麒麟児~神の住む島ライフ~
ウィンブブの背に乗ったクロノ達。
目的の神の島は目の前に迫っていた。
「そろそろ、見えてくるよ」
ウィンブブの声に俺達は夕暮れの中、洞穴から外を見た。
強い風の中、だいぶ近くに大きな雲の塊が海に浮かんでいた。
「あれが、神の住む島ライフか」
「私も初めて見る」
俺の横でノームが言った。
クリスが言ったような霧ではなく濃い雲に覆われた島。
どうやって入るんだ?
「それじゃ、いくよ」
ウィンブブはそう俺達に伝えた後、その大きな口を開き、空気の塊を雲に放った。
すごい轟音を鳴らし空気の塊は雲を貫いていく。
ウィンブブはその穴を通るように雲に突っ込んだ。
視界は悪い。
ほとんど雲のせいで前が見えない。
俺の手や体を誰かが掴んでいるのが分かるくらいだ。
「大丈夫か?」
轟音の中、いるであろうアン達に声をかける。
その声に、掴まれている場所に力がこもる。
飛ばされてたりはしてないみたいだな。
次第に視界が戻ってくる。
そして、目の前が光に包まれた。
「着いたよ、神の島ライフに」
ゆっくりと地面に降りながらウィンブブが伝えてくる。
さすがに神の島だからなのか、丁寧だな。
俺達はウィンブブから降りて神の島に立った。
しかし、さっきまで夕暮れだったのにここは昼間のように明るいな。
「ここは外とは違うからね」
俺の疑問にウィンブブが答える。
頭の中をよんだのか?
「ここは一年中明るいよ、寝たくなったらほら、あの塔の向こうに行けば暗いから寝れる」
ウィンブブの言うとおり、島の中心にあるであろうとてつもなく高い塔の向こう側は夜のように暗かった。
「それじゃ、僕は帰るね、神器は君らが渡しといてよ」
「え?お前も行くんじゃないのか?」
「いやぁ、めんどくさい」
そう伝えてくるとウィンブブはゆっくりと舞い上がり、来たときと同じように雲に突っ込んで行った。
「本当にずぼらかよ」
「ねぇ~」
俺の言葉にアンが合意の声をあげた。
「仕方ないですよ、ウィンブブ様はあまり動きたくない方ですから」
「え?」
背後の声に俺は振り向く。
そこには白いワンピースのような服を着た女性が立っていた。
「初めまして、神徒のイイラと申します。
ウィンブブ様がお越しになられたみたいだったのでお迎えに来たのですが」
「ああ、ウィンブブの使命は俺が受け継いだよ」
神徒と名のるイイラに賢者の杖を見せる。
「なるほど、分かりました。ようこそ神の島ライフに」
彼女は深々と頭を下げた後、笑顔をこちらに向けた。
「今からこの島唯一の町にご案内しますね」
俺達はイイラに連れられ町へと向かった。
道中イイラからいろいろと話を聞いた。
今から行く町は神が作った町ブレイス。
中央にそびえる塔の頂上に神が住んでいる。
あの塔に住んでいるのは神が作り出した神人、そして、神人から生まれた神徒がこの島に住んでいる。
この他の大陸に住んでいるのは、悪魔達と外に出た神徒の子孫だそうだ。
この大陸に住んでいる人達はすごく寿命が長く、彼女イイラもかれこれ300年以上は生きているらしい。
しかし、見た目は二十歳前後なんだけどなぁ。
外とは食べるものが違うらしく、そのおかげで長生きしているようだ。
「ほら、見えてきましたよ」
丘を登ったところで、町が見えた。
特に城壁で囲まれている感じがないのは外敵がいないからだろう。
しかし、だいぶ歩いてるけど全然疲れないな。
「なんで疲れないんだと思ってるでしょ」
「ええ、なんで分かったの?」
イイラに聞かれアンがびっくりする。
同じ事を考えたのか。
「この島の空気には神の力が少しですが混ざっているんです、そのせいで歩くくらいなら疲れたりしないんですよ、ちょっとの傷もすぐに治りますし」
ずっと回復魔法をかけられてるみたいなものか。
そして、しばらく歩いて俺達はブレイスに着いた。
町は思ったより活気に満ちており、道には人がたくさん歩いている。
露店もたくさん並びいろいろな物が配られていた。
「ここに通貨とかはないのか?」
「ええ、働いている人は暇をもて余してる方達ばかりです、われわれはそこまで食事をしなくても生きられますから」
なるほどな、それに他に町がないなら競争もないのか。
「それに食材は自然から手に入りますし塔からも届きます、衣料品も塔から配給されますので、案外可愛い物も来るんですよ。
それで配給された服が合わないなと思うなら露店で物々交換すればいいですし」
なるほど、それで服屋のようなものもあるのか。
「クロノさま達は塔に登られるんですよね?」
「ああ、そのつもりだよ」
「でしたら、塔の向こう側の夜の帳で休まれてから行かれるといいと思います」
「夜の帳?」
「はい、塔の向こうの暗いところです、あそこは一年中暗いので寝るには1番ですよ」
「そうか、ありがとう」
「いえいえ、それでは、また」
イイラはそういうと俺達と別れた。
「さて、どうするかだけど」
「お腹すいたよ」
アンがぼそっと横で言ってくる。
「がぅ~」
シロマも空いたのだろうお腹をさすっていた。
「そうだな、何か食べてから夜の帳で休んで塔に挑戦するか」
「やった~」
アンとシロマは喜んで跳び跳ねる。
その横でノームも密かに拳を握っていた。
ノームもお腹減ってたんだな。
俺達は近くの露店に顔を出した。
暖簾には雲魚とかかれている。
そこで俺達は雲魚と呼ばれる雲の中を泳ぐ魚を食べた。
焼いた雲魚は、柔らかくホクホクしていた。
刺身は噛んだときには少し抵抗があったが、噛みきると口の中で溶けるように感じだった。
雲魚は塔の上の方にある特殊な雲で連れる魚で釣れたてはもっと美味しいとの事だった。
神に会う以外に目的が1つ出来たな。
その後、俺達は夜の帳に向かった。
そこはホテルのような建物が多く並び、入り口では案内人が空いてる部屋を教えてくれた。
もちろん風呂もあり、ゆったりと入った後、俺達は旅の疲れをとるために仮眠?をとった。
「さぁ、今から塔攻略だな」
俺達は仮眠?を十分にとった後、塔の前に立っていた。
「ようし、塔を登って釣りたての雲魚食べるぞ」
「がぅ~」
「いや、違うって」
若干、目的が変わっている仲間もいるが、とうとうこの場所まで来た。
この塔を登れば神とご対面だ。
俺の願いを聞いてくれるかどうか登って確かめないとな。
とうとうラストステージ。
神への塔攻略です。
長くお付き合いさせてもらっているアン編も終わりに近づいています。
もうしばらくお付き合いくださいませ。




