運送屋、裏町をゆく
突如現れた大量のキングワームにアリベの魔法が炸裂する。
果たしてキングワームをやっつけられるのか?
景色は変わってしまわないのか?
放たれた一条の黒い光はまっすぐにキングワーム達へと到達した。
爆音が起きただろう、巨大な土煙が上がっているが、この色を失った世界では、音は全く聞こえなかった。
「終わったよ」
音の聞こえない世界にアリベの声は聞こえた。
そして、突然世界が色を取り戻す。
さっきまで見えていた、ワーム達は初めからいなかったようにもう見当たらなかった。
(もう、大丈夫。そのまま進んでいいよ)
アリベからのテレパス。
さっき幌から降りる音がしたから、もう幌の中に入ったのだろう。
「了解。
それにしてもすごいな。
今まで何人か魔法使いを見てきたが、あんな魔法使う人は始めてだ」
(そう?お世辞としてはありがたいけど。まだまだ私なんて中間くらいよ)
あれで中間ってこの世界どうなってるんだ?
(ま、私より上の存在になるとなかなか下界をうろついてないからね)
「下界?」
初めて聞く単語だ。
(そう、今、私達がいるのが下界。
そして、上界って言うのが世界樹から上がる世界ね)
「世界樹から上がる?」
(そそ、そこにはこの世界の達人や神と呼ばれる存在がいるらしいわよ
ま、私達みたいな下界の人間は、将来上界に行くのが目標みたいなものね)
「そうなのか」
俺が運んでいるこの樹にはそんな役目があるのか。
(ちなみに世界樹には勝手に上に行かないようにガーディアンがいるらしいよ)
アリベの話を聞きながら俺は軽トラを走らす。
先ほどキングワームがいたであろう地点は、所々キングワームが動いた後が地面に穴として残っているが、その他には何も注意する事はなかった。
そう、あれだけの魔法の爆発があったのにも関わらず何も痕跡はない。
本当にアリベの魔法は凄いとしか言いようがなかった。
「地図ではそろそろ町に着くな」
(そうだね、感知魔法でも町が見えてるよ)
アリベの言う通り町が近いのか、他の車も増えてきた。
さて、次の町ロンギュでは俺もする事があった。
俺の得意先になるある国の国王からの依頼受けているからだ。
「止まれ」
検問で前の時のように通行書を見せる。
「よし、入っていいぞ」
俺は難なくロンギュに入った。
駐車場に軽トラを止め、お客の2人に町をぶらぶらしてくるようにすすめる。
そう、俺が依頼を受けているのはお客の2人には関係がないし、バレるとまずいからな。
シロさんとアリベは俺のすすめどおり町へと繰り出した。
「それじゃ、行ってくるよ。
もし、俺に何かあった時は頼む」
そう荷台にいるクロウに伝え、俺も町に出かけた。
まずは依頼の情報収集だ。
俺に依頼してきた国王(運搬の途中、モンスターに襲われている所を助けて国まで送って友人になった)の話では、この町で違法の人身売買がされていると言うことだった。
奴隷商人はこの世界にはいるが、それはきちんと届け出をし、奴隷も最低限の衣食住を提供しなくてはならない。
今回はそれをせずそれも年端もいかない子どもを連れ去り売っているという話だった。
俺はスキル『インビジブル』を路地で使い裏通りに出た。
このスキルの弱点は人やモンスターに見られていると使えないという完全隠密スキルだ。
発動するにはこういった誰もいないような場所で使うしかない。
ちなみに俺のペットであるクロウの前でも発動しなかったので発動する時はお一人様にならないといけない。
裏通りを行くと、俺が前の町で仕入れた情報通り薄汚い酒場のような場所があった。
ここはこの町の裏で動いている悪達が集まる場所らしい。
この町の治安隊も手がだせないような場所だ。
俺は店に入る男の後ろに着いて店の中に入った。
店の中は薄暗く、客の顔もはっきりとは分からない。
煙草と酒の臭いが充満して息苦しい感じだ。
俺はカウンターの中に入り勝手に飲み物を拝借する。
透明だから注文出来ないしな。
ま、泥棒はいけないからお金はカウンター端に置いとくよ。
さて、俺は店の壁にもたれながら周りを見渡す。
だいぶ目もなれてきて見えるようになってきた。
俺は見た目で悪そうなグループの後ろにまわり聞き耳をたてた。
このグループは店の襲撃の話をしていた。
ま、ヤバそうな話だが俺の知りたい情報じゃないな。
メモって後で治安隊か冒険者ギルドに売るか。
次はと、俺は順番に酒を飲んでいるグループに聞き耳をたてた。
昨日の強盗の成果、借金の取り立ての状況、町一番の金持ちの暗殺、近々ある踊り子舞台の順番待ち、幻惑ダケの粉の販売、ボスの趣味で作った本を販売会で売る相談など。
いくつかは売れる情報はあったが肝心の話が聞けないな。
ま、そんなにすぐに聞けるとは思ってなかったけど。
俺は飲み物片手に次のグループに回った。
「おい、例の客が来たらしいぞ」
「本当か?やっと来たのか」
はぁ、今度はなんだ?
麻痺ダケの販売か?
ボスの秘密の写真集でも売る算段か?
「商品はどうしてる?」
「ああ、死なない程度にはしてるさ、今のところ10人前後集まってる、逃げ出す程の体力はないように調整してるよ」
当たりか。
「で、客はいつ来るんだ?」
「相手からだと昼過ぎごろに例の場所でって事だ」
「分かった。やっと商品厄介払いできるな、治安隊も行方不明者を探して躍起になってるからタイミング的にはバッチリだ」
いや、こっちこそタイミングバッチリだよ。
「じゃ、向かうとするか、お前は他のやつと商品を例の場所に運べ」
「分かった」
男達は席を立ちそれぞれ別れていった。
俺は命令をしていた男の後をつける。
こいつに着いていけば取引場所に連れていってくれるだろう。
男をつけ、俺は町外れの森にある倉庫に来ていた。
たぶん、冬に薪を保管する場所なのだろう。
町の奥にあったせいか、来た時にはこんな森見えなかったな。
しばらくして外がうるさくなる。
うるさいといってもウーウーといううなり声と男達の荒い怒鳴り声だが。
扉が開き、先程の男を先頭に何人かの猿轡をされ手首をきつくロープで縛られた子どもや女が連れてこられた。
そして、最後に入ってきた男の手には赤ん坊が抱かれていた。
「昨日連れてきたやつです」
「これなら高く売れそうだ」
こいつらどこまで外道だ。
しかし、俺一人でこの人数を守りながら戦うのは無理か、クロウに来てもらってどうにかするしかないか。
「お、客が来ましたぜ」
扉のところで外をうかがっていた男が声をあげる。
縛られた人達は身震いをしながら端で座らされていた。
扉がゆっくりと開き、黒いローブを深々と被った人物が中に入ってきた。
先程のボスらしい人物が近づく。
「注文通り、汚れていない人間集めておいたぜ」
そう言われたローブの人物は集められた人達を見て頷き、懐から布袋を男に渡す。
あれは?
俺はその際に見たくない物を見てしまった。
男達はその袋を机に置き仲間と中に入っている金貨を確認し始めた。
よし、クロウへの連絡はした。
俺とクロウは侍従関係を結んでいるので、遠くに離れていても思念を送り簡単な事なら伝えられる。
さて、どうしてこんな事をしているのか事情を聞かないといけないな。
俺は倉庫のドアを背に『インビジブル』を解除した。
「話を聞かせてもらおうか」
突如と現れた俺に男達は焦って金貨を仕舞っていた。
しかし、ローブの人物は何事もないようにこちらに振り向た。
そのローブの中でうっすらと不気味な笑みをしながら。
暗い倉庫の中で不気味に笑うローブ姿の人物の正体は?
送助は無事に捕らわれた人達を救えるのか?
次回をお楽しみに




