麒麟児~水の悪魔と緊急クエスト~
討伐クエストも終わり、報酬を受取りに行くクロノ達。
これでまた一歩クロノは目的に近づいた。
しかし、不吉な影がクロノ達に近づいていた。
慰労パーティーが終わった翌朝、俺達は町長邸へ向かった。
昨日言われた報酬を受け取る為だ。
海岸沿いを歩いた先の小高い丘に町長邸は立っていた。
入り口では、メイドに出迎えられ応接間に通された。
「昨日の町長さん綺麗だったね」
アンが少し嬉しそうに声をかけてくる。
「ああ、でも、あれは整いすぎてる気がするな」
俺の言葉に?になりながら出されたアンは飲み物を飲んだ。
さっき飲んだが特に何かされてるような感じはない。
だが、俺の予想が当たっているなら。
「お待たせしましたね」
俺の思考を中断させて、扉から昨日の町長が入ってくる。
昨日も見たが綺麗な髪だ。
町長は机を挟んで俺達の前に立つ。左右にはメイドが一歩下がって立っていた。
「はじめまして、私がこの町の町長、リヴァと言うものです」
すっと手を出される。
俺はその手をとり「クロノとその一行だ」と答えた。
それぞれに自己紹介しなくても向こうは知っているだろう。
「ええ、昨日、貴方のパーティーについては調べさせてもらいましたから、自己紹介は大丈夫ですよ」
リヴァに促されて俺達はソファーに座る。
リヴァも椅子に座った後、飲み物に口をつけた。
「さて、報酬を渡す前に何か聞きたい事はありませんか?」
リヴァは少し笑みを浮かべながらこちらを見る。
向こうも種明かしをしたくてうずうずしてるらしい。
「今までに聞かれた事はなかったのか?」
「ええ、まぁ、冒険者の方は報酬を貰えればそれでいいみたいでしたから、むしろ、貴方みたいに報酬以外の目的でここに来る人は稀です」
リヴァは笑う。
なら、聞こう。
俺の予想が当たっているか。
「リヴァ、あんたが水の悪魔か?」
「え?」「がう?」
アンとシロマがこちらとリヴァを見る。
ノームはなんとなく感ずいてたか?
「ふふ、ええ、そうですよ、私が貴方達がお探しの水の悪魔です」
そう答えたリヴァの雰囲気が変わる。
火の悪魔と良く似た、相手を威圧する気配。
悪魔達は常時『威圧』が発動してるのか?
アン達を見るが、『威圧』は効いていないみたいだ。
「なかなか、私の正体を言ってくれる人いなくて、感ずいていた人は幾人かいましたけど」
「そうかい、なら、俺が何を求めているか分かってるだろ?」
「ええ、神への道の承諾ですね」
「神への道?」
アンが不思議そうに聞いている。
アンには俺の旅の目的を話していない。
まだ、話す時ではないと思っている。
リヴァは察したのか、「わかりました」と答えた後、その事については言ってこなかった。
「他にはありますか?」
「なぜ、あのような茶番を毎年しているのか」
リヴァにノームが質問する。
「そうですね、昔の契約ですかね。
この町がシーランスと呼ばれる由縁は知ってますか?」
「ああ、昔すごい槍使いがいて、海のモンスターを狩りこの町を作ったと言われてるみたいだな」
「ええ、そのモンスターが私なのです」
「え?」
俺達は思わず聞き返した。
「ま、昔はやんちゃしてた時もありまして、そこでその槍使いに説教されてしまって、こうやって町を守る契約をしたんです」
「そうなのか?」
「はい、定期的にモンスターを襲わすのは、この町の冒険者のレベルアップが目的です、やはり町を守るには強い力は必要ですから」
「なるほどな」
「ま、モンスターも私の力で作った人形のような物ですから痛くもありませんし」
しかし、いくら弱いとはいえ、あれだけのモンスターを作り出すとは、相当な魔力の持ち主だな。
「ま、そういうわけであのお祭りはやってるんです」
「お祭りねぇ」
リヴァの言葉に町の賑わいを思い浮かべる。
確かにお祭りみたいだったな。
「それでは、報酬ですが」
「それは、純度の高い魔晶石がもらいたい」
「魔晶石ですか?」
「あるならだが」
「もちろんありますが、いいんですか?
アーテファクトもありますが」
「特に必要ない」
俺の言葉にうなずくアン。
リヴァが後ろに控えるメイドに何かを伝えると部屋を出た。
「そういえば、リヴァって言うのは仮の名前だろ?」
「ええ、本当の名はウォーサンです」
「やっぱりウォーサンも名前が気にくわないのか?」
「火の悪魔ですか、それを言ったの」
「ああ、そうだ」
「でしょうね、火の悪魔ぐらいですよ、いつまでもただこねてるのは」
「そうなのか?」
「一応、この名は神がくれたものですからね、大事にはしておりますよ。
リヴァは対人相手の時に使うものですから、ウォーサンは目立つので」
確かにこの世界では有名な名前みたいだからな。
「失礼します」
先ほど出ていったメイドが頭ぐらいの大きな魔晶石を持って入ってきた。
「今、この屋敷にある魔晶石で一番純度と大きさが大きいものです、これで構いませんか?
他の魔晶石もあったのですが、冒険ギルドからの要請でいくつか譲り渡したので」
「ああそれでかまわない、それにしても大きいな」
「ええ、昔にこの海域を支配していたモンスターを倒した時に手にいれたものですから」
「ん?」
「昔はやんちゃだったと言ったでしょう。
世界の海を渡り歩いてて、強い相手に喧嘩を売ってましたから」
なんか怖いなこの悪魔。
「ま、だいぶ大人しくなりましたけどね」
俺は魔晶石をノームの方に寄せる。
「これはノームへの報酬だ、冒険中手に入った魔晶石はノームに渡す事にしてただろ」
「確かにそうですが、これは多すぎる」
「アンやシロマの面倒も見てもらってるし、パーティーに入ってくれてかなり助かってるからな」
俺の言葉にうなずくアンとシロマ。
「わかりました、預かっておきます」
少し照れながら、ノームは腰のポーチに入れた。
あれも『アイテムボックス』の類いだな。
「さて、少し昼食に付き合ってください」
リヴァは笑顔でそう言った時、部屋の外から誰かが走ってきた。
「失礼します」
息をあげながら、メイドは真剣な顔で部屋に入ってくる。
「どうしたんですか?そんなに慌てて」
「はい、今しがた冒険ギルドより、クロノ様達に至急ギルドに来ていただきたいと伝令が」
俺達は顔を見渡した。
「わかりました、クロノさん食事はまたゆっくりとお相手してもらいますね」
「ああ、せっかくだがゆっくりとは食えなさそうだしな」
俺達は席を立つとリヴァに頭を下げて、屋敷から出た。
屋敷の外には馬車が待っており、俺達が乗り込むとすぐに冒険ギルドに向かった。
勢いよく入り口を開ける。
そこにはいつもの服装のクリスとラウが、真剣な面持ちで待っていた。
「何があった?」
「クロノさん、お待ちしてました、緊急クエストです」
「アルケルから緊急の連絡が入ったんだ」
「クロノさんに前にお話ししていた魔導研究所で事故、いえ、反乱があったそうです」
「反乱?」
「はい、詳しくは飛竜船の中で、特別に速い飛竜船を用意してもらいました」
「わかった」
俺達は急いで飛竜船に乗り込むと、アルケルに向かった。
魔導研究所、確か神器の研究をしていた場所か、嫌な予感がする。
物語も中盤です。
2匹の悪魔から承諾を得たクロノ。
しかし、アルケルから緊急のクエストが舞い込んできました。
果たして、反乱とはなんなのか次回をお楽しみに。




