麒麟児~初めてのお出かけ~
無事に熊肉もゲットした2人。
シチューをアンに任せ、クロノは町へと素材を売りに向かった。
その夜、クロノはある目的をはたそうと考えていた。
「八の太刀 完成したのか?」
俺は籠一杯にキノコや山菜を入れ、獲物の横に立っているアンに近づいた。
「まだ、完成じゃないかな、八艘は8人に実分身して攻撃するんだけど、まだ、5人までしか出来てない」
「5人でも十分だと思うけどね」
得物の横で籠を下ろす。
実分身はだいぶ前の打ち合いの時に2、3度見せたぐらいなのに、自分でものにしてるんだな。
俺は獲物に手のひらを向け、
『解体』を使う。
一瞬、獲物は光に包まれ、その後、肉の塊3つ、皮、爪、牙が残る。
「いつ見てもすごいね、そのスキル」
「ま、実際にしてたらだいぶ時間かかるからなぁ」
「そのスキルって私たちみたいな人相手でも使えるの?」
アンが普通に聞いてくる。
「怖いこと聞くなぁ。
ま、できるけどいろいろと制約があるからやらない、それにこのスキルは素材がランダムだからね、欲しい素材があるなら実践に解体した方がいい」
俺はグリズリーの素材を『アイテムボックス』に入る。
「さ、帰ってシチュー作るか」
「帰ろ帰ろ」
アンはそういうなりダッシュで戻り始める。
「おい、ちょっと待てって」
俺は慌ててアンを追った。
「後はこれを入れて混ぜてれば出来る」
キノコや山菜を切った物を籠に入れ、大きな鍋の横に置く。
「ただ、今から四時間は煮てないと肉は柔らかくならないから、その間に素材売ってくるよ」
「あ、町に行くのお師匠さま、私も行きたい」
「いや、アンはもうちょっとしてからかな」
「ええぇ」
文句は言いつつ鍋を混ぜ続けるアン。
「ま、今日の晩御飯が上手くなるかはアンの腕にかかってるからな」
「はいはい」
「お土産買ってくるよ、じゃ、行ってくる」
『ゲート』を開き俺は町に向かった。
『ゲート』で町近くの街道に出る。
歩くとだいたいあの森から2時間程のところにこの町がある。
町の名はアルケル。
この地域では1番大きな町だ。
まず向かうのは冒険ギルド、いろいろなクエストを受けたり、旅をするのに必要な冒険書を作ってくれる。
ギルドに入りカウンターに向かう。
「こんにちは」
「はい、こんにちは。
あ、クロノさん、いらっしゃいませ」
「久しぶりだね、クリス」
「本当にご無沙汰ですよ」
クリスは俺が冒険書を作る時に担当してくれた受付嬢だ。
「で、今日は何かクエスト受けられるんですか?」
「いや、素材を売りたいから、仲介してもらおうと思ってね」
「ああ、素材処理ですね。
分かりました、少しお待ちください」
俺が売りたい素材リストを渡すと、クリスはカウンター奥の扉に入っていった。
しかし、いつみても活気がある。
冒険者の強さもまちまちだか、広範囲でいる場合、自分のレベルに応じてパーティーを組めるからやり易い。
「お待たせしました」
ま、Sランクの冒険者はさすがにいないけど。
「クロノさん?」
「あ、ごめん、ぼーとしてた」
「疲れでも出てるんじゃないですか?
この間、Bランクに上がったばかりなのに、グレートグリズリー狩るなんて」
「そ、そうかなぁ、疲れてるのかな」
ちなみにグレートグリズリー、Bランクが6人ほどで狩る相手だ。
「それで、皮はここ、牙と爪はここで買い取ってくれるそうなのでお願いします」
「ありがとう、じゃ、これが仲介料ね」
「はい、ありがとうございます」
クエストを受けて得た素材は無料で仲介してくれるが、こういったクエスト以外で得た素材の場合仲介料がいる。
冒険ギルドで仲介せずに売れるのだが、値段がまちまちなのと買い取ってくれるところと、くれないところがあるので探すのが面倒だ。
「じゃまた、今度は新人を連れてくるよ」
「え?そうなんですか、楽しみにしておきますね」
本当に楽しみなのだろう、満点の笑みで送り出してくれた。
「最近、骨のある冒険者いないって言ってたからなぁ」
俺は、紹介を受けた店に素材を売りにいった。
「ただいま」
「ん?お帰りお師匠さま、ちょうど出来たところ」
「お、ありがとうな」
俺は椅子に座り、机にお土産を置く。
「なに買ってきてくれたの?」
「アンが美味しいって言ってた、アルケルアイス」
「やった~」
「食後に食べるか」
アンは嬉しそうに頷きながら、晩御飯の用意をした。
食後のアイスを嬉しそうに食べるアンを見て、ほっこりした後、風呂に入る。
「お師匠さま、背中流そうか?」
「いや、いいです」
風呂の扉の外から声をかけられるが断った。
最近、アンも体は女らしくなってきたからなぁ。
そして、就寝。
アンも自分の部屋へと入っていった。
とうとう明日、アンを助けてから9年がたつ。
年齢的に15歳くらいのはず、冒険書を作れる歳になった。
「やっと、スタートラインにたったか」
俺はアンに冒険書を取らせた後、ある目的の為に旅をしようと考えていた。
長い旅になるとは思うが、今のアンなら大丈夫だろう。
俺はゆっくりと目を閉じた。
「おはよう、お師匠さま」
俺が着替えて部屋から出るとアンは朝御飯の用意をしていた。
「おはよう、急で悪いが、今日一緒に町に行くぞ」
「え?本当に!」
アンが目を大きく開き、驚きながら喜んでいる。
「ああ、今日はアンの誕生日だからな、連れてってやる」
「ありがとう、お師匠さま覚えてくれてたんだ」
「当たり前だ、さ、早くご飯食べていくぞ」
「うん」
それから急いでご飯を食べたアンは、完全装備で玄関に立っていた。
ま、俺が作ったライトアーマーに腰に草薙剣を持っているいつもの格好なのだか。
「ほら、これも付けとけ」
俺は薄い水色のマントを渡す。
「ありがとう、お師匠さまと同じ色だね」
「迷子になられてもすぐに分かるようにな」
「ならないよ、お師匠さまから離れないから」
「ならいいけど」
俺は『ゲート』を使う。
「これ入るのも初めてかも」
「ま、すぐに外に出るからな、迷うことはない」
「はい」
少し緊張気味のアンと共に俺は『ゲート』をくぐった。
さぁ、これからが本番だ。
初めて町に行くアン、次回は冒険書制作の試験を受けることになります。
そして、クロノ達はある目的の為に旅でます。
では、次回はもう少し早くお会いしましょう。




