麒麟児~神の塔の畑~
とうとう目的の場所に着いたクロノ一行。
そびえ立つ神の塔に挑むクロノ達は無事に最上階にいる神に出会うことができるのか?
この世界の神の住む塔。
やっとここまで来たな。
俺は塔を見上げた。
てっぺんは雲に隠れて見えないが、ゴールはもうそこまできている。
「お師匠さま、ここに雲魚がいるんだね」
アンはすっかり目的が変わっている。
アンの横で頷かないシロマ。
「宿の主人が言うには、この塔の10階ずつに神が初めて作った神人が門番としていると言うことだったよね」
ノームが横に来て聞いてくる。
「ああ、その門番に認めてもらったら上がれるって言ってた。
それじゃ、塔の攻略といきますか」
「お~」「ええ」「がぅ~」
「それじゃ始めにアン、賢者の杖を持って扉の前に行ってくれるか」
「わかった」
アンは賢者の杖を持ち、塔の扉の前に立った。
淡い光が扉からアンに降り注ぐ。
門はゆっくりと開いていった。
「なるほどね、神器が門を開ける鍵になってるわけね」
「ああ、出発前にウォーサンから言付けがあってね、門まで行ったら神器を見せればいいって」
俺達は開いた門をくぐる。
入ったと同時にまたゆっくりと門が閉まっていった。
塔にはいるとそこは見渡す限りの平原だった。
外から見た塔の大きさからは考えられないくらい広い。
「しばらく歩いてみるか」
俺はそうアン達言うと、アン達も同意見か頷き歩き始めた。
いつまでも続く平原と思いきや、しばらく歩くと景色が変わった。
「これは畑?」
ノームが座って土を触る。
確かにさっきまで平原地帯だったが、ここからは作物を作る畑になっていた。
「あ、あっちは稲じゃないですか?」
アンの言った方を見ると確かに稲が実っている。
よく周りを見るといたるところで作物が作られていた。
ふと、ある畑を見た時に何かと目が合った気がした。
「あ、かかしだ」
アンも見つけたのか、かかしの方を指差す。
するとかかしは一目散に逃げていった。
「え?」
何がおきた?
かかしって逃げるものなのか?
「お師匠さま、逃げた」
「お、追いかけろ」
俺達はかかしが逃げた方に向かって走り出した。
だいぶ畑の間を走ったか。
かろうじて視界に捕らえてはいるが、こちらも全速力で走っているのに、めちゃくちゃ早いなあのかかし。
そのかかしの前側に人、いや、かかしか?
何体ものかかしがいた。
その中に1人だけ他と違った形のところに、逃げているかかしが行き、何かを伝えてるように見えた。
「もう少しだ」
俺の言葉にアン達は頷く。
ほどなく、俺達はかかしの集団に合流した。
それぞれ違った形のかかしがいたが、この中で明らかに違う形いや、かかしじゃないモノが混じっていた。
人だ。
俺達は息を整えながら、その人を見た。
何かかかしに聞いたのだろう、鍬を肩に担いでその人物は近づいてきた。
「初めまして、いやはや、珍しいねここに来る人は」
にこやかに笑いながらその人物は挨拶をしてきた。
「私は神人のそうだなぁ、ハタケとでも呼んでくれ」
「ハタケ?」
「ああ、我々、神人は名前がなくてね、畑を耕してるからハタケでいいよ」
「はぁ」
気さくに笑うそのハタケを見て俺達は息を整える。
「で、君達は何をしにここに来たんだい?」
俺はハタケに神に用事があって来たことを伝えた。
「なるほどね、神器を返しに来たのとお願い事をしにね」
ハタケは頷きながら俺の話を聞いていた。
「えっと、ちょっと質問が」
アンが隣からハタケに声をかける。
「ん?なんだい?」
「ここって塔の中なんですよね?
なんか外から見たのと広さが違うようなんですけど」
「ああ、ここは塔の形をしているけど、入った瞬間に異空間に繋がっているからね。
一応、階層には分かれてはいるけど。
外でも聞いた通り私はこの10階までを管理してるよ。
1階から3階、4階から6階、7階から9階でこの島の農作物を私とかかしで育てている。
で、最上階が私の私室になっている。」
「どうすれば、ここから上の階に行ける?」
俺の問いに少しハタケは考えた後、かかしに何かを伝える。
程なくかかしは四本の鍬を持ってきた。
「そうだね、これで今から案内するところに畑を作ってくれるかい?
新しい畑を開拓しようと思ってて」
「分かった」
俺の返事に笑顔で頷くと、ハタケは俺達をその場所へと連れていった。
ま、空間移動でだけど。
「ここがその場所だよ」
辺り一面、岩や小石が広がっているが草は生えている。
大地には栄養がまだあるようだ。
「岩や小石が多くてね、土地は痩せてないから作物は育つと思うのだけど、手が足りなくて。
では、よろしく」
そういうとハタケの姿が消える。
「あ、そうそういい忘れてた」
すぐに空中に現れるハタケの上半身。
中途半端に出てくるのやめてください、アンが思わず斬りかかりそうになってるから。
「畑なんだけど、向こうに木があるでしょ?」
普通に見ても見えないので、『千里眼』を使う。
ああ、ある。
「奥はそこで左右は川があるからその手前ぐらいまでを畑にしてほしい」
『千里眼』で左右を見る。
確かに川がある。
「ま、すぐには終わらないと思うから後ろにテント用意してるからそこで休みながらしたらいいよ」
さすがにテントは『千里眼』を使わなくてもすぐそこにあった。
「じゃ、よろしく」
「はぁ」
あまりに広大な畑を作るように言われたような気がする。
「あ、そうだってうわぁ」
アンの神木刀がハタケの顔に当たる寸前で止める。
だから中途半端に出てくるなって。
「ああ、びっくりした」
いや、こっちもだよ。
上半身だけ空間から出すなよ。
「ちなみにこのくらいの畑ならうちのかかしは3日でやってしまうから、それ以内でやるのが試験って事でよろしく」
一方的に告げた後、ハタケはその後出てこなかった。
さて、どうしたものか。
スキルや魔法等を使ってやれば1日でやれないことはないけど、鍬を渡されたしなぁ。
それに所々にあるあの緑色の大きな岩が気になる。
「クロノ、あの大きな緑の岩、何か感じない?」
ノームも同じ事を考えていたようだ。
「ああ、なんかあの周りにある草がやたらに成長がいいんだよな」
「あの岩から大地に栄養が送られてるよ」
「え?」
俺とノームの声がはもる。
いつもはアンと一緒にはしゃいでる事の多いシロマがにこにこしながら言った。
「私の住んでた森にもあの岩はいくつかあったよ、神緑岩っていって大地に栄養を与える岩なんだ」
「なるほどね、あれは砕けても栄養を送るのか?」
シロマに聞いてみる。
「うん、砂のようになっても栄養は与え続けるみたい」
やはり、いつもの行動からは予想もつかないほど博識だった。
「なら、やることは決まったな」
俺はアン達にこれからの予定を伝えた。
まずは、神緑岩を粉々に破壊する事。
これは手分けをすれば1日もかからないだろう。
その後、俺が風の魔法でその粉々なった神緑岩を畑になる場所に広げる。
そして、手分けして鍬で大地を耕す。
ま、これも魔法で体力や筋力等を強化すれば早く終わるだろう。
「じゃ、まずは岩破壊からだ」
「かなりの強度だから本気でかかった方がいいよ」
シロマの忠告に返事をして、俺達は手分けして岩破壊に向かった。
俺は神緑岩の前に立っていた。
手で触れてみる。
確かに外に向けて何かしらの力を発していた。
それと同時に簡単には砕けない強度も感じる。
「さてどうしたものか」
軽く岩を叩きながら考える。
ただ割るだけ、切り刻むだけならできるけど、自分で言っててなんだけどこの強度を砕くのは骨だなぁ。
俺は自分の持つスキルを探る。
「まずは『金剛腕』」
自分の腕の強度を高め神緑岩に打ち込む。
バカーンといい音がなって岩は真っ二つに割れた。
岩を触る。
確かに割れても力は発しているようだ。
しかし、目的の粉々にはなってはいない。
岩を触ったままスキルを使った。
『タイムリバース』
触れた物を数十秒前に戻すスキル。
神緑岩は割れる前の姿に戻った。
次は『重力』
砕けずペチャンコになった。
剣を抜き『光速剣』
光の速さで切りつけるが、やはり粉々にはならない。
『爆砕』
岩を殴った瞬間に爆発が起きる。
確かに岩は砕け散ったが、粉々にはならない。
ということは『振動』そして、『波動』2つのスキルを重ね、岩を拳で打った。
そのスキル通り、振動は波動となって岩を巡りそして、神緑岩は静かに砂になった。
「よし、これで行けるか」
俺はすぐさま次の岩へと向かった。
一通り砂に変えたこと、お腹が減ってきたので、テントに戻った。
そこには他の面々も集まっていた。
「調子はどうだい?」
俺の言葉に皆は笑みで答える。
それぞれ独自の方法で砂に変えたみたいだ。
技の練習や新しい技を覚えたらしい。
俺達は腹ごしらえを終えた後、少し休憩をとった。
さて、次の工程は俺だな。
俺はキャンプの近くの見晴らしの良い場所に立つ。
『魔力強大』『無詠唱』『範囲拡大』ぐらいかな?
スキルを発動し、言葉を放つ。
「エターナルサイクロン」
言葉と同時に、畑にする場所に凄まじい嵐が起きる。
大地には影響がでないように調整しながら、砂となった神緑岩を
広げた。
魔法が終わった後、俺達は鍬を持つ。
体力増強と俊敏アップ、筋力増強等の補助魔法をみんなにかけた後、それぞれ持ち場を決めて、畑を耕しに出た。
「ふぅ、終ったか」
キャンプに集まって畑を見る。
あれから2日目の夕方には、作業が終った。
やはり、鍬で畑を耕すのは骨がおれる。
「ま、それでも早かったよ」
ガシ
ハタケの顔面に鍬が当たる瞬間に止める。
これはわざとだろアン。
ニコニコしているアンを目で注意した。
ハタケも動じておらず、笑顔だった。
「お陰で島のみんなに配る野菜のレパートリーが増えるよ、ありがとう。
これでこの階層の試験は終わり、次の階層に続く階段がある10階に案内するよ」
ハタケが手を振ると一瞬でどこかの家の中に変わった。
へぇ、魔力も何も感じさせずに空間移動か、やっぱり神の力って事かな?
アン達が辺りを見回していると、奥から1人の女性がお茶を運んできた。
「奥さん?」
アンの言葉にその場に座ろうとしていたハタケが笑う。
俺達もハタケにならってその場に座った。
笑顔でお茶を置いていってくれる女性は、配り終わり、ハタケの隣に座った。
「奥さんじゃないよ、彼女は次の階層の守り人」
「はじめまして、次の階層を守ってる神人です。えっと、名前?って言うのがあった方がいいんでしたね、そうですねユウと読んでください」
「ユウですか?」
俺が聞き返す。
「ええ、昔来た方に優しいからと言われ、そう呼ばれた事があるので」
笑顔でユウが答える。
「分かりました、ユウさん」
アンも笑顔で答えた。
しばらくこれまでの冒険や雑談をした後、ハタケがユウに何かを伝える。
ユウも頷き立ち上がった。
「さて、そろそろ行きましょうか」
俺達はユウの言葉に頷き、ハタケにお礼を行った。
「奥の階段から上に行けるよ」
ハタケの指差す方に上に続く階段が見えた。
俺達はユウを先頭に階段を上がっていった。
長らくお待たせしました。
次はもう少し早く更新できると思いますので、お付き合いお願いします。




