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転移無双  作者: 天野 空
第五章 麒麟児
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麒麟児

最後の試練を突破し、神への扉に入ったクロノ達。

クロノ達の長い旅も終わりに近付いていた。


「いらっしゃい」

扉の先に大きな玉座。

そこに俺達と同じぐらいの背の女性が座っていた。

俺達はその玉座の前に来た。

「俺達に合わせてくれてるんだな」

「ええ、貴方は分かっているみたいですね」

「そりゃ、俺は世界を旅してるからな」

神に隠し事しても仕方ない、素直に言った。

「貴方の場合は本当に世界を旅して渡ってるんですね。

貴方の言うとおり、私のこの姿は貴方達と話しやすいように変えています。

もともと、私はこの世界、星そのものですから」

アン達は神が何を言ってるか分からないような顔をしている。

いや、ノームはなんとなく理解しているのかな?

「さて、クロノ。

神器を運んでくれてありがとうございます。

そのお礼として何か願い事を聞きましょう」

「願い事か。

なら、俺と契約をしてほしい」

「契約ですか?」

「そうだ」

「内容にもよりますが?」

「俺の契約内容は、あんたに返した神器を代償にアンをこの世界に留まらせてほしい」

「貴方は理も知っているんですね」

「ああ、知っている」

アン達にはちんぷんかんぷんだろうな。

「私の古い友人の頼みでもありました、分かりました。

その契約を受けましょう」

神はゆっくりと立ち上がりアンを見た。

そして、空からアンに光の帯が降り立つ。

そして、光が消えた。

「これでアンはこの世界の住人となりました」

「どういう事なんですか、お師匠さま」

アンが俺の腕を掴んで聞いてくる。

「アン、お前には真実を伝えてなかったな。

お前はこの世界の人間じゃない。

ある別の世界から俺が連れてきたんだ。

もし、このまま、この世界の神に存在を認めてもらってなかったらいつかは別の世界に移動してしまう」

ノームがゆっくりと頷く。

俺はそんなノームを見た。

ノームのスキル『異世界漂流』それも別の世界に本人の意思とは関係なく移動してしまうものだった。

「世界の理にその世界の神がその意思で召喚あるいは転生させた命はその世界に留まれるが、世界の意思以外で来た場合、その世界に長くは留まれない、いつかは世界から追い出される」

「だったら、お師匠さまはどうなの?

お師匠さまだってこの世界とは違う世界から来たんでしょ」

「ああ、そうだよ」

「なら、お師匠さまもここに残れるようにお願いしてよ」

アンは涙混じりに俺に言った。

しかし、俺は…

「それは無理なんだよ」

そう、俺はもうどの世界にも留まれない。

「彼は強すぎるのです」

この世界の神がゆっくりと諭すように答える。

「彼は我ら神に近い存在になりつつある

それも神と言っても原初の神に近い力を持っています」

「原初の神?」

アンは神を見る。

「そうだ、その星には初めの神が必ず1柱存在する。

それから神が多くなっていく世界もあるが、原初の神は必ず1柱でなくてはならない」

「しかし、彼はその原初の神に匹敵する力を持つ為に他の世界には留まれないのです。

世界に原初の神は2柱存在出来ないのです」

「で、でも、お師匠さまはまだ原初の神に近い力をもってるだけなんでしょ?

原初の神にはなってない」

「ええ、本当の彼はもう私達を遥かに越えています」

「え?」

アンは俺を見る。

その目には涙をためていた。

「そこまで分かるんだ、さすが原初の神」

「本当に貴方はどうしてそこまでしてしまったんです?

貴方に力を与えた女神もそこまで望んではいなかったでしょう」

「俺は俺を助けてくれた女神のように助けられる者をできるだけ助けたかった、そう望んだらいつの間にかこうなってたのさ」

「神様、私の願いも叶えてください」

アンが突然、神に声をかける。

「私の持つこの剣、草薙剣を代償にお師匠さまをこの世界の住人にしてください」

「アン、お前」

「どうして離れないといけないの、私、また温もりを失わないといけないの?」

「お前、記憶が」

「分からない、でも、私を包んでた温もりは覚えてる。

だから、また失いたくはないよ、お師匠さま」

アンは草薙剣を握りながらその場に崩れ落ちる。

「貴方はどうしますか?

本来の力を永遠に失えば、アンの願いも叶えられます」

「そうだな、本当に長くいすぎた、とても楽しかった、俺が育てた子どもの中で1番優秀に育ってくれた」

アンの頭に手をのせる。

「でもな、ダメだ。

どこかで俺の助けを待つやつがまだまだいるから」

「お師匠さま、お父さん」

アンが勢いよく俺を見上げる。

泣くな、アン。

そんな顔を見せるな。

「アン、俺を止めたかったらその剣を取れ。

お前が勝ったら俺は多くの者を助けると言うのは自分のおごりだったと認め、ここに留まる。

しかし、勝てなかったら、俺は自分の想いをまっとうする」

俺はアンと距離をとる。

アンは涙を拭い草薙剣を手に取った。

「すまないな、神様。

少し時間をもらえるか?」

「構いません、貴方達が納得するまで待ちます」

「じゃ、私はこっちにつくよ」

ノームがアンの横に立つ。

「おいおい、お前もいつかは移動するだろ」

「でも、それまではクロノにも付き合ってもらわないとね」

「そうだよ、主が悲しんでいるんだからクロノは大人しくここに留まって」

ノームとは反対側の横にシロマが立つ。

「はは、やっぱりお前の主はアンだったんだな」

アンがゆっくりと草薙剣を正眼に構える。

ノームもブラックイレイザーを手に取った。

シロマも両手の『変身』を解いている。

「いいな、本気なんだな」

「当たり前です、絶対にお師匠さまを逃がさない」

涙を目の端にためてはいたが、今のアンの顔は晴れやかだ。

そんな顔を見せてくれるなら。

「俺もそれに答えないといけないな」

そして、俺は自分が持つ全てのスキルを解放した。






「むちゃくちゃすぎるよ」

仰向けに寝転んで泣きそうな声だか、アンは泣いてはいなかった。

ノームもシロマもその場に座り込んでいた。

本気を出して三時間、まさかここまで粘られるとは思ってはいなかった。

俺はこの世界の神を見る。

神はゆっくりと微笑んだ。

なるほど、力を貸していたのか、この時間を長く過ごさせる為に。

「ありがとうとは言わないぞ」

俺は神に言った。

「ええ、言ったでしょう。私は納得いくまで待つと」

「ああ、これだけやれたんだ俺は思い残すことはないよ」

「お師匠さま」

アンが座り込む。

「よく頑張ったな、これだけやれたらこれからもやれるさ」

俺はシロマを見た。

「主にずっとついていてくれるか?」

「クロノに言われなくてもそのつもりだよ」

「そうか、ありがとう」

ノームを見る。

そして、ノームの頭に触る。

「これが俺からのギフトだ」

「え?」

「約束しただろ、そのスキルをどうにかしてやるって」

「まさか」

ノームは自分のステータスを確認した。

「これって『神縛』」

「そう、アンが自分で作り出したスキルだ。

それを『コピー』して俺なりにアレンジした。

その『神縛』は俺が望むスキルを永久に発動しないようにするスキルだ」

「クロノ」

「ただ、ノームお前が本当に望んだ時だけ、そのスキルは解除される」

「ありがとう、クロノ」

「約束覚えているか?」

「ええ、マーリン。

私は昔そう呼ばれていたわ」

「そうか、覚えておくよ、マーリン」

俺はもう一度、アンを見た。

その目にはもう涙はたまっていない。

ゆっくりと立ち上がるアン。

俺は黙ってアンを抱きしめた。

それに答えるアン。

アンの温もりを感じる。

この世界に来た時に抱いたあの温もりとは違う。

これからも生きていける力強い温もりだった。

「あったかい、お父さん」

「ああ、俺もだ、こんなに大きくなったんだな」

「ありがとう、私を育ててくれて」

「ありがとう、俺のところに来てくれて」

「元気でね、絶対に誰にも負けないで」

「ああ、アンも元気に過ごせよ、世界はまだまだ広いから」

「うん、うん」

俺はアンを抱き締めながら頭を撫でる。

この温かさを忘れないように、俺の腕の中の命が長く過ごせられるように願いを込めて。




「またせたな、神様」

「納得いったのですね」

「ああ、お陰さまでな」

あれから、マーリンとシロマとも別れを告げた。

「それと、これだ」

アンから受け取った草薙剣を神に見せる。

「どうするのですか?」

「これは元の世界に戻しておいてくれ、これは、あの世界に必要な物だから」

「分かりました」

俺の手から草薙剣が離れ空中に浮き上がる。

そして、剣は光に包まれ消えた。

「これでいいですか?」

「ああ、大丈夫だ」

俺が手を加えた剣だ、時空にのって確かに元の世界に戻った事を感じた。

「それじゃ、できるだけでいい、あいつらを見守ってやってくれ」

「分かりました」

神はゆっくりと頷く。

「それじゃ、元気でな」

「うん、お父さんも元気で」

「お父さんじゃないんだけどなぁ」

俺の呟きにアンはあっかんべーをする。

「マーリンもシロマも元気でそして、アンの事頼んだ」

「ええ、分かったわ」

「分かったがぅ」

マーリンもシロマも笑顔で答える。

これから先、アン達がどうなるかは俺には分からない。

でも、アン達ならこれからもきっと大丈夫だ。

俺はもう一度、3人を見る。

楽しかった、本当にとても有意義な時間だった。

俺は手を上げ『転移』のスキルを発動させる。

まだ見ぬ誰かを助けるために。

これにて麒麟児完結となります。

この章に入ってまさかの5ヶ月ここまで長くなるとは思っていませんでした。

途中かなり休んでいた時もありましたが、なんとか書き終えてよかったです。

長々とお付き合いしていただいた皆様ありがとうございました。

次は恒例の後日談、主要キャラだけになりますが、キャラ紹介を入れて、新たな章へと続きます。

それではまた、次回に

本当にありがとうございました。

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