暇な転移者の閑話 その1
光の輪が続く光の道の上、クロノは仰向けになってまどろんでいた。
そこに聞こえるはずのない声が。
クロノの閑話が始まる。
俺は連続した光の輪の中、光の道の上で眠っていた。
異世界転移もすぐに次の場所が決まる訳ではない。
たまにはこうやって次の世界になかなか着かない事もあるのだ。
そして、そんな時に稀ではあるがこういった事も起きる。
「あれ?こんにちは」
光の道で寝ていると声をかけられるはずがないのに声をかけられた。
俺はゆっくりと目を開け、隣を見る。
そこには子どもくらいの背の人が立っていた。
「やぁ、珍しいところで会うね。
君も異世界転移中?」
俺の言葉に笑いながら後ろ髪をかく相手。
「そうです、ちょっと召喚されたみたいで」
「そっか、ならすぐに目的地に着くと思うよ」
「詳しいんですね」
その小さな人、小人は横に座った。
「ま、ある意味常連者だからね」
俺も座った。
「でも、する事もないのでちょっとここにいてもいいですか?」
小人が聞いてくる。
「ああ、いいよ。
それに俺も退屈してたからね」
小人は「よかった」と言って上を見上げた。
俺もつられて上を向く。
光の輪がすごい勢いで流れていた。
「何かお話とかありませんか?
いろいろ見たのなら何か聞きたいかなって。
すいません、いきなり」
小人は頭を下げる。
「いや、いいよ、どうせ暇だし。
君が次の場所に行くか、俺が次の場所に行くまで、話をしてあげるよ」
この間の冒険の性か無性に誰かと話がしたかった。
なので、俺はある世界で起きた話を小人にする事にした。
その世界に呼ばれたのは、ある薬を作る為の抗体を探す為だった。
『転移』で異次元を移動していた俺をたぶん何かの力を使って召喚したんだろう、召喚された俺も着いた場所でびっくりした記憶がある。
その世界は数十年前にあるウイルスが蔓延し、世界各地で死者がでた。
そのウイルスに対して多くの薬が作られたが、なかなか有効な薬はなく、有効な薬ができた頃にはその世界の約3分の1の生物は死にいたってという事だ。
ただ、有効な薬ができてからはそのウイルスも除去する事ができ、世界にはまた日常が戻っていた。
しかし、問題は数十年後、俺が召喚される5年前に起こった。
ある地域でウイルスで死んだ者はそのまま地面に埋めて埋葬していた。
その時は死んだ者の中にいるウイルスは、そのまま消滅すると思われていたみたいだが、そのウイルスは死んだ者の中でもそれを糧にして生き続けていた。
最悪な事にそのウイルスはその死体の中で成長、進化を遂げていたのだ。
ウイルス自体、死体の中では普段より早く死滅するが、繁殖するのも早かった。
死滅、繁殖を繰り返し普段では考えられない早さで進化を遂げたと研究者達が俺に説明した。
そして、最悪は突然訪れる。
地震による陥没だ。
埋葬の仕方が悪かったのか、元々地面が弱かったのか今では分からないが、その多くの死体が表面に露出。
その時に一気に進化を遂げたウイルスが世界を駆け巡った。
死者は前のウイルスの時よりも多く、生き残っていた者達は次々とウイルスにおかされ、現在生きているのは半分以下となってしまった。
今は巨大なシェルターの中、徹底的な除菌を受け生活しているという事だった。
俺は召喚された次の日に、ほぼ人体実験と言われてもおかしくない適性検査を受けた。
それはウイルスが充満しているシェルターの外への移動だった。
すぐさまウイルスは俺の中に侵入。
ステータスもすごい勢いで様々な異常マークが付いた。
しかし、俺はスキル『状態異常無効』を持っている。
徐々にではあるが何もしなくてもウイルスは俺の体から消えていった。
ちなみに『状態異常無効』だが、状態異常にかからない訳ではなく、かかってもしばらくしたら消えるというスキルだ。
消える速度はその状態異常にもよる。
俺の反応を見て、研究者達はすぐさま俺を解剖して調べようとしたが、さすがにそこまでは付き合う気はなかったから力で拒否した。
その後、そのシェルター内の1番偉い人がきて、非礼を詫びた上に、この世界に必ず抗体があるはずだから探しだして欲しいと言ってきた。
ま、俺も召喚された手前、力になるつもりだったしその依頼を受けた。
それから、数年、様々な大陸を渡った。
いくつかのシェルターを見つけたがもちろん入れずほぼ野宿だった。
生物もいたが、抗体云々より、ステータスを見るとほぼ毒を持った生物になっていたな。
とうとう、諦めて俺は初めのシェルターに帰って来た。
そんな時だ、シェルターから少し離れた場所に花が群生している所を見つけた。
ま、いつもの癖かな。
俺はその花のステータスを確認した。
その花はウイルスにおかされてなかった。
さらに言うと、その世界で言う抗体を持っていたんだ。
俺はその事をシェルターにいる者に伝えた。
直ぐにすごい防護服を来た集団が花を採取、検査を行った。
俺はその間、その花の近くで野宿した。
乱獲されて失くなっても困るからね。
そして、結果は抗体を発見。
そのシェルターではお祭り騒ぎで、その抗体を自分達に合うように研究が始まった。
おしまい。
ま、俺はその研究が始まって直ぐに異世界転移したから、その世界がどうなったかは知らないけどね。
「長々と話しちゃったな」
俺は横を向いた。
しかし、そこには小人はいなかった。
たぶん、話の途中で目的に着いたのだろう。
俺はもう一度横になり、光の輪を見た。
願わくば、少しの間だが共にいた転移者が、いい転移先にいきますように。
さて、この話はクロノが出会った、どこで起きたか分からない世界のお話です。
こんな世界には到底出会いたくないものです。
では、次回からは新しい章に入ります。
これからもよろしくお願いいたします。




