感想は特ない。
渦に入ったと思ったらすぐ目の前は暗雲立ち込める別世界だった。
赤黒い大地の上に空を見上げるソーラといつもの倍以上の大きさの獣になったグルがいた。
「あ、来たね」
ソーラは振り向き笑顔で声をかけてきた。
「モンスターいなかったんてすね」
周りにはモンスターはいない。
運が良かったのかな?
「いや、よく地面を見なよ」
ゾルに言われてよく地面を見るとあちらこちらに素材が落ちていた。
素材とはモンスターを倒した後に落ちているモンスターの一部だ。
モンスターは魔素によって出来ているモノが多く、魔素で出来ているモンスターは倒すと煙のように消えてしまい後に素材が残る。
「いやぁ、もう、素材集めはしなくて良いかなと思って」
そういうソーラの言葉にグルも頷いた。
しかし、よくよく見ていると本当に大量に素材落ちてる。
優に100以上はあるような。
これを2人で倒したの?
「ダウ、せっかくだし拾ってから着いてきて、私達のんびり先に行ってるから」
そう言って、僕に1つの小さな袋を渡したソーラとグルは先に進む。
「それはアイテム袋って言ってな、名前の割にはレアなアイテムだ。
数100くらいならどんな大きさのアイテムでも入ってしまう魔法の袋だな」
ゾルは近くにある素材を取ってきて僕の持つアイテム袋に入れる。
確かにどんな大きさの素材も吸い込んでいる。
「すごいですね」
「ま、このアイテムは冒険者になる為の試験の1つで手に入れられる物だから価値はあまりないがな」
「そうなんですね、僕も全部終わったら冒険者にでもなろうかな」
素材を袋に入れながら呟く。
「冒険者は冒険者で大変な仕事だがな」
ゾルは笑いながら素材集めを手伝ってくれる。
「おっと、これは俺の出番かな」
前を見たゾルが背中に背負っているロングバレルの付いたスナイパーライフルをおろし構えた。
武器の名前はここに来る間に教えてもらった。
しばらく構え、スコープを覗くゾル。
そして、タンタンと2回甲高い音がした。
「よし、これでいいだろう」
そしてまた、スナイパーライフルを肩に担ぎ、素材集めを始める。
「何したんですか?」
気になった僕はゾルに聞いた。
「ん?ああ、先に行った2人がモンスターと遊びながら行ってるんだが、空から攻撃してくるやつもいてな、それを打ち落とした」
僕にはまったく見えない2人が見え、さらにその距離でモンスターに攻撃を当てるゾルってすごすぎる。
「さ、どんどん進むぞ」
ゾルに言われ、僕達はその後も素材を集めながら先に進んだ。
「あ、やっと来たね」
2人が立ち止まっているのは元魔王城跡地。
そこまでモンスターには1度も会わず、素材だけ拾って来た。
「どれだけ強いんですか、3人とも」
ゾルも時折スナイパーライフルを構えて超長距離射撃をしていた。
「いや、お爺ちゃんに比べれば弱いよ」
ソーラの言葉に残り2人が頷く。
それはそうかも知れないけど、無敵すぎです。
「それより、この先にシンクがいるとグルは確信しているぞ」
大きな獣状態で辺りを嗅いでいるグルが僕に向かって言った。
よく見ると元魔王城の瓦礫の中に穴が見える。
「この奥ですか?」
「たぶんな」
「ここからは1人でいける?」
ソーラに力強く頷く。
「よし、それじゃ、行っておいで。
この穴の前で私達待ってるから、誰も中には入れないようにしておくよ」
ソーラの言葉にお礼を言って、僕はその穴に入っていった。
穴の中は村にあった洞窟に似ていて少し明るかった。
道中モンスターもおらずすんなりと奥まで進むことができた。
今、目の前には門ががある。
ここがそうなのか?
ゆっくりと門を押した。
少し力を入れただけで門がゆっくりと開いた。
中は少し暗い。
一歩足を踏み入れる。
すると、部屋中の松明に火が灯った。
奥の椅子に何か座っている。
僕は怖い気持ちを押さえながら前へと進んだ。
目でその姿が見える場所まで来た。
「ヨクキタナ」
聞き取りにくい声で椅子に座る影が喋る。
「シンクを返せ」
「シンク?アア、ココニキタムスメノコトカ」
影は大きな口を開けて笑う。
「アノムスメハダイジナエサダ、カエスワケナイダロウ」
影に向かって剣を構える。
「ホホウ、エイユウクラスデモナイオマエガ、ワタシニカテルカナ」
影はゆっくりと立ち上がる。
大きさは僕の数倍だ。
足が震える。
でも、ここで引くわけにはいかない。
僕は相手を睨んだ。
そして、その影の胸の辺りに、シンクの姿が見えた。
「シンク~」
「ハハハハ、キコエルハズガナイ。
ワレガモウトリコンデイルノダカラナ」
「くそう」
「サァ、キエロ。
ワレハフッカツシテ、ソトニイルエイユウヲホロボシ、イマイチドセカイヲワガモノニスル」
影の手が僕に向かって広げられる。
そこに集まる黒い塊。
魔素か?
あんなものを大量にぶつけられたら、人でなくなってしまう。
そして、巨大に集まった魔素の塊が僕に向かって打ち出された。
ゆっくりと迫る黒い巨体な塊。
避けようと思っても体は恐怖で動かない。
3英雄に1人でいけると言ったのにこの様とは。
目の前にシンクがいるというのに。
「エイユウデモナイ、タダノニンゲンガワレニカナウハズガナイダロウ」
あざけ笑う影の声が聞こえる。
僕は黒い魔素の塊に飲み込まれて死んだんじゃないのか?
なんで影の声が聞こえるんだ?
未だに目の前は真っ暗だ。
でも、なんだ?
僕の体を薄い光が包み込んでいる。
スキル「絶対防御」発動。
今までに聞いた事のない声が頭の中に響く。
そして、目の前が開けた。
「ナ、ナンダト。
ナゼイキテイラレル?」
真っ直ぐ何かで切られたように2つに別れ霧散する魔素の塊。
驚いた声の影に僕の背後から1発の銃弾が飛来した。
ダン
銃弾は影の額に命中。
「ガ、ナ、ナニガ」
その言葉を最後に影は霧散した。
影から解放されたシンクがゆっくりと降りてくる。
僕は急いでシンクが落ちてくる場所に走り、受け止めた。
肌の色が薄い白色になっているが、まだ息はある。
でも、大量の魔素の中にいたんだ無事ではないはず。
僕はシンクを抱え3英雄のいる入り口に走る。
「ん~」
「シンク?」
ゆっくりと目を開けようとするシンク。
しかし、その目は真っ赤に染まっている。
普段のシンクの瞳の色とは違う。
「おかえり、よく頑張ったね」
目を開こうとするシンクの目元を手で隠しながらソーラが現れた。
いつの間にか僕は入り口に戻ってたのか。
「グルお願い」
僕からシンクを受け取ったソーラは、地面にゆっくりとシンクを寝かせる。
シンクの目は今は瞑っていた。
城の瓦礫の上に陣取っていたグルが降りてきてシンクを嗅ぐ。
「かなり大量の魔素にあてられてるな」
「大丈夫なんですか?」
僕の言葉にわぅとグルが答える。
「まだ、大丈夫だ。
そんなに慌てなくてもいいぞ」
グルは笑ったような顔をした後、大きく息を吸う。
そして、シンクに向かってわぉーんと咆哮した。
咆哮に合わせて空気が震えたような気がした。
それに合わせてシンクから黒い靄が消えたような気もする。
「さ、大丈夫だ」
「シ、シンク」
シンクからゆっくりと離れたグルの代わりに僕はシンクに近づく。
顔色はほのかに赤くなっていた。
「しばらくは目を覚まさないと思うわ、でも、もう大丈夫よ」
「よかったな、助けられて」
ソーラとゾルの言葉に頷く。
よかった本当に。
「戻りましょうか?」
「はい」
3英雄とシンクを抱いた僕は故郷の村へと向かった。
無事に村に着いた僕達を村のみんなは喜んで向かえてくれた。
シンクをシンクの部屋のベッドに寝かした後、村長が家で簡単なパーティーを開いてくれた。
そのパーティーの中で僕は3英雄を紹介する。
初めはとても驚いていた村長だったが、戦いの話を聞き納得がいったようだった。
そりゃ、あれだけ強かったらね。
僕が死にそうになった時、なぜ助かったのか分からず3英雄に聞いた。
僕を守ってくれたスキルはたぶんコクリがくれたスキルだろうという事だった。
3英雄達も昔、コクリからスキルをもらったそうだ。
次に魔素の塊から解放してくれたのは、ソーラの持つ空滅刀と呼ばれる見えない刃。
ソーラが僕と別れる前に一刀だけ僕に着けてくれたみたいだった。
その刀は勝手に動き、敵を切り裂くものらしい。
そして、最後に影を討った弾丸。
あれはやはりゾルが撃った物でゾルのお爺さんから、魔王が復活した時に撃ち込むように言われた物らしい。
消滅弾、2発しかないその弾は当たった対象をこの世から消してしまう、滅茶苦茶危険な弾だった。
結局、3英雄に助けられた僕だったが、3英雄からは「ダウが私達を見つけなければこの結末はなかったよ」と誉めてくれた。
パーティーも終わりに近づいた時に、これからの事を村長と3英雄達と話し合った。
このままシンクを王の元に連れていってもシンクはまた王のハーレムに入れられてしまう。
そんな時、ソーラが言った。
「私の店に来れば何もかもうまくいくと思うよ」と。
村長は3英雄と僕を信じ、まだ寝ているシンクを連れて馬車で店へと向かった。
ゆっくりと息をするシンクに僕は安堵しながら馬車は走った。
そして、見えてくるソーラの店。
その前には懐かしい姿の人物が手を振っている。
「おかえり、4人とも」
フードで目元は見えないが、満面な笑顔でコクリが笑って出迎えてくれた。
これでこの章は終わりになります。
この後、いつものと後日談、キャラ紹介に続きます。
それでは、また、お会いしましょう。
拙い文を読んでいただいてありがとうございました。




