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転移無双  作者: 天野 空
第九章 運送屋、異世界を走る
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運送屋、広野は続く

人身売買に忍び込んだ送助。

そこで見た黒幕は送助が見知った相手だった。

果たして黒幕は誰なのか?

「まさか、あんたがこんな事をしてたなんてな」

俺の声にローブの人物はため息をつく仕草をした。

「まさか、あなたに見つかるなんてね」

聞きなれたその声に俺も溜め息がでる。

ローブの人物はゆっくりとそのローブを取る。

「どうしてこんな事をしてるんだ?アリベ」

そう、男に金を渡す時に見た手には、アリベが自慢していた、この世に数個しかない貴重な魔法の指輪がしてあった。

さすがに世界は狭いと言えどもそんな貴重な指輪をそうそう見る事はないだろう。

とすれば犯人はアリベに他ならない。

「前に話をしたと思うけど、私は上界に行きたいの。

それには今よりももっと強くならないといけない。

私はその為に多くの犠牲と体験をしてきたわ。

そして、至ったの自分の限界を超える力を得る方法をね」

アリベはそう言うと後ろの男に手をかざす。

『ブレイク・マジックストーン』

アリベから聞いたことのない魔法の言葉が放たれる。

手をかざされた男は爆散し、そして、その残骸は宙で集まり固まって1つの石となりアリベの手に引き寄せられた。

見ていて気持ちいいものではない。

吐き気がする。

「ひ、ひぃ~」

男の側にいた仲間は腰を抜かしながら部屋の端に固まる。

捕まった人達も声なき声をあげている。

「『ブレイク・マジックストーン』生き物を魔力の石、魔命石に変える魔法。

これを使えば自分の力以上の魔法が使える。

そして、この石は穢れを受けていない若ければ若い程いい魔命石になる」

アリベはそう言うと手にした石を握り砕いた。

「こんな穢れまくっている石なんて価値がないからね。

さて、私の秘密を知ったあなたはどうしたらいいかな?」

俺に手をかざすアリベ。

そこにズドンと何かが勢いよく倉庫に体当りをしてきた。

クロウだ。

しかし、体当たりの音は響くがクロウは倉庫の中に入ってこない。

「クロウを呼んでいたのね。

この倉庫に結界魔法をかけていてよかったわ。

あなたとこの倉庫の中の素材を石に変えたら、クロウも石に変えようかしら」

捕らえられた人を素材としか考えられないなんて、もうおかしくなってしまっているのか。

「さぁ、石になってもらうわ。

あなたは貴重なスキルを持ってるみたいだし、さぞかしレアな魔命石になるでしょうね」

「別に嬉しくないが?」

俺は密かにスキルを準備する。

「そう?私は嬉しいけど」

ニヤリと笑うアリベがさっきの魔法を発動する。

それより先に俺はスキルを発動させた。

『セーフティゾーン』

俺自身を安全地帯へと変える。

「へぇ、それがあなたの車にかけられていたスキルね」

アリベは感心したように笑う。

「でも、いいのあなたにそれを使っているなら車は今は無防備よね?」

確かに、アリベにはこのスキルの事は旅の安全の為に話したっけ。

「それに、このスキルはあなたの体力が尽きるまでなのよね。

私の魔法は今は無尽蔵。

素材もこれだけ得ればあなたの体力を削り取るくらいは出来るわよ?」

両手をこちらに向けるアリベ。

そう、アリベの言う通りこのスキル発動中に攻撃を受けると俺の体力を削られる。

削り取られて気を失えばスキルは切れてしまう。

それがこのスキルの欠点だ。

「それじゃ、1回目」

アリベの両手に炎の玉が現れる。

そして、その炎は轟音をあげながら俺に向かって放たれた。


「なかなか耐えるわね」

次で何発目か?

俺は為す術なくアリベの魔法を受けていた。

スキルを使って怪我はしないがこちらから相手を倒せる程の力は俺にはない。

俺は守り一辺倒だ。

これまで戦いはクロウに任せていた。

そのクロウも今回はこの場所にはこれない。

完全にお手上げだ。

俺の体力ももう限界に近い。

眠気が襲ってきている。

寝てしまったら、俺はもう二度と目を覚まさないだろうな。

くそう。

捕らわれた人を助けるどころか自分がやられるなんて。

「さて、そろそろ限界でしょ?

私もあまり時間をかけたくないからこれで最後にしましょうか?」

アリベの手に何発目か分からない炎の玉が現れた。

「さようなら、これからは私が魔命石として使ってあげる。

そうそう、あの車ももらっておくわ。

じゃぁね」

アリベから炎の玉が放たれ俺に向かってきた。

道半ばでやられるのは悔しいが、俺に出来ることはもうない。

くそう。

俺はぎゅっと目を閉じた。

その時浮かんだのは眠たいのに運転して事故を起こしそうになった自分の事だ。

また、眠くなって俺は過ちを犯すのか。




しかし、いくら待っても俺に死は訪れなかった。

なぜ?

俺はゆっくりと目を開ける。

目の前は真っ白だった。

「なんであなたがこんなところにいる?」

アリベの言葉に俺は一歩後ろに下がる。

そして、目の前の物の全体を見た。

それは白い布だった。

人が1人隠れるくらいの大きな布がそこにあり、中には人が入っているのだろう。

そう、そこには俺のよく知るもう1人の人物がたっていたのだ。

「シロさん」

そう呼ばれても相変わらず立っているだけのシロさん。

しかし、その背は今はとても頼りになった。

「どうしてここにこれたの?

私の結界は?」

確かにここはクロウも入れない結界内。

どうして入る事が出来たんだ?

それになんでこんな場所にシロさんが?

「うわぁ~あ、よく寝た」

大きなあくびと共にシロさんが手を上げのびをした。

初めて聞いた声。

それに寝てたって。

「ん?どこだここは?」

自分でここに来たんじゃないの?

「あんた誰だ?」

シロさんはアリベに向かって言った。

「はぁ?ここ何週間か一緒にいたでしょ」

アリベはその言葉が気にさわったのかきつい声で言った。

「いや、そうなのか?」

そして、後ろを向いて「で、あんたも誰?」

そうシロさんは俺に聞いてきた。

「えっと、俺は運送屋でシロさんとそっちにいるアリベを運んでる途中」

俺はシロさんが乗った時からの事を説明する。

「いい加減にしなさいよ」

途中、アリベが怒って魔法を撃ってきたが「うるさい、今話してるところだ」とシロさんは普通に手で払いのけた。

「なるほどな」

シロさんはあらかた俺の話を聞いた後、アリベの方を向いた。

「上界に行きたくてこんな下らない事をしてるのか」

「な、下らないですって?」

「はぁ、神の思惑通りってやつか」

シロさんは溜め息混じりで独り言を呟く。

「さて、いろいろと世話になったみたいだな。

これはその礼だ。

それと俺はシロって名前じゃなくクロノって言うんだ」

そう言って被った布を外すと、中から黒髪短髪の青年が現れた。

クロノは懐から1個の石を取り出し俺に差し出した。

「そ、それはまさか」

その石を見てアリベが驚いている。

「これは?」

「これか?

これは俺がこの世界に来て『オートモード』状態の時にずっと大気から集めた魔力を溜め込んで作った石だ。

この世界でいう魔永石と同じだと思っていいよ」

「やっぱり、伝説の魔永石」

アリベは目を輝かす。

「魔永石?」

聞いた事のない石だ。

「はは、聞いた事のないって顔だな。

それは、半永久的に魔力を放出する石だよ」

「その価値が分からないなら私に渡しなさいよ」

魔力を上げたいアリベならそりゃ、喉から手が出るほどほしいよな。

「送助の軽トラに入れればずっと走れるぞ」

「お、それは助かるなぁ」

「そ、そんな事に使うなら私に渡しなさいよ」

「ああ、うるさいなぁ」

クロノはアリベに向く。

「あんたの方は上界に行くのが目的だったよな?

なら、連れてってやるよ。

目的の場所がどんなところか」

「な、何言ってるの?

そんな簡単に行ける場所じゃないし、ましてやここから世界樹までどのくらいの距離があると思って」

クロノはアリベの言葉を聞かず近づいて行き、腕を取る。

「それじゃ、よい旅を送助」

そう言ってクロノとアリベは目の前から消えた。

ドカン

2人が消えたすぐ後に、倉庫にクロウが飛び行ってきて、この人身売買は何が何だか分からないまま幕を閉じた。

俺はいくつかの情報と人身売買をしていた男達をしかる場所に届け、捕まっていた人々も無事に保護してもらった。


それから、俺はクロウと共に軽トラに戻る。

『セーフティゾーン』を解除していたが、荷物は荒らされてはいなかった。

俺はクロノからもらった石を軽トラの給油口に入れた。

燃料はすぐさまいっぱいになる。

クロノが言った通りこれならずっと走れそうだ。

荷台にはクロウがゆったりと寝そべった。

今回運んだ2人は特殊なお客だったが、異世界だしこういったこともあるかもしれないな。

それよりクロノが言っていた神の思惑どおりっていうのがなんか気になった。

俺は助手席の世界樹の苗を見る。

俺がこれを運ぶのも神の思惑に肩入れしているのかもしれない。

俺もこれからいろいろと調べた方がいいのかもな。

この届け物が本当に必要とされているものなのかどうか。

俺はそう考えながら、一応目的地に車を走らせる。

これからは着いた街や人から情報を集めながら旅をする事になるだろう。

そして、最後には決めないといけない。

この世界樹をどうするのかを。

俺の旅はこの広野のようにまだまだ続きそうだ。

送助の旅は続きますが、一旦ここでお別れです。

後日談はまた後程。

次はクロノ視点が続き後日談、キャラ紹介になります。

お楽しみに

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