表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移無双  作者: 天野 空
第五章 麒麟児
53/186

麒麟児~神の塔の釣り人~

クエスとラビリンスの試練を突破したクロノ。

次なる階層に行くために、もう一度赤い屋根の扉を開く。

そこには今まで見たこともない景色が広がっていた。

扉をくぐった先は先程とは違う部屋だった。

広さは俺達が十分寝れるくらいの広さ。

ソファーやベッド、タンスなどの一通りの家具はある。

ただ、その部屋の特徴は合計で6ヶ所の出入り口がある事。

全部扉はついていなかった。

「お、ようやくここまで来たのか」

正面の出入り口の外から声が聞こえた。

俺はアン達の方に頷く。

アン達も理解したのだろう、俺の後について出入り口を出た。


出た瞬間、俺達は言葉を失った。

どこまでも広がる雲、いや、雲海か。

それは今まで1度も見たことのない光景だった。

「驚いてるな」

そんな俺達に建物の縁に座って釣糸を垂らしている男性が声をかけてきた。

「ここも塔の中なのか?」

「いや、俺が管理している階層は部屋と回りを囲う通路だけさ」

そう、俺達が部屋から出たところはバルコニーのような感じにスペースがとられていた。

しかし、その他は全て雲ばかりだ。

「始めまして、俺はフィッシュだ」

「アングラーじゃないんだな」

俺の言葉にフィッシュは笑う。

「ああ、どちらかというとフィッシャーマンだからな」

「なるほど、やはりここは俺が大昔にいた場所に縁があるのか」

「さぁな」

俺の言葉に笑いながらとぼけるフィッシュ。

「さてと、あんたらにはここである魚を釣ってもらう。

それが試練だ」

「魚釣りか」

「そそ」

フィッシュの後ろから、1つのロボットが現れる。

「そいつから釣竿を受けとりな」

ロボットは俺達一人一人に釣竿を手渡し、また部屋へと戻った。

さっきまで部屋にいたかな?

「あれは釣った魚を下に届けるやつだから、空間を移動してる。

用事がない時は別の場所で待機してるよ」

俺の疑問をぬぐうようにフィッシュが教えてくれる。

「さて、今から釣る魚と釣り方を教える」

「えっと、釣るってこの雲で?」

みんなの疑問をアンが代表する形で聞いた。

「ああ、もちろんあんた達もこの島に来たんなら食った事あるだろう」

ん?俺は記憶を探った。

「ああ、もしかして雲魚」

アンが嬉しそうに声をあげる。

そういえばブレイスで食べためちゃくちゃ旨い魚があったな。

「やっぱり食べた事あるじゃないか。

そう、それだよ。

俺はここでその雲魚を釣って下ろしてるんだ」

「じゃ、俺達が食べたのはフィッシュが釣った魚か?」

「ああ、あれは俺以外釣るやついないからな。

ま、1日釣って百匹くらいだから食べれたなら運がいいな」

「1日百匹も釣ってるんだな」

素直に驚く。

「コツさえ掴めば簡単だよ」

そうフィッシュが言った時、沖合いで雲が盛り上がる。

「お、いいのが見れるかもな」

フィッシュの言葉に俺達は盛り上がった雲を見た。

そこから大量の魚が雲海から跳ねる。

「あれが雲魚だ、そして、その後からくるのが」

フィッシュの言葉を遮るように巨大な魚が雲海から飛び出した。

それは巨大な鮫だ。

跳ねた雲魚を喰らい、また雲海へと戻っていった。

「あれが雲魚を食べる霧鮫だ」

「霧鮫?」

「ああ、後は」

おもむろに横にある網を雲に突っ込むフィッシュ。

そして、持ち上げた網には俺の拳ぐらいの虫が入っていた。

なんかキーキー言ってるな。

「う、気持ち悪いかも」

アンがそれを見て素直な感想を言った。

1つ目で足が6本あるそれが

「霧虫だ」

フィッシュが言うにはこの霧虫を雲魚が食べ、雲魚を霧鮫が食べているとの事だった。

「でだ、あんた達には霧鮫を釣ってもらう」

「え?あのデカイ方?」

「そう、定期的に霧鮫を釣らないと雲魚が減っていくんだよ。

なんせ霧鮫の天敵がいないからなぁ

それであんた達には1人一匹霧鮫を釣ってもらう。

1人一匹のノルマだから、1人が何匹釣ってもダメだからな」

「えっと、この竿で大丈夫なのか?」

俺は持っている竿を見る。

フィッシュが持っている竿とあまり変わらないように見えた。

「ああ、大丈夫。雲魚や霧鮫は引く力はその大きさに比例してるが吊り上げたら軽いものだよ

それにその竿見た目よりずっと頑丈だしな」

「そういうものか、餌はどうする?」

「もちろん雲魚を自分で釣ってそれを餌にしてくれ、霧虫は雲にこの網を入れたらすぐに捕まえられるからな」

そして、またどこからともなくロボットが来て、俺達は網を受け取った。

「ま、初めはキーキーいって気持ち悪いかも知れないが慣れれば平気だよ」

フィッシュはそういうと糸の先のアームみたいなところに霧虫を挟む。

「針はないんだな」

「ああ、このアームが雲魚の口に入ると開いて取れなくなるんだよ」

「なるほど」

俺は糸の先のアームを見る。

「なんで釣れたらほぼ引き負けないかぎり釣れる」

「引き負けたらどうなるんだ?」

そう聞くとフィッシュは笑いながら「塔の下まで落ちる」と答えた。

何気に怖い話なんだが…

「さて、今日は霧虫に慣れるところから始めようか、釣った雲魚は今日の飯にすればいい」

フィッシュのその言葉を聞いて、俺達は素直に喜び釣りを開始した。

アンも最初はいやいな触っていた霧虫だったが、雲魚が釣れる度に慣れてきたのか、夕暮れ時には後ろにいつの間にか置かれていたバケツ一杯に雲魚を釣っていた。

「ここは日暮れがあるんだな」

釣りも一段落し、部屋でロボットが今日の釣果を料理している時、俺は外を見ながら言った。

「ああ、俺の好みでな、外と同じように朝や夜がくる。

ま、その方が魚達も育ちやすいからな」

「霧鮫は釣ったらどうするんだ?

食べるのか?」

俺は隣で酒を飲んでいるフィッシュに聞いた。

フィッシュはもう1つ酒の入った器を俺に渡してきた。

「いや、霧鮫は食べれないな。

釣ったら霧散して消えるからなぁ」

「なるほどね」

フィッシュから受け取った酒を飲む。

お、すっきりしたいい口当たりだ。

「刺身に合うぞ」

フィッシュは笑顔で言った。

「ご馳走できたよ」

部屋の中からアンの声が聞こえる。

「さて、飯にするか、明日からは本格的に霧鮫狙ってみなよ」

フィッシュはそういいながら部屋に入っていった。

俺は雲に隠れていこうとする夕陽を見る。

この風景もそう長くは見れないんだろうな。


「おっはよう」

雑魚寝で寝た翌朝、俺達は準備を整え釣竿と網を持った。

昨日夜にフィッシュに聞いた空船に乗り込み、俺達は雲海に出ることにした。

運転はお世話してくれるロボットだ。

「今日から本格的に霧鮫を狙うぞ」

「お~」

俺達は早速霧虫を捕まえ釣糸を垂らす。

すぐさまヒット。

手応えは十分、引きも強かった。

「お、大物」

昨日に比べて一回り大きい雲魚を釣り上げる。

他の仲間達も大きいようだ。

たしか、フィッシュも言ってたな、沖で釣った魚は大きいって。

「よし、次はこの魚をアームに着けて」

「キケンキケン、タイヒシマス」

ロボットが急に騒ぎだし方向を変える。

目の前には初日に見た雲の盛り上がりが。

来るのか。

俺は空船の後ろ側に移動する。

盛り上がりから多くの雲魚が飛び出してきた。

近くで見ると今釣った雲魚よりさらに大きい。

そして、よりいっそう盛り上がりが大きくなった後、その巨大な魚が姿を表した。

霧鮫だ。

一口でたくさんの雲魚を食べ、そしてまた雲に戻る。

音はしないがその迫力は凄かった。

「危ないとこだったね」

隣に来ていたアンが言った。

確かにあのまま行くと霧鮫に食べられていたかもしれないな。

「出発前にフィッシュが気を付けろって言ってたのはこの事だったようね」

ノームも今は静かになった雲海を見る。

「あぶなかったぁ」

モグモグ。

釣ったそばから食べるなシロマ。

「ま、何にせよ、俺達はあれを釣らないといけないからな、案外先が思いやられるな」

それから、俺達はおのおの釣りをしたが結局霧鮫は釣れず、大量の雲魚を持ってフィッシュの元に戻った。

自分達が食べるもの以外はロボットがどこかへと運んでいく。

今日は雲魚の焼き魚だそうだ。

さて、明日こそは釣ってやる。


あれから3日。

初めて霧鮫を釣ったのは意外にシロマだった。

釣ったといえばいいのか、昼ご飯を食べず粘っていた船釣りで、雲の盛り上がりに合い、俺達はいつものように待避した。

しかし、お腹がすきすぎたのか、盛り上がりから飛び出てくる雲魚にシロマが船から飛びだし、捕まえようとした。

そこに霧鮫が現れ、シロマごと食べてしまったのだ。

あの時は、危うく俺の全スキルを解放しそうになったが、すぐに反対になった霧鮫が浮き上がってきて、そのお腹にシロマが立っていた。

話によるとお腹まで飲み込まれたシロマは外に出ようとお腹を突き破ったらしい。

シロマが、空船に乗り込んだ後、霧鮫は霧散した。

フィッシュに話すとそれでもOKと言うことで、シロマはノルマ達成となった。

ただ、フィッシュから後で「釣り以外でやるのもいいけど、霧鮫以外には被害のないように」と釘をさされた。


それから、俺達は話し合い、ある方法を思い付く。

俺のスキル『空中浮遊』を使えば、空船に乗り込まずに沖にいける。

そこで雲の盛り上がりを見つけ、霧鮫が飛び出てきたところを仕留めるというものだった。

作戦初日、俺はアンをお姫様抱っこして『空中浮遊』を使って盛り上がりを探した。

何故か照れまくりのアンだったが、作戦通り雲海から飛び出した霧鮫を「一閃」を使って撃破。

無事にノルマを達成する。

その夜の食事の時にアンはみんなに「また、やりたい」と何故か照れながら報告していた。


次の日、ノーム。

やたらと、出発前に躊躇していたが、アンに説得され昨日と同様にお姫様抱っこをする。

ノームは終始こちらを見ようとせず、たんたんと ブラックイレイザーを構えて、雲海から飛び出た霧鮫を撃ち抜いていた。

その夜、食事時。

アンにどうだったと聞かれたノームは一言「いい思い出になった」と答えていた。


そして、次の日。

なぜかシロマをお姫様抱っこして『空中浮遊』する事になった。

シロマが言うには「みんなしてもらってるのに仲間はずれだ」と言うことだった。

しばらく『空中浮遊』で移動した後、盛り上がりを見つける。

雲海から雲魚を追って霧鮫が飛び出してきた。

俺は昔『コピー』した『眼力熱射』を発動。

いわゆる目からビームだ。

無事に霧鮫を霧散させ、みんなの元に戻った。

最後の夜。

「まさか、あんな方法をとるとはね」

雲魚のムニエルと旨い酒をいただきながら、フィッシュがぼやく。

確かに霧鮫釣ってないからなぁ。

「ま、あれもいわゆる釣りなのかもしれないな」

なぜが、ため息混じりで納得するフィッシュ。

「さて、これで全員試練合格だ、おめでとう。

次は最後の試練になる」

「次が最後?」

「ああ、俺達神人は全部で9人、最後の階層は神が住むところだからね」

「そっか、とうとう」

俺はぽつりと呟く。

「ま、それぞれいろいろと思うこともあるだろうけど今日はぐっすりとお休み」

そう言われ、俺達は楽しく食事をした後、なぜかアン達4人一緒に寝ることになった。

ま、こういう機会ないだろうし。

でも、寝れないぞこんな状況。

残り2話。

ラストスパートで書かせてもらっています。

今まで待っていてくれた方(いるのかなぁ?いたらいいなぁ)

新規で読んでくださってる方、最後までお付き合いくださいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ