麒麟児~小と大が立ちはだかる~
何事もなく目覚めたクロノ。
アン達と朝食を食べた後、冒険ギルドに向かうのであった。
そこにはウールス最強の受付嬢達が待ち構えている。
「おはよう」
「あ、お師匠さま、早いですね」
「おはようです」
俺が宿屋のロビーで朝食をとっているとアン達が降りてきた。
ま、昨夜は何もなかったからゆっくりと眠れたので、早く起きれたんだけどね。
シロマが入ってこないか変にドキドキしたし。
「おはよう、もう、揃っているのね」
少し遅れてノームも降りてくる。
俺達は揃って朝食を食べ、冒険ギルドに向かった。
ちなみに朝食に出たウールス鳥の鶏肉サラダは絶品だった。
ウールスにお越しの際はぜひお召し上がりください。
昨日と同様、朝から活気のある冒険ギルド。
アン達を連れて中に入ると昨日より目玉っていた。
確かにアンはスキルに似合う外見だし、シロマも『変化』で見た目は可愛い、ノームもフードを被ってないので美人と見れば分かる。
そして、俺にはなぜか男達の視線が痛い。
「また、会いましたね」
昨日の案内嬢が声をかけてくる。
「昨日はどうも」
「今日はどう言ったご用件ですか?」
「ウェルズ山脈に入る許可書をもらいたいんだが」
その言葉にギルド内がすっと静まりかえる。
「ウェルズ山脈ですか」
案内嬢は静かにそういうとカウンターに案内してくれた。
「少しお待ち下さい、許可書を発行できる受付嬢をお呼びします」
そうして、案内嬢はカウンター奥の扉に入っていった。
「くるぞ、このギルド最強の受付嬢が」
「また、怪我人が出るのか?」
「無謀にも程がある」
何か外野がうるさい。
あの案内嬢だ、最強の受付嬢はどれ程のがたいの強者が出てくるか。
そして、ゆっくりと扉が開いた。
?
誰もいない?
「目線が高いからだと思うけど」
首をかしげる俺に下から声がかかる。
あ、いた。
「なに?そのいたいたみたいな顔は?」
さっきの案内嬢も扉から出てきた。
確かに案内嬢の顔の位置を意識して見ていれば見下ろす、俺の背の半分以下の女性が俺の前にいた。
「本当にフウさんが呼びに来た後はいつもこれだね」
苦笑いする案内嬢。
「すいません、ラウさん」
申し訳無さそうに案内嬢のフウが答える。
「いいよ、フウさんは悪くない。視線の位置が高いこういった冒険者が悪い」
はは、面目ない。
「こんにちは、ウェルズ山脈管理の受付嬢ラウよ」
ラウと名乗った受付嬢が手を差し出してくる。
「はじめまして、俺は」
「クロノよね?」
差し出した手を握りながらラウが言った。
昨日は名乗ってないし初対面のはずだが?
なぜか後ろからアンの視線が痛い。
「それにアンとシロマ、久しぶりねノーム」
?
ノームは一度ここに来ているはずだから分かるけど、アンとシロマの名前も知っているのはどうしてだ?
「どうしてって顔してるね」
ラウがカウンターに座り、フウはその後ろに控えている。
「冒険ギルド同士は情報共有をしてるの、それでクリスから聞いてるわよ、めちゃくちゃ強い冒険者がいるってね」
なるほど、クリスからか。
なら納得だ。
「あの双龍のクリスの技を受けて平気で立ってるなんてね」
「そんな呼ばれ方してるんですか?」
「はは、冒険者時代の通り名だけどね」
ラウは面白そうに笑う。
「で、そのめちゃくちゃ強い冒険者さんが、ウェルズ山脈に何のよう?」
真顔でラウが聞いてきた。
「火の悪魔に会いに行きたい」
ギルド内が今度はざわめきだす。
「なるほどね、火の悪魔か」
「どうしても聞きたい事があってね」
ラウはちらっとノームを見た。
ノームが少し頷いたような気がした。
「ま、Sランクの冒険者も一緒だから、死ぬ事はないと思うけど。
わかったわ。でも、許可書を出すにはその力を見せてもらう必要があるから、ノームは前に見せてもらったからいいけど、後の3人はそれでもいい?」
俺達は頷いた。
「許可書とシロマは冒険書持ってないんでしょ?
ついでにランク試験もかねるね。それじゃ、3人は奥の扉にノームは見学する」
「ええ、パーティーの実力も見ておきたいから」
「わかったわ、では、どうぞ」
俺達はラウに案内されて奥の扉をくぐった。
くぐった先はアルケルと同じような円形の広間、その真ん中に、先ほどの受付嬢の姿ではなく赤いライトアーマーを着て腕組みしているラウ。
横には自分の背丈ほどあるクレイモアが地面に刺さっている。
その後ろにはこれまた先ほどの案内嬢の服から青いライトアーマーを着て、両手にシールドを着けたフウが立っていた。
「今から実力を見るんだけど、せっかくだからそちらは3人こちらは2人のパーティー戦をしようと思うけど、どうかな?」
ラウの提案に俺は同意する。
これからはアンに任せるとかじゃなくて、パーティー戦もしていかないといけないから願ってもない提案だ。
「それじゃ、始めようか」
そう言ったラウは腕組みをしたまま動かなかった。
「お師匠さま」
アンは神木刀を構える。
シロマも手を元のグリズリーの時に戻して臨戦態勢だ。
どういった攻撃をしてくるか分からないが、
「やるしかないか」
アン達は頷く。
俺は牽制に魔法弾2発をラウに向かって打ち出す。
しかし、すぐにフウがラウの前に出て両手に盾で防いだ。
しまった、煙が上がった。
「ガァ~」
シロマは咆哮をラウ達の方に打ち込み、跳躍する。
ナイスだ、シロマ。
咆哮は相手を怯ます。
「壱の太刀 一角」
すぐさまアンの技がラウ達に放たれる。
しかし、手応えが、ない。
「そりゃ、ずっと同じところにはいないよ」
後ろから突然声が聞こえる。
振り向くとすぐ後ろにクレイモアを横薙ぎしようとかまえている、ラウの姿が。
「きちんと防いでよ」
言葉と同時にラウの横薙ぎがくる。
俺はとっさに『生命の盾』で防ぐが、数歩後ろに下げられる。
小さい体なのに重い一撃だ。
「かぁ」
後ろからシロマがこちらに飛ばされた。
ちらっと確認したが、フウが拳を出していた。
シロマがラウ達がいたところに飛び込んだが、フウにカウンターをくらったってところか。
しかし、思ってたより、
「弱いわね」
く。
「連携できてそうで詰めが甘いし」
ま、今日がアン達にとっての初めてのパーティー戦だからな。
「特にクロノ」
え?俺?
「手加減考えすぎて連携出来てない」
はは、俺も単独戦闘が得意だったからなぁ。
「それじゃ、許可書はあげられないね」
ふぅ、2対3か。
「アン、シロマと2人でフウをどうにかできるか?」
「やってみる」「がう」
「俺は少しラウを足止めする」
「分かった」
そして、2人はフウの方を向いた。
俺はラウの方を向く。
「1人で私を止められる?」
「さぁ、わからないな」
「2人でフウを止められそうなの?」
「それなら大丈夫だ、あの2人なら」
俺の答えににこっと笑うラウ。
「それじゃ、クリスの言った強さ見せてもらう」
「俺はただ技を受けただけだけどね」
俺は『封印』をいくつか外す。
「いきなり、雰囲気変わるね、ちょっと本気だしてくれたのかな?」
「かもな」
『大威圧』自分よりレベルの低い相手の動きを押さえる。
『のろまな瞳』見たものの動きを遅くする。
「変なスキル使ってるみたいね」
ラウがうっすらと笑みを浮かべる。
「でも、あまり関係ないかも」
その言葉通り、ラウの姿が一瞬で消える。
『危険予知』『瞬速』
背後に現れたラウのクレイモアは、地面を切った。
そっとラウの背中に手を置く。
『力の吸収』その名の通り相手の力を吸収する。
「く」
ラウがガクッと膝をつく。
「いくつスキル持ってんのよ」
ゆっくりとこちらを向くラウ。
「俺もわからない」
「やっぱり、規格外って言ってた事はあるか」
「まだ、構えられるんだな」
「あの程度で私の動きはどうにか出来ないよ」
「『空間移動』か」
俺の言葉に少し驚くラウ。
「見られないようにしてたんだけどね」
「ああ、アンノーンだった。けど、さすがに直接触れば分かるさ」
「なるほど」
ラウは構えをとかずこちらを見る。
「しかし、Sランクだったとは、俺はてっきり最強の受付嬢はクリスだと思ってた」
俺も愛刀のブロードソードを抜く。
「それは間違いないよ、Sランクは言わば称号みたいなものだから、あまり強さに関係ない。
でも、私のランクはA+なんだけどね」
「なら、1つだけSランクが相手してくれたお礼に」
俺は久しぶりにブロードソードを構える。
「死なないように避けなよ」
ブロードソードにかけている『封印』を解く。
ブロードソードが薄く虹色に輝き始めた。
「やっと本気なんだ」
「いや、本気は出せないけど、いいもの見せてくれたお礼」
「天魔双滅剣 神喰い」
俺は遥か昔、世界を救うために戦った魔王に放った技を使った。
よし、驚いた顔してたけど『空間移動』したな。
俺が放った何かはラウが立っていた場所に着弾し、その場所だけ静寂が訪れた。
「な、なんなの?」
横に移動したラウが先ほどまで立っていた場所を見る。
見た感じは変わらない。
でも、明らかに先ほどとは違う。
「そこにある全てを喰らった」
「え?」
「だから、あそこには何もない。でも、見た感じは変わらないけどね」
「どういう?」
ラウの言葉に下に落ちていた石をその空間に投げる。
投げた石はその場所に落ちた。
しかし、
「音がしない」
そう、石が落ちた音がしないのだ。
あの空間はもう何もなくなってしまっている。
「しばらくはあのままだから近づかないようにしてて、そのうち、自然が元に戻ろうとするから」
「本当に何者なの?」
「ただのBランク冒険者」
「嘘ばっかり」
ラウは横にクレイモアを突き刺すと、アン達の方を見た。
決着だ。
上手く連携がとれたのだろう、アンの剣先がフウの喉元をとらえていた。
「終了」
ラウの声が響く。
「ご苦労さん、アン、シロマ」
「疲れた、強いよ、フウさん」
「がぅ~」
「すごかったよ、3人とも」
見学のノームも労いの言葉をかけにやって来た。
「お疲れさん。それじゃ、4人ともカウンターのところで待ってて」
「わかった」
俺達は一旦ギルドのロビーに戻る。
近くの椅子に座って、ラウ達を待つ。
しかし、野次馬の目線が痛い。
「クロノ、お待たせ」
ラウが受付嬢の姿でカウンターに座る。
「これが許可書。そして、こっちがシロマの冒険書、ランクはCね」
「やったがぅ~」
めちゃくちゃ嬉しそうなシロマ。
アンも自分のことのように喜んでいた。
「で、許可書を出した冒険者にいつも頼んでるクエストなんだけど受ける?」
「おまけみたいに言うなぁ」
「そう言わずに、これなんだけど」
ラウはカウンター上に1枚のクエストを置く。
ランクはA。
内容は火の悪魔にウェルズ山脈のモンスターを抑えるよう依頼する事。
「悪魔に依頼?」
「そう、ウェルズ山脈からモンスターが地上に来ないのはファモンが抑えてくれてるから。
でもね、定期的に依頼をしには行かないといけないのよ、いつもは私とフウ、あと1人受付嬢で行くんだけど、許可書発行した時はその人に頼んでるって訳」
「依頼するならそれに見合う報酬がいるだろ?」
「そ、それがカゴノ村で作ってるお酒なのよね」
ラウはもう1枚紙を出す。
「これがそのお酒を貰える注文書、よろしく」
「おまけの方がややこしそうだ」
俺の言葉にラウは笑った。
「それじゃ、よろしくね」
冒険ギルド前、ラウ達が見送りにきてくれた。
「カゴノ村まで馬車でいくつもりだったんでしょ?
そっちの方も手配しといたから」
「本当か?それはありがたいがいいのか?」
「ま、最後にとんでもないもの見せてくれたお礼」
はは、初めて見るスキルにはしゃぎすぎたか。
「ありがたく使わせてもらうよ」
「道中気をつけて、ウェルズ山脈にいるモンスターは案外強いから。
ま、あなた達なら大丈夫だと思うけど」
俺達はラウ達に見送られながら、馬車を貸し出してくれる場所に向かった。
冒険ギルドの事を話すとすぐさま用意してくれ、1日分の食料も積んでくれた。
さぁ、次はカゴノ村だ。
ぼちぼちと行こうか。
次はカゴノ村、ウェルズ山脈へとなります。
やっと出てくるか火の悪魔ファモン。
クロノ達は無事クエストをこなし、話をすることができるのか?
では、また次回によろしくお願いします。




