わし、精霊化する
わし、当年で1095歳。
とうとう寿命で死んでしまった。
しかし、天寿を全うしたわしに何のいたずらか変な事が起こったんじゃ。
さてさて、どうなる事やら。
なんでこんな事になったんじゃろうなぁ。
わしは暗闇の中で考える。
そう、あの頃と違い今は十分に考える時間はあるからなぁ。
「とうとう死んでしまうんじゃな、わし」
当年とって1095歳となるある日、わしは布団に寝たままそう呟いた。
この2年はほぼ寝たきりだ。
今は弟子達が自分の仕事をおいてまで、看病に来てくれている。
若き頃は英雄と呼ばれ、多くのクエストや強敵を倒してきた。
様々な魔法を覚え、自分の流派も立ち上げ、多くの弟子を育てた。
しかし、寿命には勝てなかったな。
まぁいい、わしも満足する生涯だった。
何せほぼ好きな事をやれたからのぅ。
弟子達には悪いが、わしもそろそろ自分の世界を終わらせてゆっくりと休もうかの。
おやすみ、我が愛する弟子達よ。
そう、そうやってわしは死んだはずじゃ。
なのにどうしてこうなってしまった?
「ただいまぁ」
うむ、帰ってきたな。
突然暗闇だった周りが明るくなる。
そして、わしはいや、わし達は小さな手で捕まれ持ち上げられた。
「ただいまぁ、僕の自慢のカード達」
そう、わしは今なぜかカードになってしまっておるのだ。
ちなみにこの子は、一葉と呼ばれている、この家の子どもじゃ。
わしもつい3日前にこの家に来た。
このカードに転生?した時は真っ暗闇で、この子がその暗闇から取り出してくれたというわけじゃ。
わしをひいたこの子はすごく喜んでくれてたな。
なんせウルトラレアというランクらしい。
ま、わし程の力があればそれくらいのレア度は当たり前じゃけどな。
初めて外を見たわしはそれはそれは驚いた。
なぜってビルと呼ばれる巨大な建造物がたくさん立ち並び、鉄の箱に車輪がついて走っていた。
車と呼ばれておったな。
なんせ、わしがいた世界とは全く異なった場所じゃった。
「いってきま~す」
「はい、あまり遅くならないようにね」
「分かってる」
わし達は一葉に連れられ、隣の家に向かった。
ま、いつもの事だから箱の中に入れられてても分かるんじゃが。
「こんにちは」
「あ、一葉くんいらっしゃい、ちょっと待ってね。
双葉、一葉くんが来てくれたよ」
「は~い」
ドタドタ
「おまたせ。それじゃ、いこう」
「うん」
この双葉と呼ばれた女の子は一葉のカード仲間みたいじゃ。
よく2人でカードショップなるお店に行っておる。
今日もそこに行くんじゃろうな。
「こんにちは」
「お、いらっしゃい」
お、着いたようじゃな。
「よ~し、双葉、バトルしよう」
「いいわよぉ」
お、やっと外に出れるのぅ。
わし達は一葉の手で外に出ると。
やっぱりいつものカードショップじゃな。
「あ、そうだ。新しいカード入荷したよ」
店番の男性が声をかけてきた。
「本当?」
「ちょっと見に行こうよ」
「そうだね」
一葉と双葉はわし達を置いてカウンターに行った。
「あ、今回もアルバムあるんだね」
「どんなのあるんだろ」
2人とも興味津々みたいじゃな。
さてと、それじゃ、やっと話出来そうじゃな。
おい、今日は来てるのか?
当たり前だろ、俺もあんたと同じウルトラレアだぜ。
わしは双葉の持ってきたカード群、デッキと呼ばれてるみたいじゃな、それに話しかけた。
すると、直ぐに返事がくる。
そして、双葉のデッキから透明な人らしい物が浮かび上がる。
その姿はわしの元の世界でいう、軽戦士のそれだった。
装備はライトアーマーにブロードソード。
確か名前は異世界渡りのクロノだったか?
ほら、クロノ。
約束通りわしにもその精霊化が出来るように教えるのじゃ。
本当にせっかちなじいさんだな。
わしも早く精霊化して、この世界を見て回りたいんじゃ。
いや、精霊化しても本体のカードからはそんなに離れなれないぞ。
そうなのか?
ま、精霊化できたら分かるさ。
それより、この前言った事出来るようになったか?
ん?
それはもちろんじゃ、わしを誰だと思っとる。
これでいいんじゃろ
わしは自分の中に眠る魔力を外に放出する。
カードになったわしじゃったが、クロノから教えて貰い自分の中に魔力がある事に気がついた。
クロノはそれを外に放出するように言ってきたんじゃ。
お、さすが自称大魔導師。
自称じゃないわい、周りから言われとったんじゃ。
それなら、後はその魔力を放出する感じで、自分の意思をその魔力と一緒に外に出すイメージをしてみなよ
うむ、分かった。
わしはクロノのいうように意識を魔力に添うようにイメージする。
そして。
おお、やったぞ。
これが精霊化か。
わしは見事にカードから意識を出す事に成功した。
周りを見る。
カウンターでカードアルバムを見る一葉と双葉。
店内にはその他、店長しかいないな。
しかし、カードから出たらこんなに視野が広がるとはのぅ。
じゃが、自分の精霊化した姿を見る。
これはかなり若いのぅ。
たぶん、自分が一番力が強かった時じゃないのか?
確かに一番脂がのった時期じゃな。
脂がのったとか言うなよ。
装備も全盛期に着てたやつじゃ。
世界竜と呼ばれるモンスターを単身討伐した時にドロップした、青い魔導服。
腰には永久迷宮地下500階に出るボスモンスターを倒した時にドロップした、魔導剣ウロボロス。
そして、手にはわしが世界樹の枝から作った、零杖エターナル。
なにもかも懐かしいのう。
この前死んだわけじゃが、フル装備するのは久しぶりじゃ。
これで生前の魔法や技が使えたら言うことないんじゃがなぁ。
ん?使えるぞ。
な、なに?本当か?
しかし、この世界にあまりにも影響が強いやつは使えても実体化しないけどな。
なるほどのぅ。
それでじゃ、さっきから気になっとんじゃが、この店長何でわしらに近づいてきとるんじゃ?
そう、一葉と双葉がアルバムに夢中の間、ここの店長はゆっくりとわしらカードに近づいてきとった。
たぶん、俺達を盗もうとしてるんじゃないか?
な、なに~
人の者を盗むようなやつはわしがお灸をすえてやる。
しかし、どうすれば?
力の使い方分かったんだろ?
この世界に影響を与えないくらいなら使えるぞ。
なるほどのぅ。
それじゃ、やり用はいくらでもあるわい。
わしはこちらに迫りくる店長を睨みながら、いじわるく笑ってやった。
新しく思いついた案の第一弾です。
今回はカードの精霊に転生する話。
さてさて、わしにどんな運命が待ち構えているのでしょうか?
次回もお楽しみに




