麒麟児~研究所の悪魔~
潜入した研究所でシロマが地下室の階段を見つける。
地下室でクロノ達が見つけたのは
「お師匠さま、誰もいないみたいだね」
予想と反して静かな研究所内にアンは気配を探るようにしながら横をついてきている。
シロマもノームもいつでも戦闘できるように準備をしているが、その気配はない。
「そうだな、この先に大きな部屋があるがそこにも誰もいないみたいだ」
『サーチ』のスキルで建物内をある程度把握できるが、本当に何もいない。
ここに反乱者がいるはずだがどういう事だ?
一応、注意しながら先に進む。
鉄の扉が目の前に現れた。
さっき感じた部屋の入り口か。
やはり、中を『サーチ』するが何もいない。
俺はゆっくりと扉を開く。
中は広々とした部屋だった。
部屋の真ん中には筒状の透明な壁の中に台座が置かれていた。
台座には何もない。
たぶん、この台座に賢者の杖が置かれていたのだろう。
筒の周りには散乱した机や椅子、そして、資料が落ちていた。
ざっと確認したところ、資料には賢者の杖の運用記録と動作確認等の記録が書かれていた。
「クロノ、ここにはいないようね」
「そのようだな。しかし、一本道だったし、当たりはクリスの方か」
「がう、ここに何かある」
シロマが中央の台座の裏を叩いていた。
俺はシロマの側に行き、床に手を当てる。
確かに、『サーチ』すると下に続く階段があるようだ。
床の周りを探ると、スイッチのように床を押し込める場所がある。
押すとゆっくりと床が横に開き、階段が現れた。
「下に隠れてるわけね」
「行くか」
「はい、お師匠さま」「がう」
俺達はゆっくりと階段を降りた。
階段は淡い光で踏み外す事なく降りていけた。
目の前にまた扉がある。
中には確かに何かいる。
「当たりのようだな」
俺の言葉にみんなは武器を構える。
俺はゆっくりと扉を開けた。
そこは先ほどの空間よりまだ広い部屋になっていた。
部屋と言っても、冒険ギルドにある試験会場ぐらいの広さだ。
たぶん、戦闘実験等を行う場所なのだろう。
その部屋の中央に今回の首謀者が座っていた。
上から持ってきたのか?
大層なソファーに座っている。
「やぁ、来たね」
その男は座ったままこちらに声をかけてくる。
だいぶ離れているはずだが、声は鮮明に聞こえるな。
「上でうろうろしていたのは分かっていたよ、いつ来るのか待ってたけど、案外遅かったね」
くくっと笑う。
「さて、君達が潜入してきたという事は、かなり強いんだよね?
これでやっとまともな戦闘データがとれそうだよ。
さっきの騎士団じゃ、戦闘にもならなかったからね」
先行部隊の事を言っているのだろう。
賢者の杖を自分の力だと勘違いしてる。
動かすのにも大量の魔晶石が必要なはずだ。
単に動かすスイッチを入れるような感じだけなのに、さも自分が使っているように思ってるんだろうな。
「ご託はいいから、かかってこいよ」
俺は呆れたように椅子に座ってるやつに言った。
俺の態度が気にくわなかったのか、あからさまに顔つきが変わる。
なんだ、ただの小物か。
俺がそう思いながら見ていると、アビルズの背後の空間が揺らぎ始める。
へぇ、少しは楽しそうなやつが出てくるのか。
空間の揺らぎが収まると、そこには赤と青のいかにも悪魔ですというような存在が現れた。
たぶん、
「そんな言葉すぐに後悔させてやるよ。
この火の悪魔と水の悪魔の力を使ってな」
だろうな。
自分の力でとかじゃないのか。
「それだけか?」
俺は挑発するように声をかける。
「なに?」
「伝説の神器なんだろ?なのに悪魔2体だけか、呼べるの?」
俺の言葉にノームが苦笑している。
それを見てアビルズがあからさまに怒った顔をした。
「侮辱するな!いいだろうその言葉、後悔させてやる」
「さっきも聞いた」
頭から湯気が出そうに怒ったアビルズは、賢者の杖に力を込める。
俺はそれを見て魔力の流れを探る。
なるほどな、この空間の下にもまだ部屋があるのか、そこに溜め込んだ魔晶石を集めて魔力を吸いだしてるわけか。
アビルズの後の空間が先程より大きく揺らぐ。
そして、5体の悪魔が姿を表した。
見た目はほぼ同じ、違うといえば色ぐらいか。
「クレヨンみたいだな」
俺がボソッと言った言葉に、アビルズが訳が分からない声をあげる。
怒りやすいやつだなぁ。
「もういい、行け風の悪魔。
あいつ等を滅ぼせ」
アビルズの言葉に、緑の悪魔がこちらに向かって飛びかかってきた。
ま、本物に比べればどうという事はないか。
そこに一瞬で何かが俺の横を通りすぎた感じがした。
緑の悪魔の前に突如現れる。
チャイナ姿の女性。
2発の両手の打撃を悪魔にあびせ、その手を開き悪魔に当てる。
「双龍剛波掌」
悪魔が身震いした後、静かに塵に変わった。
「ごめんなさい、遅くなってしまって」
悪魔を一瞬で塵にした女性はこちらに振り向き、笑顔で言った。
「本当にクリスは早すぎる」
俺達が降りてきた階段から、ラウが姿を見せた。
「いやいや、今から始めるとこだったんだけど」
「な、なんだ、最強の7大悪魔だぞ」
俺の声を遮り、アビルズが大声を出す。
ま、確かに余裕だと思ってた相手に一撃でやられたらなぁ。
「く、くそう、まだ、もっとだ。
神の杖よ、魔力をもっと俺の悪魔達に与えろ」
アビルズが杖を掲げると地下から魔力が吸い上げられ悪魔達に送られた。
悪魔達の無表情に笑みが現れる。
魔力を吸収し自我を得たのか?
「そろそろ、けりをつけないとややこしくなりそうだな」
「確かにね」
俺の言葉にノームが答える。
「アンとシロマは土の悪魔を頼む。
ラウとノームは火の悪魔を」
「それなら、慣れたものだよ」
ラウは笑いながらクレイモアを肩に担ぐ。
「またせてしまったか」
俺が指示を出しているところに、階段からショークと騎士団数名が降りてきた。
「お、団長はどうしたんだい」
「団長なら、冒険者達をまとめながらモンスターを殲滅している、私たちは先に援軍に向かえと言われたのでな」
「なら、騎士団はクリスと一緒に雷の悪魔を頼む」
「了解した、みんな仲間の分もやってやるぞ」
「おお~」
「クリス、フォロー頼んだ」
「分かりました」
騎士団に聞こえないように小声で耳うちする。
「さて、後は光と闇は俺がやるとして、残りは水か」
そろそろ、相手の魔力のチャージも終わりそうだが。
「なら、私がお相手しましょうか?」
その言葉に階段へとみんなの視線が集中する。
声の主はゆっくりと階段を降りてきた。
薄い青色の髪、いや、全身が薄い青だ、肌の色さえも。
違うと言えば、目の色だけが濃い青色の宝石のようだった。
皆が誰なのか分からないようだったが、俺にはその雰囲気に心当たりがある。
「あら、誰か分からないみたいですね」
青い存在は小さく笑う。
「そうですね、みなさんに分かりやすくいうと、ウォーサンと申します」
「な」
「やっぱり」
「なんだと~」
それぞれ反応が違ったが、1人だけ大声で反応した人物がいた、アビルズだ。
「それとこの肩にいるのが」
「よ、久しぶりだな」
ウォーサンの肩に火の小人が乗っている。
「ファモンです」
その言葉にその場の全員が驚いた。
七大悪魔の2人(本物)がここに現れたのだ、驚くのも無理はないだろうが、アビルズは口をわなわなさせて何か言いたそうだった。
「ある人物から話を聞いて少し気になって来てみました。
ファモンは山のモンスターを抑えるため、本体はこれないみたいで分身体ですが、私はイベントも終わったので直接にね」
俺を見て笑うウォーサン。
これは心強い戦力だな。
「な、なにがウォーサンにファモンだ。
七大悪魔は俺が使役しているんだ、そんな偽物を連れてきてもお前達の敗北は変わらんぞ」
なんかキャラ崩壊してきたな、てんぱってるのか?
「へぇ~その青いのが私ですか 」
俺の横まで出てきたウォーサン、何か声と雰囲気が変わってきてるけど?
「その程度が水の悪魔とは嘗められたものですね」
段々とウォーサンから圧を感じる。
いつの間にか俺の肩に来ているファモン。
「なんでウォーサン怒ってるんだ?」
そっと聞いてみた。
「ウォーサンは自分の力を過小評価されると怒るんだよ、この場合実力がかなり低いアレを自分と言われて頭にきたんだろうさ」
なるほど。
「覚えてた方がいいかもな七大悪魔はそれぞれ逆鱗を持ってるからな」
肩の上で楽しそうに笑うファモン。
こっちとしては真横で圧をあげられて少しだるいんだが。
「ここでは狭いので先に行かせてもらいますね」そう俺に言って、ウォーサンは指を鳴らす。
突然、ウォーサンと向こうの水の悪魔が姿を消した。
空間跳躍か?
スキルなしでやるとはさすが悪魔か。
「お師匠さま」
それを見ていたアンが俺に向かって頷く。
そうだな、本気を出すならここは狭いか。
俺はアンに頷き返し、
「今から場所を変える、それぞれ勝って戻ってこいよ」
俺はみんなにそう伝えると、手の平を叩く。
スキル『バトルルーム』を発動した。
俺とファモン、アビルズと光と闇の悪魔以外、全員がその場から消えた。
俺は『アイテムボックス』から椅子を取り出す。
「な、何をした」
アビルズが怒鳴る。
さっきから声をあげっぱなしだな。
「ここは戦うには狭すぎるからな、それぞれ特別な部屋に移動してもらった。
勝敗が着いたら戻ってくるよ」
俺は出した椅子にゆっくり座る。
そして、手を振り上げた。
4つの大きな画面が頭上左右に浮かぶ。
「な、な、な」
アビルズは驚きすぎて声もでないようだ。
「最強の悪魔を従えてるんだろ?
なら、どっかりその高級なソファーに座って見てろよ」
「う、うるさい。そ、そうだ、最強、最強なんだ」
アビルズはぶつぶつ言いながらソファーに座る。
さて、俺もみんなが自分の力で勝って帰ってくるのを待つか。
次はアン達の戦いです。
それぞれの戦いを別に書いていきます時間軸は一緒なので、どれから読んでもらってもいいように投稿します。
お楽しみによろしくお願いします。




