麒麟児~旅の始まりの飛竜船~
火の悪魔ファモンに会うために、クロノ一行はウェルズ山脈に向かうことになった。
初めての冒険にアンは楽しさを押さえきれない、4人パーティーとなった一行は次の目的地、ウールスに向かった。
「まずは、ウェルズ山脈の近くにあるカゴノ村に行くのがいいと思う」
俺達は町で足りない道具を買いながらノームの提案を聞いていた。
「と、すると飛竜船に乗るのがいいか」
地図を見ながらカゴノ村の場所を確かめる。
「飛竜船?」
防寒服を見ながらアンが言った。
飛竜船。
大きい町にある、町と町を繋ぐ移動手段の1つだ。
飛竜に数人乗れるゴンドラを取り付けている。
現役から退いたドラゴンライダー達が運営していると聞いたが。
「では、ここアルケルからウールスまで飛竜船で向かって、そこからカゴノ村に行くのがいいかな」
ノームが横から地図を覗きこんできた。
「じゃ、それで行こうか」
「は~い」
俺達は道具屋で足りないものを買った後、飛竜船の乗り場に向かった。
向かう途中、冒険ギルドの前でクリスに出会った。
「あ、クロノさん、こんにちは」
「クリスさん、こんにちは」
アンが嬉しそうに挨拶する。
ランク試験以来、2人は仲良くなったみたいだ。
「こんにちは、アンさん。今日は大所帯なんですね、それもクロノさんハーレムじゃないですか?」
意地悪そうに笑うクリス。
「そうなんですよ、お師匠さま、とうとう本性を現したんです」
頬を膨らましてアンが答えた。
「違うって、不可抗力だ」
「まぁまぁ、花がたくさんある方が冒険しがいもありますよ」
クリスはアンをなだめながら、こちらを面白そうに見ている。
「それにしても、Sランクのノームさんを仲間にしたんですね」
「知り合いか?」
クリスの言葉を聞いてノームの方を向く。
「ええ、一度パーティーを組めないか誘ったわ、見事に玉砕だったけど」
「はは、一応、冒険ギルドの受付してるとパーティー組めない決まりなので」
クリスはばつ悪そうに頭をかいた。
確かに冒険ギルドの受付嬢を仲間にしたら、これ程心強い事はないのだが、受付嬢になる条件の1つにさっきの項目があり、受付嬢達は町の危機にその力を使うみたいな町の守護的な位置付けもしているらしい。
「それはそうと、クロノさん。もし、魔晶石が余ってるようなら今価格が高騰してますので、ギルドでいい売り場所をご案内しますよ」
クリスは、シロマを撫でながらセールスをしてくる。
「生憎、魔晶石は使い道ができたから無理かなぁ」
「そうなんですね、しばらくは高騰が続くと思いますのでよかったら頭の角にでも入れておいてください」
クリスはこういった冒険者がお得な情報をしばしば教えてくれる。
「なんで、そこまで高騰しているの?」
ノームが不思議そうに聞いた。
「なんでも、この町にある、魔導研究所で長年研究されてきた神器の使用方法が分かったらしくて、その性で魔晶石を買い集めてるみたい」
「なるほど」
ノームは腰の袋を押さえる。
「別に今はお金に困ってないからいいよ」
俺はクリスに向かって、ノームに聞こえるように言った。
「はい、また何か情報があればお伝えしますね、私も今からお昼なので」
クリスと笑顔で別れ、俺達は飛竜船乗り場に向かう。
「これが飛竜船」
アンとシロマは50m以上はある、その大きな飛竜を興味津々で眺めていた。
俺は受付で券を購入した後、飛竜の隣にあるゴンドラに4人で乗り込んだ。
ゴンドラの中は思ったより広く、30人ぐらいは余裕で座れるくらいだ。
アンとシロマはゴンドラの窓から外を眺められるように座る。
「それでは、発進いたします」
アナウンスの後、隣にいた飛竜が飛び上がり、ゴンドラを掴む。
そして、ゴンドラは大空に浮いた。
「すごいね、お師匠さま」
「がわぁ」
2人は空から見下ろす景色が珍しいのか、おおはしゃぎだ。
アンの年相応の姿が見れて、俺は微笑ましく思った。
「ノームは飛竜船は初めてじゃないんだな」
「ええ、世界を旅してるから何度か乗ったことあるわ」
「そっか、ノームはどうやってS級になったんだい」
「簡単に言えば、国を1つ救ったパーティーにいたって事ね、今はそれぞれ別れて好きにしてるけど」
「なるほど、それは確かに立派な功績だ」
「あの時はそうしないといけない事態だったから」
俺とノームはその後も、他愛のない話をしながら飛竜船が着くのを待った。
アン達は着くまでずっとテンションが上がったまま楽しんでいた。
「まもなくウールスに到着します」
アナウンスが流れた後、飛竜はゆっくりと降下していく。
飛竜は衝撃を与えない様にゴンドラを下ろすと、隣に着陸した。
「すごかったね、シロマ」
「すごかったぁ」
まだ盛り上がっているアン達。
横を歩くノームをちらっと見ると、そんなに2人を優しく微笑みながら見ていた。
俺が見ているのにノームは気付き、
「別にいいでしょ」
と照れながらそっぽを向いた。
案外、可愛いところもあるんだな。
「お師匠さま、顔がにやけますよ」
いつの間に横に来ていたのか、アンは少し睨み顔で言ってきた。
「別にいいだろ」
余計にアンの頬が膨らんだ。
「さて、まずはここで一泊して、明日の朝カゴノ村に向かおうか」
「はい」「がう」「わかったわ」
「それじゃ、それまでは自由時間にしようか、アンはシロマに着いてやってくれ」
「はい、お師匠さま、シロマ一緒に行こう」
「がう」
たまにはアンも俺なしで歩き回らないといけないよな、社会勉強させないと1人で旅もできないからなぁ。
「ノームはどうする?」
「私は少し寄るところがある」
「分かった、それじゃ、日が落ちかける前にここにまた集合だ」
「は~い」「がぅ」「わかったわ」
そして、それぞれ別れて行動した。
ちなみにアン達には、何かあった時ように魔法を密かにかけておいた。
決して親バカではない、ないはず。
さ、気を取り直して俺はこの町の冒険ギルドに向かった。
明日もう一度来る事になるが、事前確認も必要だし、情報収集にはもってこいだ。
しばらく歩くとやはり町の中心部にギルドはあった。
冒険ギルドはだいたい町の中心部にあるな。
中に入る。
アルケル同様活気がある。
ギルドとして機能している証拠だ。
クエストボードにも様々なクエストが貼られていた。
「ん?」
やはりここにもクエストがきているのか。
クリスから聞いた魔晶石のクエストもあった。
「何かお探しですか?」
「え?」
後ろから突然声をかけられる。
振り替えると、俺より背が高い大男じゃない、受付嬢が立っていた。
かなり鍛えてる体してるなぁ。
男と間違える程だ。
「なにか?」
少し低い声で受付嬢が聞いてくる。
「いや、この町に始めてきたので、ちらっとクエの確認を」
「そうでしたか、ここは様々なランクのクエストが揃っていますので、無理しないように受けてくださいね」
見た目によらず気配り上手だった。
「ありがとう」
「いえいえ、それでは」
受付嬢は一礼すると、また、キョロキョロしている冒険者に声をかけていた。
あ、俺と同じような反応してる。
カウンター係じゃなくて、案内係をしてるのかな?
ま、受付嬢じゃなくてもAランクの冒険者だろうけど。
さて、カゴノ村についてのクエストはと。
いくつかあるがどれもCランクか、それほど危険な場所じゃないみたいだな。
ただ、これから行くウェルズ山脈のクエはなしか。
ノームが山に入るには冒険ギルドの許可書が必要と言ってたし、クエストも特別なのかもしれないな。
俺は一通りの確認を終えると、屋台で買い食いしながら、待ち合わせ場所に向かった。
「遅い」
アン達はもう待ち合わせ場所に着いていた。
「ごめんごめん、案外このウールス鳥の肉が美味しくて」
この町の名前にもなっているウールス鳥、焼くとすごく香ばしい匂いと、口の中いっぱいに拡がる肉汁がくどくなくとても味わい深い。
「確かに食べたけど」
そういうアンの横で、シロマもウールス鳥の串焼きを食べていた。
「ま、ここの名物だからね」
ノームも食べたのか口元にタレが付いている。
ここ、ここ。ノームを見ながら俺は自分の口元を指差す。
ノームは慌ててぬぐった後何事もなかったように顔を少し赤らめさせて立っていた。
案外、ドジっ娘か?
「ほら、お師匠さま、今日の宿に言って作戦会議」
「はいはい」
なんかアンが子どもっぽくなってきてるような。
パーティーメンバーも、増えて少しは安心して素が出始めたのかもしれないな、良いことだ。
俺はアンに引っ張られながら今日の宿に向かう。
後ろから、にこにこのシロマと微笑みながらノームが着いて来た。
宿に着いた俺は、軽く夕食を食べながら、明日の予定を説明した。
まずは冒険ギルドでウェルズ山脈に入る許可書を手に入れる。
その後、馬車を借りカゴノ村に向かう。
カゴノ村で一泊してから、ウェルズ山脈にいるファモンに会いに行く。
一通り説明した後、明日も早いので各自入浴をすませた後、寝る事にした。
今夜は何も起きませんように。
やっと冒険に出たクロノ一行。
クロノの目的の為の最初の関門に向かいます。
果たして、クロノはファモンに話を聞くことができるのか?
では、また次のお話で




